【綱成】目標SSR武将の首!




 1551年9月中旬未の刻(午後2時)


 上野国茂林寺西方5町(500m)

 北条綱成(大胡を軽く見ているうちに危機が迫る。危うし、地黄八幡の旗頭!)



 一刻前の左翼を襲った西からの攻撃。あれは最近畿内で使われ始めた種子島か?


 小田原にも一度武具を扱う行商人が持ってきて試射をした。


 その時は10間離れても甲冑を易々射貫きその威力に驚いたものの、連射ができず雨にも弱いと聞き、さらには火薬が目の玉が飛び出るくらいするという事で、氏康様を始め家中一同は全く気にも留めなかった。



 それを大量に撃つとあのように聞こえるのか。儂の本陣は4町(400m)離れていたが、ぱぱぱぱーんと軽い音であった。


 しかし使い番の話によると近くでは「雷様が怒ったかと思う」ような大音声であったとか。道理で落馬する者が多数いたはずだ。



 被害自体は大したことはない。


 最右翼にいた足軽が十数人手負いになったが、むしろ驚きと恐怖で壊乱したのが問題だ。


 あれを真正面から喰らったらどうなるのか?

 もっと手負いが出るやもしれぬ。

 さすれば恐怖も倍増であろう。


 自分たちが戦っていない手の届かぬ敵から、一方的にたたかれる恐怖は長柄でのぶつかり合いとは比べ物にならぬ。




 こちらの崩れに付け込み攻勢に出てきた由良や佐野。

 左翼に集中攻撃を加えてきた。


 ことに先鋒の太田資正がしぶとい。

 左翼と中央の間を分断する箇所へきりの様に押し込んできた。



 お蔭で左翼は散り散りになり、本陣まで横槍を付けられてしまった。前線を支える川越衆は、まだ訓練が行き届いておらぬ。


 中央前備えも崩れ始める。本陣の玉縄衆の精鋭を送り、何とかしのいだ。



 そのとき、


「至急の知らせ! 

 川俣に敵兵! 

 渡しは閉鎖されました!」


「どこの兵じゃ?」


「波にちどり! 

 大胡です!」


 まさか!?


 ここに来る前には、玉縄衆4000を率いて大胡へ牽制に出向くはずであった。今でも半分の2000は、大胡の兵誘引のために進軍しているはず。


 佐野の軍勢が出てきたことで急遽、儂の旗本700のみでここに急行したが、その後たった1~2日でこちらへ来たのか?


 河か。

 舟を使ったのじゃな。


 じゃが、それなら大した兵数ではないはず。



「兵の数は?」


「1000は下りませぬ!」


 これは船を相当数使ったな。

 ……それよりも、こちらの退路をどうする?


 1000で川俣を押さえられたらまずい。あそこへは一本道。追っ手に追いつかれる。とりあえず、そちらはいけぬな。


「渡し舟はどうなっておる?使えぬか? しもの方にも10艘以上おいてあるはず」


「よく見えませなんだが、全ての渡し船は下流へ引き返して行った模様!」


 川俣はもう完全に使えぬな。

 あとは西の赤岩の渡しじゃが……


 守備に300置いてきたが取られているか。そう考えるのが普通じゃ。


 先ほどの騎馬隊もそこから上陸したか。

 数で300。

 先の1000と合わせて少し多すぎではないか?


 八斗島の渡しを守備するのに300から500は要るはず。大胡の総兵力がまだわからぬが2000は居まい。すると赤岩を守るのは先ほどの騎馬隊のみ。


 あの足で遊撃され種子島で撃たれると相当な被害が出るが、完全に退路を断たれる前に渡し場と舟を奪取するか。


 遅くなるほど兵力と陣が充実しよう。


 罠もあろうが食い破ればよい。

 もはや、後詰どころではない。

 ここで由良や佐野に勝っても、後が続かぬ。



 撤退じゃな。


 東は湿地。

 4000の兵が整然と撤退すること、能わぬ。

 南も同じようなものじゃ。


 もう残りは西しか残っておらぬ。 何が待っていようと押し破るしかない。


 秋の陽は鶴瓶落とし。

 あと2刻で暗くなり始めよう。


 1刻で移動、1刻で敵を破る。


 儂は、撤退の差配をし始めた。


 ◇◇◇◇


 同日申の刻(午後4時)


 赤岩の渡し

 官兵衛(後藤のおっさん専用制御コンピューター)



「まだかかるか? 官兵衛。あとどのくらいじゃ?」


 後藤の旦那は、せっかちで困る。まあそれがいいとこなんじゃが。

 今5隻の舟に後藤隊300が分かれて乗船し、利根川を遡上している。


 この時期の風向きでは、帆は使えねえ。左右の岸から近在の住人を銭で集めて5隻を引っ張らせての遡上だ。旦那がイラつくのもわかる。


 これなら歩いた方がマシともいえるが、体力は維持できるから間に合うようならばこちらの方がいい。


 だが、先ほど使い番が走り込み、殿からの

「敵が赤岩へ向かって後退する模様。大至急戻るように」

 との命令が伝えられた。


 まだ10町はあるが、ここで降りるか? 周りの岸は結構ぬかるんでやがるな、くそっ。 これじゃ下手すると火縄と火薬が濡れちまう。


 仕方ない。



「後藤の旦那。ここで兵は下ろしましょう。ただし種子島の装備は船で運びます。無理に持って行っても濡れたら元も子もねぇ」


「よしっ! 

 それで構わん。長柄と弩弓で勝負じゃ! まっとれ、地黄八幡! 首獲ったるわ!!」


 俺は部下に、舟で河岸まで種子島を持って行くように指示し、後藤の旦那の後を追う。この旦那には、俺が付いていないと戦にならんからな。



 🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸🔸


 地図ペタリ


 https://kakuyomu.jp/users/pon_zu/news/16816700428815225818



 異なる世界線上ではSLGが人気らしい

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636278156


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