【包囲】哀れ国衆
1551年2月中旬
上野国和田城(現高崎)
和田政盛(典型的な日和見国衆。ここまで割り切っていると清々しい)
「よう決心された。これからは一味同心ぞ。和田殿」
安中の爺さんが満面の笑顔で寄ってくる。皴顔と口の臭さで、のけぞり返るのを必死でこらえた。
歳は取りたくないの。じゃが儂もあと20年もすれば、このようになるのかの。
最近は毎日歯と舌を歯ブラシで綺麗にしておる。これは大胡の特産品だが、我が領地で作らせてみたが直ぐに毛が抜ける。
なにか作る秘儀があるのか?
そんなことを考えていたら、勝手に軍議が進められていた。今年も平井の上杉家を攻めるという。先に長野が北条と
このまま中立でいたら、周り中から攻められて仕舞じゃ。平井に後詰を頼んでも断られるのは目に見えている。
もう上杉は詰んだの。配下の国衆に後詰が出来ぬようでは離反がもっと増える。
西上野で北条方に付いていない国衆は、倉賀野16騎、松井田、それに大胡だけ。北上野はまだ北条方はおらぬ。
東も由良がいるから最南東端にある館林城の赤井照光以外は、いざこざはあるもののまだ北条方ではない。
北条の本格的な平井上杉攻めが始まる前に転ばねばお家が断絶する。じゃから北条と誼を結んだ。いやいやじゃが。
儂の和田城は交通の要でもある。信濃への道、越後への道が交わる。河船は南の倉賀野で大抵は荷を下ろすが、冬の渇水期以外は小舟なら和田まで遡れる。
「では、倉賀野を
倉賀野には何件かの土倉・商家がある。倉が立ち並んでおり、利根川を使った輸送の最西端でもある。
ここは倉賀野16騎と呼ばれる豪族達が支配している。
代々山内上杉に忠誠を誓っており、そのうちの一人金井為広とその後見の秀景は、先代の行政が川越で憲政の撤退を支援し、討ち死にして感状を送られるなどしたために忠誠心が強い。
ここを落とせば北条との連絡路ができるとともに、完全に平井を包囲することになる。相当な抵抗が予想されるために包囲して兵糧の尽きるのを待つ。
このところの不作続きで、何処もそれほどの兵糧を用意しておらぬ。
北条の草からの情報では、持って3月とのこと。
田植えまでには帰れるじゃろう。
しかし安中と小幡が焦らず余裕を見せているのは、米よりも小麦が主食だから田植えも人手があまりかからないとせいだ。
うらやましいのかうらやましくないのか、わからん。
「では、この布陣でよろしいな。和田殿」
東を封鎖することになった。一番危険な東に布陣せよなどとよく言えたもんじゃ。恨みを買うのがわからんと見える。
北条への寝返りの時期で新参になるから仕方ないが、大胡が後詰など来たら
……見つからぬように大胡に密書でも送るか。
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主人公は自然改造までは出来なかったらしい
https://kakuyomu.jp/works/16816927860630530111/episodes/16816927860636166268
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