【箕輪】山城無くしてやる!

 1549年2月下旬

 上野国箕輪城

 長野政影(この人いなければ主人公生活できんのではないか?)



 ひぃ~ひぃ~ひぃ。


 殿が一歩足を進めるごとに、悲鳴のような呼吸をされている。初めての山城だから仕方のない事なのか……


 いや、それほど高い段差ではないのだが。そろそろ体力をつけてもらわねば、いざというとき逃げられぬ。


「政影く~ん。いつもの様におぶってくれない? もう足がガクブル。あ、これは表現ミス」


 一応背負子も持ってきてはいるが、周りの箕輪の侍がそれを見てどう思うか。そう考えるとやはり使うことははばかられる。


「殿、それほどお辛いのならば、先に用意された子馬を……」


「あれはだめ! すぐ僕の頭を噛んでくる。きっと見下してるんだぁ~」



 動物は人の優しさは通じるはずなのだが。殿の優しさが伝わらないのか?


 ……多分、単に面倒を見るのをさぼっているだけなのかもしれぬが……


(絶対、山城なくしてやるっ! だから一刻も早くハイウェイ作るんだぁ~)


 また何かを呟いておいでだ。



「殿。儂が尻を押しますれば、もう一息頑張り召され!」


 今回、護衛で付いて来た後藤殿が後ろから押して、やっと大手門などをくぐり業政殿との会見場所である建物についた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 中へ通されると、上座に業政殿が座り、太刀持ちと小姓2名が控えていた。

 こちらは後藤殿が外で待機。某のみ太刀を預け、殿の左に座った。


「此度は縁談の話。誠に感謝して居り申す」


 殿がまず頭を深々と下げた。


「そのことで直接話したいと? 如何したのでござろうや。ご不満でもあろうか?」


「不満など滅相もない! 恐れ多くてびっくり致すとともに、本当にこれでよいのかと思慮いたしました」


 殿は、此度の案件をなかったことにしたい。縁戚にならないままの状態での同盟を望んでおられる。それもできれば密約。


「これではいかぬか?」


「はい。これ以上長野一族が結託すれば、いかがなり申すか?」


「……良い事ではないのか? 事に当たって一丸となれる。来る北条戦にも結束して強兵を持って対抗できような」


「はて。上野勢は一丸となり北条と戦うとでも?」


 それを聞いて業政殿の真っ白な髭が逆立ったように見えた。


「関東管領殿の命が下れば、北条の奴原やつばらで屍の山を築くのは、我が西上野の国衆の務めではないか?」


「先の那波城攻め前の評定。無様でござった」


 殿はあくまでも静かに涼し気に言う。


「あの中で、何人が本気で戦う気で居りまするか? 長野以外の国衆、某は見つけられませなんだ。この状況で北条を相手取るのでしょうか。しかも旗印は、あの平井におわす傀儡かいらい殿。お勝ちになる勝算如何程で?」


 業政殿は、じっと殿を見ている。

 怒り大声を出して席を蹴ると思ったが、ずっと見ている。


「では、其方は北条に寝返れと?」


「いいえ」


 業政殿が不審な顔を成される。


「戦と寝返り。それ以外の道があるとお考えかの? それならばご高説をお聞かせ頂こう」


 目を細め、嫌味を込めて殿をねめつけてくる。

 へそを曲げる寸前と見た。


「では失礼仕り、某の策を……」


 ◇ ◇ ◇ ◇


 どんどん世界はバーチャル化

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