ノルズの街編
#11外の世界
「ハルト様、外の世界に着きましたよ。」
マーガレットの声で意識が戻る。
周囲を見渡してみると辺りは緑に囲まれた自然豊かな場所だった。
「マーガレット?ここは?」
「ここはかつて多くの他種族が一緒に暮らしていた街”他種族国家トリミニオ”。かつての厄災の影響で今は見る影も無い姿へと変わってしまいました…。」
再度周囲を見渡してみると、そこにはかつて街があったような形跡があった。
今では見る影も無く廃墟と化し、残った瓦礫は自然の一部と成り果てている。
「そうだったんだ…。マーガレットもここに住んでいたの?」
「はい。私もかつて皆と一緒にこの場所に住んでいました。」
「そっか。」
自然の一部と化し、変わり果てたこの街を見るマーガレットの横顔はどこか寂しそう表情を浮かべていた。きっとこの街で過ごしていた頃の記憶を思い出しているのだろう。
自分の大切な人達や場所が奪われる辛さは自分も知っている。その喪失感は言葉で表現できるほど簡単な事じゃ無い…。
「マーガレット」
「何でしょうハルト様?」
「今の僕に何が出来るか分からないし今すぐにってわけにはいかないけど、種族とか人種と身分とかそういうの関係無しにさ、みんなで暮らせる場所をまた作って行こうよ。みんなで笑って楽しく過ごせる場所をさ。」
「ハルト様…」
「約束だ、マーガレット。」
僕はマーガレットに小指を差し出す。
元いた世界で言うところの”約束のおまじない”ってやつだ。
驚いた事にそれを見たマーガレットも自身の小指を差し出して僕の小指を優しく握る。
「マーガレットも知っていたんだな”指切り”」
「はい。かつて一緒に旅をしていた転生者様に教えてもらったんです。これは”約束のおまじない”だって。」
かつての転生者というのは、洞窟の中にあった聖堂を作った転生者の事だろう。
それに以前旅をしていたという事は冒険者か何かだったのだろうか?
もし冒険者だったとしたら相当な腕前なはずだ。あの回し蹴りを食らった僕が言うのだから間違い無い。
「さて、ハルト様。お次はどうしましょうか?」
次はどうするか…。
外の世界に出たのはいいが未だに知らない事が多すぎるのが現状だ。
マーガレットが一緒だとはいえ、このまま考え無しに行動するのは危険すぎる。
となればアニメやゲームの冒頭の展開にもあるように、まずは近くにある街や村に行ってみるのが鉄則だろう。
そうと決まれば次に言う台詞はこれしかない。
「とりあえず、近くにある街か村にまずは行ってみようかな。この先の事も考えて色々と情報収集しておきたいのと、採取したマテリアを換金しておこうと思って。」
まさに異世界のテンプレ的な発言。これを言える日が来るとは…。
「かしこまりました。ここを東に進んだ場所に”イスタリアム”という国があります。その街は貿易が盛んで多くの冒険者や商人など多種多様な方々が行き来しており、別名”商業都市”とも呼ばれています。まずはそこに向かいましょう。そこに行けばハルト様が知りたい情報やマテリアルの換金も行えると思います。」
”商業都市イスタリアム”
確かにそこに行けばマテリアルの換金やこの世界の今現在の状況など詳しく分かるかもしれない。しかし注意しなければい行けない事もある。それはこの世界には”転生者に友好的では無い人達”も存在しているのも事実、それに転生者は転生者を感知する事もできる。
もし友好的だった場合は何も心配はいらないが、もし友好的じゃ無い場合は用心しなければならない。最新の注意を払わなければ。
ともあれ動かなければ何も始まらないのも事実、まずは”商業都市イスタリアム”を目標に最初の一歩を踏み出すとしよう。
「よし!ならまずは”商業都市イスタリアム”に向かおう!」
「かしこまりました、では参りましょうハルト様!」
”商業都市イスタリアム”に向けて2人は歩き出したのだった。
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