#25
「よっしゃーやるぞー」
「いえーい……」
「めんどくさい」
「最悪だ……」
「久しぶりに凛斗と戦える!」
え~なにがどうなったか最初から説明しよう。
この間、開いたゲリラ配信で一期生四人が集まった。
流石にこれは色々と問題があるのではないかと思い社長に連絡したのだが、一週間無視されそして返事が返ってきたと思えば一期生四人と俺でコラボをしろと言われた、以上。
siveaはもう事務所ということ忘れて好き勝手やってるんだよなあ……
そしてとうとう一期生四人と俺でコラボをすることになったのだがまさかのリレー配信。
まず俺から初めて次に黒、ツキ、希華、ルドの順に配信の枠が移っていく。
そしてルドの配信でゲームして遊びながら雑談して終わるという形だ。
どの枠にも全員いることには変わりないがやる内容だったりが変わるといった配信になっている。
しかし問題はこれを事務所内の人間だけではなくただの個人Vtuberまで巻き込んだことだ。
これには多少なり炎上が付いて来そうなものだがそこはsiveaだからしゃーない、という満場一致の了承があるので逃げられない。
「えー俺の枠では御覧の通りレースゲーまあマ〇カーする」
「負けたやつ今度の飲み会奢りな?」
「殺す」
「最下位にならなければいいや」
「凛斗と勝負♪」
希華だけ俺のとの勝負を楽しみにしている。
プロ顔負けの実力で大会の参加も禁止になるような人間が俺との勝負を楽しみにしてくれるなんて光栄だがぼっこぼこにされるのは気に食わない。
「じゃあ始めるぞ」
部屋に全員入りコースを選ぶと少ししてレースが始まった。
「アイテム、アイテ……ゴミ」
「潰す」
「死ねや、凛斗ォ!」
「さっさと落ちろバケモノ」
口悪いなぁ……
ルドとツキに至ってはアイテムも使わず幅寄せをし体当たりをしてきた。
「クソッ邪魔だな!」
「落とせ落とせ」
「……」
珍しく黒瀬さんが集中している。
希華さんと黒さんは妨害し合っている俺たちとは違いだいぶ先へ行っている。
「キ〇ーか」
希華さんがだいぶ先に行ってくれたおかげでアイテムの中身が良くなっている。
キ〇ーを使い二人を轢き一気に前へと出た。
「逃げられた!」
「追え~!」
「執着心高すぎるだろこいつら」
振り切っても振り切っても俺をなんとしてでも落とそうと這いあがってくる。
……結局このレースは逃げ切ることができた。
「チッ……」
「あのな、俺、高校生だぞ?高校生に奢らせようとするとか大人げないな」
「高、校生……?」
「いい加減その反応やめろ」
「いやまあ高校生ということがいまだに信じがたいというか……初めて会った時が中学生……なるほどねぇ……」
「お前一瞬時の流れ感じて早いなとか思ったろ」
「この間会った時もまあ変わってたからねぇ……」
希華さん以外は全員頷いてるかのような反応だった。
「え?会ったの?」
「うん、この間の凛斗とゆきちゃんの配信事務所でやったしゆきちゃん誕生日だったし事務所に来てたよ」
「え?今度家凸するね」
「話が急展開すぎるだろ」
「だって成長した凛斗の姿は拝んでおかないと!」
「いや希華は会わないほうがいいかも死ぬと思う」
「え?」
「いやね……うん……とにかく会わないほうがいい」
俺も希華も黒が言っていることが全く分からない。
別に会うぐらいだったら何も問題ないだろ?
それとも何か会ったらまずい事でもあるのか?
結局、黒の言ったことはわからずじまいのままレースをすることになった。
レースを二時間全員で楽しんで俺の枠は終わり次は鴉菜黒の枠での配信が始まった。
黒さんの枠ではV〇LOR〇NTをやることになった。
俺は全員でできるようにしただけであり初心者なため足を引っ張ることになるかもしれない。
「足引っ張ったらすまん」
「凛斗がそうなると思えないし……まあ今日はコラボして楽しむだけだからそこまで気にしなくていいと思うけど、なんなら今度教えてあげるよ?」
人力チーターからそう言ってもらえると安心できる。
ちなみに希華さんが人力チーターと呼ばれる原因はどのゲームでもプロゲーマー顔負けの実力だからだ。
そしてどのジャンルにおいても希華さんは人力チーターという括りに入れられるためあだ名のように人力チーターと呼ばれることになった。
そんな人が三年前までは普通に会社員だったという……なんとも世の中は広いというか……
希華さんのことを振り返っていると突然ツキが口を開いた。
「同じパーティーだから凛斗のこと落とせないじゃん」
「俺を負かそうとするのやめてくれないか?」
「だってこの中で一番金持ってるでしょ」
「ツキ、今財布中どれくらい入ってんだ」
「五万?」
「そうか、ならお前が払うべきだな」
今の俺の財布の中は一万円札が一枚だけ……
基本的に前のように夕食を買いに行くことが減った。
そして大体愛理さんが出してしまうので俺は財布を持って行く必要がない。
そうなると必然的に金を使う機会が減ってしまうのでわざわざ銀行から下ろし財布の中に入れる必要がない。
そうなると一万円程度しか入っていなくても自然だろう。
それに比べ、ツキは五万も入ってる……
となるとやはりここで払うべきはツキということにならないか?
「銀行に貯めこんでるくせに」
「さぁ?何を言っているんだか。それにもしあってもお前らに使う金はない」
「ゆきちゃんに使うんだもんね」
「愛されてるね、ゆきちゃんは」
「は~成人済み独身女性が集まってる中で一人惚気話か~爆発してくれないかな~」
こいつらこれからどうやって生きていくつもりなんだろうか。
配信一本でやっていくにしてもいつしかそれも終わりを迎えるだろう……
そうしたらREVIAに戻ればいいと思うがそう簡単に上手くいかないからな……
そんな無駄なことを考えている間にもマッチングが終わりマッチが開始しようとしていた。
「さーて本気出すぞー」
ルドが意気込んでいるがこちらには人力チーターがいるので足を引っ張りさえしなければ多分勝てる。
なので俺は戦い方を学ぶだけだ。
頑張った結果余計に足を引っ張るぐらいなら見て学ぶだけのほうが周りにも迷惑を掛けなくて済むだろう。
なので俺はとにかく余計な手出しはせず今回は学ぶことにした。
「む、むずかった……」
まさかここまで頭を使う羽目になるとは思わなかった。
キャラごとのスキルみたいなものを使うのにもなかなか面倒だったし立ち回りに関してはA〇EXとは違って随時頭を使わなければ本当に足を引っ張ってしまう。
これは……今後滅多にすることはないかもな……
誘われない限りはしないと心に決めた。
次のツキの枠ではス〇ラをすることになっている。
そこまでガチでやりこんでいるわけではないが時々やってはいる。
「これは……希華対私たちでいいかな……?」
「え?私だけ一人?ハブられたのかな……せめて凛斗君だけでも貰っていいよね?」
「その一人が大きい……」
「ん~ならツキを向こうにやればいいんじゃない?」
「それってチームの戦力にもならないって話?怒るよ?」
「まあツキを向こうにやっても戦況が変わると思えないからこのままでいいよね?」
黒さん容赦ないな……
これじゃあ皆がツキのこと弱いと言っているようじゃないかー
まあ実際のところツキにゲームのセンスがあるかと問われたら悩むぐらいだな。
取り合えずやってみなきゃわからないということにして希華さん対俺ら四人で戦うことにした。
「ふっふっふ~これはナワバリバトル!人数の有利で勝て……ギャアアアア」
調子に乗ったルドが早速やられている。
確かにこのモードは人数の有利で勝てるが希華さんの場合、敵を全員ずっと倒してリスポーン地点の近くしか塗らせないというなんとも脳筋的な戦い方をしている。
そんなこんなしているうちに俺たちのチームはリス地から出れなくなっていた。
これは……負けるかもしれないな……
もう勝ち目がないということを確信してしまった。
「やるぞー」
希華さんの配信では希華さんが一番得意としてこのゲームで知名度が上がったと言えるA〇EXだ。
このゲームは最大三人までなので三人プレイして残りの二人実況解説か雑談するというなんともよく分からない配信になる。
やってみなきゃ分からないということで取り合えずやってみることにした。
案の定グダグダしてしまったが新鮮味があって少し良かった。
リスナーのほうも実況とか聴いて受けている様子だったし失敗ではなかった。
ここで一旦休憩を挟むことになった。
時刻を見てみると予定通り八時なので次の開始は九時からだ。
それまでに俺は夕飯を食べることにした。
一旦通話をミュートにして椅子から立ち上がり部屋を出てリビングに向かった。
「ん?帰ってきていたのか」
「ただいまです。ご飯できてるのですぐ食べれますよ」
今日愛理さんはレッスンを受けにコラボ配信が始まる前ぐらいに家を出ていた。
そういえば七時頃に帰ると言っていたな……
すっかり忘れていたが今、思い出した。
皿に料理を盛り付けテーブルへ運んだ。
「は~なんだか先輩たちに樹さんを取られた気分です」
そんなことをぼそっと言ってから「いただきます」と言い目の前にある料理を食べ始めた。
このぐらいのことでも嫉妬するのか……
なんか可哀そうになってきた。
「これがNTR!?」
「愛理さん?一旦落ち着こうか?誰が誰に寝取られたんだって?」
さっきまで可哀そうと思っていたがその心は愛理さんの一言で全て消し飛んでしまった。
「は~これは寝取り返すしかないですね」
「何言ってるんだ……」
寝取られたから寝取り返すって……
まずまず俺は誰とも寝てないが!?
「あーあ、樹さんが肉食だったら今日の夜美味しく頂いてもらえるのに、これですしねぇ……」
「うっ……」
何も言えない……
愛理さんがこれだけアプローチ(?)をしてきているというのに俺はほとんど答えられていない。
多分愛理さんは普通とは違う速度で物事を進ませたいのだろう。
本来であればそれに俺が合わせなければ彼氏ましてや許嫁に相応しくないだろう。
ただこれぐらいの距離感が心地よいと感じている自分があるしそれ以上にこの先へ進んだら愛理さんに飽きられてしまうのではないかという恐怖もある。
それはないと願いたいが……
愛理さんも人間だから絶対ないとは言い切れない。
「まあなんか樹さんだしってことで割り切れてますし」
「……なぜ俺と関わった人間は全員その感じで落ち着くんだ」
「う~ん、なんか樹さんっていう感じなんですよね。言語化するのは難しいですけどなんかあ~そういう感じの人ですよねってなるんですよ」
「なぜその大雑把な理由で皆が俺に抱く印象が一緒になるのか全く分からないな」
数年前からの疑問が晴れず夕飯を食べ切ってしまった。
俺は自室に戻りPCの前に座った。
他の四人はもう休憩が終わり通話に入っている様子だった。
その通話に入ると……
「ふざけんな!婆が!お前次喋ったら過去の事T〇itterで呟いてやる!!」
「ルド落ち着きな」
「どうしたんだ?」
「あ~凛斗君は知らないほうがいいかも。配信始まる直前まで抜けてくれる?」
希華さんは随分と呆れた雰囲気で俺に通話を抜けるように言ってきた。
もしかすると今のsiveaの知ってはいけない部分について話しているかもしれないので抜けるしかなかった。
まああの状況を聞いただけで考えるとルドとツキが言い争っているようだったな。
結局何もできずじまいのまま配信が始まる直前になろうとしていた。
メッセージのほうに希華さんから「来ていいよ」と来たので通話に入った。
「はぁ……まったく二人は今日の配信終わったらこの通話に残りな」
「「……」」
二人とも黙ったまま喋らない。
こいつらいい年した大人なんだけどな……
ルドに至っては中学生いや酷い時には小学生の域まで落ちる時があるからな。
「時間だし配信始めよっか」
結局釈然としないまま配信が始まってしまった。
「はーいはいはい、コラボ配信最後はマ〇クラしながら終わるよ~」
今ではほとんどの人が知っているであろうサバイバルやら建築やらで有名なマ〇クラ。
特にお題を決めたりするわけでもなく各々がやりたいことをやりながら雑談をするという形になった。
にもかかわらずルドとツキは俺を倒そうとしてくる。
それと希華さんあなたはRTAの準備するのやめろ?
明らか一人先に進んでいる。
「黒さん、放置するのやめないか?」
「だるい」
「あとツキとルドは攻撃をしてくるな!」
「そういえばなんで私たちのことはさん付けしないのかな?」
「話を逸らすな……あとそれだけど、お前らに助けてもらうどころか迷惑かけられてもう、年上として見れない」
「事実年上だけど?」
「まあうん、二人はちょっと、ね?」
一人黙々とRTAをしていた希華さんが口を開いた。
「なんでよ!」
「ひどくない?」
「しゃーなし」
「「黒?」」
ルドの配信のコメ欄を見てみると黒さんに賛同している人が多い。
これは決まったな。
「まあちょっと凛斗が大人びてるところはあるかもしれないけど……」
「凛斗は……暴走してたね……」
「おかげでこの通りだけどさ」
「結局この五人が揃うのもsiveaがあったからだし」
「お前ら四人はここまで知名度上げてきただろ?結局俺が居なくても創ってここまで上げることはできただろ」
正直なことを言うと俺はsivea設立を早めただけだ。
勿論多少なり仕事はして貢献したつもりではいるが、元ある仕事を俺が引き受けてただけだからな。
「でもねぇ」
「REVIAの技術の進歩もあったしねぇ……」
「色々とやってたね」
「給料上がったから助かったよ!」
金好き黄金ルドという名前にしても問題なさそうだな。
黄金って苗字の時点でご察しの通り感は凄いが。
「いや~惜しいの逃したね」
「あのままうちに取り込めたらこれ以上になってたと思うなあ」
「悔しいけど技術だけは一人前だしなぁ」
「あのまま残ってくれて雪ちゃんいなかったら家に連れ込んでたかも」
急に爆弾発言をしてきた黒さんには俺も驚いた。
今はもう大丈夫だと思うが怖すぎるだろ。
しばらくうちを出禁にしないと危険すぎる。
「黒さん?さらっと恐ろしい事言わないでくれ?」
「でも黒の気持ちわかるよ」
「希華は会ったらダメ。落ちるからそのまま家に引き籠ってろ」
「凛斗あとで写真送ってね」
「ゆきちゃんに頼めばいいんじゃない?」
「名案」
「別に俺は気にしないんだがなあ」
「凛斗の問題じゃないよ?」
……どういうことだ?
別に希華さんに送ろうが晒されなければ別に気にすることないと思うんだが。
俺が分からず混乱していると結論が出る前に黒さんは呆れてため息までついた。
「もうこの話は終わり、メタくなるし凛斗が馬鹿だわ」
「こいつ脳どこに使ってんの?」
「ゆきちゃん?」
「それは~そうかもね……」
「待て、なぜそうなる」
「普段からリア充配信、雑談もゆきちゃんの話題……逆にそうならない理由があると思ってるの?」
確かに思い返してみれば黒さんの言う通りだ。
最近配信をしても愛理さんに乱入されるのがオチで結局雑談配信のほとんどは愛理さんの話題で繋げている。
「まあでもここまでゆきちゃんが愛されてるのは羨ましいよね……それに比べて私たちは……」
一気にこの場の空気が沈んだ。
お、重い……
こいつら性格が終わってるのとか最近は家から出ないことが多くなっているから余計出会いというものがなくなっているんだろう。
「凛斗のこと寝取ったら勝ちじゃね?」
「ゆきちゃんに殺されるよ」
「怒らせたくないね……」
ルドの案は愛理さんに怒られるという理由で即効消された。
まあ当たり前だ。
というかこいつらよく普通に喋りながらゲームできてるよな……
ゲームの話題にはほとんど触れず各々やりたいことをやっている。
「黒さんはそういえば事務所の男に片っ端から誘うのやめたか?」
「おい、黙ってろ。社長に怒られる」
「そういえば前はそうだった…………全部失敗してたのは今でも覚えてる」
「凛斗は、ギリ成功しそうだったのにね……」
「凛斗が中学生じゃなかったら勝ちだったのに……」
「そういえばなんでツキは黙ってるのかな?いや中学生まで範囲のショタコンさん?」
おい、そこのルドとかいうやつ黙らせろ。
ツキと俺が一番思い出したくない話題が出てきた。
その話するぐらいなら俺が黒さんに落ちそうになった話をしていた方がましだ。
「ルド、あとで覚えてろな?」
「ひぃっ」
「取り合えず話題を戻そっか」
「なんだっけ?凛斗が黒に落ちそうになったことだっけ」
「……まあ当時俺が一番頼れたのは黒さんだろうからな」
「まあようは一番信頼してたし一番懐いてたのが黒だから黒からの誘いなら……みたいなところね」
「どうだろうな?あまり覚えてないが……まあでも正直なこと言うとめっちゃ押されたからな……断りづらかったのほうが正しい」
俺も当時のことはそこまで覚えていないが黒さんにめちゃくちゃ押されて断りづらくてなんかだんだん……みたいなところで我を思い出したから断った気がする。
あまりにも曖昧で覚えていない。
「今も押したらいけるんじゃない?」
「ゆきちゃんがいるせいで攻略難易度MAXになってそうだけど」
「希望があるなら私は行くよ」
「黒さん、出禁にするぞ」
「ゆきちゃんとコラボできなくなるから困る」
「あ、はい……」
それは俺の一存で決められることではないな……
あの黒さんと愛理さんのコラボ配信は意外と需要と供給が成り立っているらしく腐れることなく偶にやっている。
そんな配信を俺が潰したらぼっこぼこに叩かれるので何もできん。
「凛斗のことだから押し倒してキスすれば落ちそう」
「分かる」
「分かるわぁ」
「なんだその弱い人間は」
「お前だよ、凛斗。朴念仁みたいな感じのくせに押しに弱すぎるんだよ。押し耐性1だろ。言っとくけどゆきちゃんに落ちてるのもゆきちゃんがグイグイ来てるからでしょ……」
なんでここまで立場が低くなっていくんだ……
一緒にsivea創った仲間なはずなのに……
それなのにどんどん詰められだんだん言い返せなくなくなってきている。
「凛斗は良い人で仕事もできるけどこの残念感はなんだろうね」
「凛斗だから」
「凛斗だからしゃーなし」
「凛斗だよ?」
フルボッコ……
俺の心傷ついた……
この配信終わったら愛理さんに慰めてもらおう。
「なんでコラボでこんなにフルボッコにされるんだ……」
「まあ社長が~「凛斗だし適当に扱っても大丈夫」と言ってるから」
「クソッ、3D技術の権限返してもらうぞ」
「……おい、お前ら全員で凛斗の家に殴り込みに行くぞ!なんとしてでも3D技術だけは守れ!」
「「「アイアイサーッ!」」」
「冗談ということにしようか」
「ヨシ!」
「ヨシ!」と聞くと猫が出てくるな。
あの存在は知っているが元ネタは知らない。
ネット界に蔓延るあの猫は一体……
結局いつものように喋りながら昔のことを振り返ったり今どうしてるかとか適当に話したいことを話した。
「さぁーて、もう終わりか~」
「久しぶりに凛斗と遊べて楽しかったね」
「また、遊べるかはわからないけど遊べたらあそぼ」
「そうだな、今後もよろしく頼む」
「各々宣伝したら終わりにしようか」
「えーじゃあまず私から登録者数40万人記念配信今度あるよ~詳しいことはまたあとでね~」
「40万人おめでと~!」
希華さんはついこの間登録者数40万人突破したと呟いていたな。
一期生の中だと一番少ないが俺からすれば配信者として尊敬すべき登録者数だ。
「あーそうだ!今度ライブあるよ」
「え?そうなの?」
「うん、そういえば告知するの忘れてた。はい、他に告知したい人いる?」
忘れてはいけないことを忘れているなこいつは。
今回ばかりは流石にルドのことだからと見切りをつけることはできないな。
何か告知することないかと考えたが俺は特に告知することはなかった。
「俺はないぞ」
「私もない」
「私もないよ」
「じゃ、私黄金ルドのライブと藍晶希華の40万人記念があるということで配信終わるね」
「おつ」
「おつ~」
「皆、見に来てくれてありがと~」
「お疲れ様」
EDが流れそのまま配信は終わった。
そして先ほどまでの賑やかさはなくなりその代わりに訪れた静寂。
最後の配信が始まる前にルドとツキは通話に残るよう黒さんに言われていたことを思い出した。
「さて、希華はどっちでもいいけど樹君は抜けていいよ」
「抜けるわ。おつ」
俺はそう言いあの空気の重い空間から脱した。
最後、俺の事本名で呼んでたし黒さんは少しイラついているんじゃないか?
何をやらかしたらあそこまでの状況になるのか俺にはイマイチ理解できない。
そんな俺にそこまで関係ないくだらないことを考えていながら背伸びをしていると愛理さんが部屋の中に入ってきた。
「樹さんお疲れ様です」
「愛理さん?さりげなく抱き着いてくるのやめないか?」
「だってぇ……」
俺の胸にグリグリと頭を擦りつけてくる。
何だこの可愛い生き物。
「むー樹さんしばらくコラボ禁止」
「それは……雪ともコラボできないということだな」
「ぬ」
「あー残念だなー」
「前言撤回します」
素直だな愛理さんは。
「風呂入って寝るか」
「一緒に?」
「風呂は別だ」
そんなしょぼーんと明らか残念そうに暗い顔を見せられても困る。
まず許嫁とはいえ高校生の男女が一緒の家に住んでるのが問題だからな。
それなのに一緒に風呂入るとか普通アウトだからな。
今更ながらそう思ったがなんかもう色々とアウトな気がして呆れた。
「え~一緒に入りましょうよ~これまでも入ってきたじゃないですか~」
「偶にな?それも愛理さんが強引にだろ?」
「なんです?私が強引に入ったらいいんですか?」
「そういうことじゃない」
愛理さんを落ち着かせ風呂に入って少しゆっくりしてからあがってベッドに倒れこむようにして寝っ転がった。
それから少しして結局ツキとルドが黒さんに怒られている理由を考えたが分からなかった。
気になったがそれでもまあ関係ないしな、と割り切り目を瞑って寝た。
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