#24

 紀里も帰ったのか愛理さんがリビングへ戻ってきた。


「いや~楽しかったですね」


「中々地獄だったけどな」


「まああれはあれで楽しかったじゃないですか」


 すると突然愛理さんが脱ぎ始めた。


「愛理さん!?」


「え、家に居るのに制服のままって嫌じゃないですか」


「風呂入ってきたらどうだ?いや風呂沸いてないからシャワーだけになると思うが」


「そのために今脱ごうかと……」


「ここで脱ぐ必要あるか!?」


「え、樹さんに見てもらえるからですかね?」


 ……ダメだこりゃ。

 なにを言っても狂った返事をされる……

 愛理さんを浴室へ行かせ俺は後片付けをすることにした。


「さてと……」


 取り合えず菓子の袋やらなんやらをゴミ箱へ捨て机を拭いたりゲーム機を片付けたりしているうちに愛理さんが風呂から上がってきた。


「風邪引くぞ」


「樹さんが看病してくれますしおk」


「ほら服着ないんだったら寝室行って布団に包まってなさい」


「なんか樹さんが手馴れてる……」


 流石に服を着ないで過ごそうとするのを何度も繰り返して来たらどうすればいいかぐらい分かってきた。

 愛理さんを寝室へ連れていき布団を被せて俺は掃除の続きをさっさとしてしまい浴室へ向かった。


「マジで疲れた……」


「いや~そうですね~」


「なんでいるんだ……」


 知らぬ間に愛理さんが覗いていた。

 扉を開け中に愛理さんが入ってきた。


「夫のお風呂シーンには妻が居て当然かと」


「夫婦じゃないが?」


「実質そんな感じじゃないですか」


「許嫁だからな……じゃなくてまだ許婚だからな?夫婦じゃないんだぞ?」


「まあまあ頭から足先まで洗ってあげますから落ち着いてください」


「逆に落ち着かなくなる」


 というかなんで体を洗ってもらって落ち着くと思っているんだ愛理さんは……

 夕飯を作っていないことを思い出したので愛理さんに作ってもらおうと思い、言ってみることにした。


「愛理さん夕飯作ってないから作ってきてくれないか?」


「え~いいですけど~」


「よし、じゃあ作ってきてくれ」


 嫌々ながらも愛理さんは夕飯を作りに行ってくれた。

 流石に服着てから飯作ってるよな?

 そこは愛理さんだから大丈夫だろうと信じて俺は浴室へと入った。









 風呂から上がり服を着てからリビングへ出ると、


「あ、ご飯できてますよ。すぐできるようなものだけですけど……」


「飯食う前に一つ訊いていいか?」


「はい?なんです?」


「裸エプロンはやめてくれ……目のやり場に困る」


 問題は一般的に使われるようなエプロンではなくマジで短いギリギリのやつを着ているということだ。

 困っている俺の様子を見たからか愛理さんはニヤっと口角を上げ近づいてきた。


「ほれほれ~どうです?私の裸エプロンは~我慢できなくなって夕食より先に私のこと食べちゃいますぅ?」


「はぁ……寒くないのか?」


「暖房効いてますし別に」


「ほらさっさと夕飯食べて一緒に寝るぞ」


「樹さん?罰ゲームのこと忘れてません?寝かせませんよ?」


「……キスだけで許してくれませんかね」


「えーまあいいですよ~樹さんに嫌われるよりはましなので」


 俺が愛理さんを嫌うことは多分一生ないと思う。

 愛理さんに襲われた時はまあ俺が愛理さんのことをしっかりと愛せていなかったんだなあ、と思って今後のために頑張るだろうし……

 結局俺たちは大人しく夕飯を食べた。




「ほらもっとくっついてくださいよ」


「いやあのな……」


「いっぱいキスするって約束したじゃないですか」


「いっぱいってなんだいっぱいってそんな約束してないんだけどな……」


 裸のまま布団の中でくっついて来ようとする愛理さんに俺の理性はどんどん削られる。

 頼むから服ぐらいはまともに着てくれ……そう思っても無駄だとは分かっているがそうしてもらわないと俺がどうなるか分からないから本当に服を着ないのだけは勘弁してもらいたい。


「だってえっちなことの代わりにキスをするんですから一回キスするだけじゃ足りないですしましてや樹さんは唇と唇を合わせるだけの軽いキスしかしないじゃないですか。こんなに仲良くて一緒に寝て一緒にお風呂に入って一緒にご飯食べているというのに……」


「まだこの関係を保っていたいんだよ!……あとちょっと恥ずかしい」


「ふへ、樹さんのそういう発言好きですよ。可愛くて」


「あまりそういうこと言わないでくれ」


 俺は照れ隠しに愛理さんの頬を引っ張った。

 愛理さんの頬の柔らかさって丁度いいんだよなあ。

 硬すぎなく柔らかすぎでもないからずっと触っていたくなる、そんな柔らかさ。

 ムニムニと愛理さんの頬を引っ張りながら揉んでいると胸を押し付けるように抱き着いてきた。


「何やってるんだ」


「ひょれうえへもひたもきもひいでしゅよね」


「そういうことか……」


 だんだん意識が胸のほうへ持って行かれる。

 愛理さんは一糸纏わぬ姿で俺に抱き着いてきているのでいつもより愛理さんの体の形が伝わってくれる。

 集中すればするほどどんどん愛理さんの胸へと意識が行く。

 流石に理性に危機を感じ愛理さんの頬から手を離し逃げようとするが愛理さんに抱き着かれていたので逃げられなかった。


「よくここまでされて耐えられますね」


「誰が俺のこと耐えさせているんだ。誰が……」


「耐えなくていいのに……」


 今ここでそれを言われると俺の理性が……

 流石に限界にきそうだ。

 これ以上は俺の限界なのでなんとかしてこれ以上理性を破壊されないように抑えようと何か抑えられる方法がないか考えた。


「愛理さん、背を向けてくれないか?」


「嫌です!樹さんの顔を見たいです……ひゃぁっ」


「ちょっとすまん」


 愛理さんが可愛い声を出していたが忘れることにし愛理さんの体を無理矢理動かして逆にした。


「なんか手つきがえっちです」


「こうしてたほうが落ち着く」


 俺は愛理さんの後ろから抱き着くようにして腕を愛理さんのお腹あたりに持って行った。

 胸が破壊力あるなと思っていたがこっちのほうが意外と破壊力高めで死ねる。

 今見てる背中もうなじも俺が触っている愛理さんのお腹も理性を破壊しに来ている。


「胸揉んでもアソコ触ってもいいんですよ」


「お腹のほうがいい」


「え、素直で可愛い」


「揉むぞ。お腹を」


「え?いいですよ、別に。樹さんにならどこ触られても何されても拒みませんから」


 いやなんかありがたいけど人間的にそれはどうかと思うぞ愛理さん。

 そう心の中で思いながら俺は愛理さんのお腹を揉んだ。

 この柔らかさが丁度いいんだよなぁ……

 やっぱり愛理さんは俺を駄目人間にするために生まれてきたんじゃないかとつくづく思う。


「なぁ、噛んでもいいか?」


「え?いいですけど明日学校なので痕はあまり残らないようにしてくださいね?あと噛む代わりに呼び捨てとキスをあとでしてください」


 我慢できずに愛理さんのうなじを甘噛み程度に噛んだ。

 あ、やっばい。

 流石にこれ以上は脳がぶっ壊れると思い離れた。


「はい、じゃあキスと呼び捨て」


 愛理さんがこっちを向いてそう言ってきた。


「愛理……好きだ」


「うへ」


「『うへ』はやばいだろ」


「ほらキスしてくださいよ」


 仕方なく愛理さんにキスをした。

 相変わらず愛理さんは俺の口の中に舌を入れてこようとするが、なんかだんだん呆れたのか諦めたのかそれとも本能的に欲しくなってきたのかは分からないが、受け入れようと考えている俺が居る。

 それでも今月は今月だけは耐えようと必死になっている。

 別に嫌ってわけでもないからな……


「ほら寝るぞ」


「え~まだ眠くないので私は樹さんを舐めてます」


「は?」


「耳とか頬とか唇とか?」


「俺が寝れなくなるだろ……」


 こういうことをさらっと言ってくるから油断できない。


「じゃあ耳ハムハムしましょうか?」


「大して変わらないんだよ……」


「じゃあどうしたら樹さんは寝れるんですか!?」


「愛理さんが何もしないで目を瞑っていれば寝れる」


「じゃあ耳舐めします」


「どうして俺の言葉を聞いてそうなる」


「じゃあ頬?」


「舐めようとするのをやめような?」


 いや愛理さんの耳舐めとか需要の塊でしかないからありがたいんだけど今は寝たいんだ。寝かせてくれないと欲が表に出てしまう。

 試しに仰向けになり目を瞑ってみるとぞわっという音と共に温かい濡れているものが耳に触れてきた。


「愛理さん?やめてくれ?」


「嫌で~す」


 耳の中に舌が入ったまま囁かれるので背筋が伸びる。

 ずっとこのままがいい…………もうこのまま寝よう……

 雑念を消し愛理さんの猛攻も忘れて目を瞑って意識を暗闇に落とすように寝た。




 あれから数日経ったが紀里からは余計嫌われ、京一とは微妙な間を感じるようになった……

 なぜ俺だけこんな……

 世の中の理不尽さをよーく身に受けた。

 ちなみに紀里からしっかりと愛理さんの昔の写真を回収してある。









「あばばばばばば」


「どうした?大丈夫か?」


 二人で休日を満喫しているとスマホを軽く手に取り見た愛理さんが急に壊れた。


「ライブ面倒くさい……」


「頑張れ」


「うわーん、樹さんが冷めてるー……倦怠期なんですか?」


「倦怠期なはずがないだろ」


 愛理さんが好きで好きでたまらないからなあ。

 俺たちに倦怠期が来ても絶対に二人で乗り越えるから問題ない。


「何で私Vtuberになったんですかね……歌って踊ってファンサをするライブなんて面倒くさくて嫌なんですけど?」


「ファンとして助かる」


「私が体を動かしたいと思う時は樹さんとイチャイチャするとき以外ないんですよ」


「そうか……」


「私が帰ってくるたびに樹さんがマッサージしてくれたら頑張れるかもしれないです!勿論普通にマッサージしていくうちに樹さんが私の身体に興奮して……でもいいですし最初からえっちなマッサージでもいいですし」


 最初の一言で終わっていれば俺は素直にマッサージしてやったのにな。


「なんでそんな残念そうな顔でこっちを見るんですか」


「いや別にさっきの言葉最初の一言で終わってたらマッサージしてあげたのに愛理さんはもったいないことするなあって思った」


「じゃあ今から私が樹さんにマッサージするのでそれでさっきの言葉は取り消してくれませんか?」


 ……ま?


「普通のか?」


「はい、普通の」


「……よろしくお願いします」


 あー生まれてきてよかった。

 こんな些細なことでも愛理さんが居るから神様に感謝できる。


「じゃあソファーに寝っ転がってうつ伏せになってください」


 寝っ転がってうつ伏せになると俺の上に愛理さんが乗っかってきた。

 これ意外とやばいぞ。


「ちなみに言っておきますけど別に私やり方知ってるわけじゃないので気持ちよさそうなところとかよく凝りそうなところとかやるだけですからね?」


「大丈夫、俺もよく知らんから」


「じゃあ肩の辺りからしますね。痛かったら言ってください」


 愛理さんが俺の肩に手を置くとグッと力を入れて押し始めた。

 気持ちいい……

 丁度いい力加減で押してくれるので気持ちよく感じる。

 あと愛理さんが可愛い。

「んしょ」とか「ん~!」とか言うのでただひたすらに可愛くてもう可愛い。

 可愛いと気持ちいいで語彙力が低下し始めたころで愛理さんは肩から背中へ手を下げていった。


「あーそこ気持ちいい」


「ここですね!」


 ふにゃふにゃになりそう。

 冬なのに夏場のコンクリに落ちたアイスのように溶けそうだ。

 愛理さんが背骨辺りを押した瞬間ボキボキという音が鳴った。


「え?だ、大丈夫ですか?」


「大丈夫だが……背中押されるの久しぶりだから結構な音鳴ったな」


「ふーん……大丈夫ならいいですけど」


「なんだその反応は」


 背中の上から圧を感じる。

 背中に手が乗せられまたマッサージをしてくれるかと思いきやそのままその手は肩のほうへ行きその代わりに背中に柔らかい何かが当たった。


「マッサージは?」


「ぎゅ~ってしたくなったのでやめま~す。いやこのままおっぱいでえっちなマッサージを……」


「このまま俺が仰向けになってもいいのか?」


「ん~いいですけど、私が怪我したら責任取って今夜はベッドで激しい運動を――――」


 愛理さんの締め付ける力がより強くなり耳元で呼吸音がするほど顔を近づけられた。


「しましょうね?」


「怖い……」


 甘く毒のあるような声で囁かれたからかいつもより妖美に感じる。

 ただ締め付けられ耳元で囁かれたせいか魅力的にも感じるが恐怖のほうが勝るような感じがした。


「そんなに怖かったですか?」


「なんか蛇に巻き付かれて絶対逃げられないようにしたところで噛まれた気分だった」


「それは確かに恐怖ですね」


「さっきの愛理さんも好きだが俺はいつもの愛理さんのほうが好きだ」


「え~えっちなほうの?いいですよ?今から裸族に……」


「それじゃないが、その感じの愛理さんが一番自然で落ち着く……」


 これがいいんだろ?と言わんばかりに俺の背中に胸を押し付けてくる。

 クソッ俺たちの関係がもう少し進んでいたらこのまま押し倒してたのに!

 関係が進まないのは誰のせいか深く考え心の中で俺の欲と愛理さんに土下座した。


「はぁ~じゃあ樹さんに選択肢を与えましょう」


「なんだ?」


「私とこのままベッドへ行っていちゃラブセックスするかいつかは分かりませんけど丸一日を裸の紀里と二人っきりで過ごす……どっちがいいですか?」


「なんで紀里が出てくるんだ……」


「え~この間紀里が家に来た時紀里の裸見たがってたじゃないですか~それに気になったので」


「それは勿論……」


「勿論?」


 俺はこの話の間に一つの可能性を見つけてしまった。

 紀里と二人っきりで過ごすと言っても俺が見なければいいだけの話だし紀里に至っては俺に絶対見られたくないという意思があるから俺の顔を殴って潰してでも見せる気はないだろう。

 ということは俺が見ないまま一日を過ごせば……


「あ、ちなみに言っておきますけど紀里と過ごす場合は私は監視して、もし樹さんが見ないようなことがあれば樹さんの服も引っぺがして二人とも椅子に縛って絶対にお互いの姿が見れるようにしてあげます。そして樹さんには罰として私と一緒に一週間裸のまま過ごすことにしましょう」


 紀里の予定が合わないことを祈ってそれに賭けるか諦めるか……


「樹さん顔に出やすいですよね。紀里と予定が合わないのなら私が二人を睡眠薬で眠らせて適当な部屋に監禁するのでご安心を」


「愛理さんどうして紀里を使おうとする」


「え?だって紀里の裸見たいし樹さんの反応見たいので。それに樹さんと紀里は誤っても変な方向にはいかないと確信してるので、だって樹さんは脳内100%私にすれば問題ないですし紀里に至ってはもう脳内100%弟でしかないので」


 確信から来るこの発想はなんだ?

 まあ紀里が残念な人間だということは置いておいて愛理さんが俺の脳内を変えてくると考えると……やべぇ楽しみ。

 愛理さんがどういう方法を取るのかは分からないが俺の脳内が愛理さんで埋め尽くされたら愛理さんのこと以外見れなくなるというありがたくて嬉しい話だぞ……


「まあでも愛理さんといちゃラブ……のほうがいいか」


「じゃあベッドに行きましょうね」


「愛理さんの事よく知ってからがいいんだけどなぁ」


「え~?でももうこんなに仲いいですし樹さんは私のことよく知ってるじゃないですか~」


「キスもまともにできてないのによく知ってるって言えるのか?」


「それは樹さんがしないだけじゃ……んー!じゃあいいですもん!もっと樹さんと仲良くなって一瞬でも油断したら食べちゃいます!ガオー!」


 このまま俺が愛理さんの事食べてしまいそうになるからガオーとか言わないでくれ……


「じゃあもぉーっと深く知るためにまずは~」


 背中の方で布が擦れる音がする。

 嫌な予感しかしない。


「あ、樹さん今着てるこの服ってお気に入りだったりします?」


「いや別に適当に買ったものだし……」


「ならよし」


 何がよしなんだ……

 気になるので仰向けになりたいがもし仰向けになって愛理さんが地面に転げ落ちたりしたら大問題なので絶対にできない。

 もし仰向けになって落ちて何ともなくても愛理さんが責任取れと言ってくる気がするし……

 布が擦れる音が止み何か物を置く音がした後俺の上衣を持ち上げ中に入ってきた……入ってきた!?


「狭いですね」


「そりゃそうだろうな!だって二人で着る物じゃないからな!」


「顔出せるかな~」


 愛理さんの頭が俺の肩辺りで動いてくすぐったい。

 そして最大の問題は……


「愛理さん上半身何も着てないよな!?」


「ええそうですよ?だって服着るのに服着てたらおかしくないですか?」


 本当に大丈夫かこの子……

 愛理さんの胸が、生の胸が俺の背中に押し付けられ……興奮してしまう。

 仕方がないだろう……男としてこれは本能に刺激されてるんだ……無理に決まってる。

 それに今までは服越しだったから少しわかるぐらいだったが肌と肌で触れ合って余計に愛理さんの胸の先端の形が分かってしまう。


「ばあっ、出れましたね。髪の毛引っ掛かるから出さないと~」


「きついからやめてくれ」


「う~んやっぱりおっぱいが大きいからきつくなるんですかね?」


「それ以前の問題だろ……あと顔を横に持ってくるのやめてくれないか?ドキドキするから」


「えへへ~じゃあくっついちゃお」


 愛理さんの顔が俺の首元にくっついた。

 ここは楽園か?

 好きな人が上裸で俺と一緒の服の中に入り込み顔を出してるんだぞ。

 ただこのままで居るのは普通に危ないので俺はこの最高な状況を我慢し服を脱ぐことにした。


「愛理さん、ちょっと動きたいから起き上がりたいんだが」


「いいですよ~」


 俺と愛理さんはソファーに座るような形になった。


「ちょっと、顔引っ込めるか?」


「え?できますけど」


 愛理さんの顔が俺の頭に当たらないようにしてから俺は服から抜け出した。


「あ~!逃げないでくださいよ」


「危ないからな……」


「ふーんだ、今日この服は私が着ますからね」


「別にいいが……」


「私がナニしても文句言わないでくださいね」


「やっぱ返せ」


「逃げ出した人に言われも嫌で~す!」


 俺の服を着たままリビングを出ていってしまった。

 ……愛理さんさっきまで着てた服どうするんだよ。

 俺はこんな冬の中で上裸のまま居るわけにもいかないので愛理さんの服を洗濯機の中に突っ込んでから代えの服を着てソファーに寝っ転がった。

 可愛い……可愛いんだがなあ……

 許せてるからいいんだがまったく困ったものだ……


「暇だな……」


 愛理さんと少しでも話せないとこんなにも暇になるのはもう重症だな……

 配信でもするか……

 何もすることがなくここでボーっとしてるよりも最近あまりできていない配信をした方が良さそうだと思い俺はリビングを出て自室のPCの前に座った。


「さてとゲリラ配信ってことにすれば今すぐ開いても問題なし」


 配信の準備をしすぐに開いてしまった。

 ゲリラだというのになんか同接百人いるんだが!?

 これまでじゃ考えられないどころの話じゃないな……


『逃げ出したんか?』

『どしたん?話聞こうか?』

『嫁さんほっぽり出して配信するのはやめとけ』

『凛斗、謝って来なさい』


「俺がゲリラ配信した時はなんで雪から逃げ出してるときってなるんだ……」


 コメント欄は俺が逃げたということで満場一致になっている。

 立凛まで……これは解せぬ。


「いやな?雪が俺のマッサージするとか言って途中までは良かったんだが途中から意味分からなくなってきて果てには俺の服の中に上裸で入ってきたんだ。で、まあ抜け出したんだけどそのまま服持ってかれてた」


『おっふ』

『砂糖が口から出てくる』

『コーヒー飲んでるのに口の中がグラブジャムン食ってる時だこれ……』

『無理だ、甘いものが口の中に入らない』

『一人寂しい俺に無理矢理サトウキビ食わされてる気分』

『これで涙拭けよ……』

『この二人がおかしいだけだ俺らが当たり前なんだ……ああああああああああああああああああ』


「コメ欄がなんか荒れてるんだが……」


『いらない糖分を口の中に突っ込まないでくれ』

『凛斗、私独身だよ?はぁ……モデル描かなきゃよかった……』

『雪花と凛斗のコラボ名糖分でいいだろ……うぷっ……』

『二人の名前から取るのではなく二人の関係性から取ったいい名前だ……おえぇ甘すぎる』

『ま、待て。これ以上やったら死ぬぞ!俺が』


 コメ欄がずっと荒れている。

 よく考えろ昔の俺……

 確かにこの話は少しやばかったかもしれないな。


「まあ俺は特にやることないから配信開いたけどこうなるとは思ってなかった」


『何この配信……』

『黒!?』

『こんくろ~』


「黒さん……なんで来てるんだよ」


『新婚がやばいってSNSがギャーギャー言ってるから見に来たんだけど』

『こいつらヤバい』

『いい意味でやばい』

『糖分製造機』

『なるほどね。結構、はしゃいじゃってるわけか』


「黒さん、今度からうち出禁にするぞ」


『それは困るよ。私らの仲だろ?これからも入れてくれよ』

『凛斗、流石に黒まで狙うのは……』

『仲良いんか』

『一期生だったら仲良いかは別としてこいつは全員顔知ってるよ』

『だいぶ前からの付き合いなのか』

『社長とも顔見知りって言ってたしな』


「一回黙ってろ」


『クソガキと白ツキ連れてこようか?』


「やめてくれ、コメ欄が荒れる」


『仲悪いの?』

『めっちゃ悪い。特に白ツキ。ルドは性格の違いだけだからまだましだけど』

『まあルドちゃんは分からなくもない』

『白ツキと仲悪いのは意外だな』

『まあ過去に色々とあったんだよ』


「おい、黒さんや、そろそろその口閉じないとBANするぞ」


『黒のピンチを聞きつけ参上!黄金ルドだよ~』

『ルドに続き登場!白月華ツキ!』

『なんか来たほうがいいかな?って思ってきたよ、藍晶 希華あいしょう きかだよ!』

『sivea一期生全員集合☆』

『え?何この配信……』

『滅茶苦茶w』

『sivea一期生が個人Vtuberに集まることなんてないだろw』


「お前ら後で社長に話しておくから覚悟しておけよ」


『ヒェッ……』

『やめて』

『やめて』

『家凸するぞ』

『一人だけ強気なの居るってw』

『黒だけ凛斗の家、知ってるのか』


「あんま好き勝手やってんじゃねぇぞ」


『頭上がらないんだよね……』

『生意気だけど技術じゃ負けるからなぁ……』

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

『なんかトラウマ植え付けられた人いない?』

『私たち少しでも間違えれば凛斗に消し飛ばされるしなんなら凛斗が居なかったら存在しないからね』

『え、結構ヤバい人?』

『siveaの創立に欠かせない人間だったよね』

『じゃあ凛斗が居なかったらsiveaが存在しなかった可能性が……』

『全然あったね』

『凛斗が居なかったらなかったかも』


「あの、勝手に持ち上げるのやめろ?」


『事実』

『事実だからね』

『事実から目を向けちゃダメだよ』


「お前ら今度覚えておけよ」


 一期生四人も交え異例の雑談配信をすることになった。

 マジで社長に言っておかないとな……

 流石にこれは色々と問題があるのではと思い俺は配信が終わったらすぐに社長に連絡を入れておくことにした。









 配信を終わらせ社長に連絡を入れてから俺はリビングへ戻った。


「んへへ~樹さんの匂いぃ、ぐへ……えへ…………」


 俺はそーっとリビングの扉を閉めた。

 服全部調べておかないと危ないな……

 俺は部屋に戻り一枚ずつ服が何かされてないか調べ……ようかと思ったが急に部屋の扉が開き愛理さんが入ってきた。


「樹さん!何も見てないですよね!?」


「ああ、なにも見ていない何も……」


「……!樹さんだってあるはずですよね?」


「すまん、ない」


 好きな人の服嗅いであんな声出すことなんて流石にないぞ……

 まあこれは俺の話だがな。

 そして愛理さんの顔を見ると今にも泣きだしそうな顔をしている。


「え………………い、樹さん、私のこと嫌いにならないでぇ……」


「まあこれぐらいで嫌いになるほど俺たちの愛は薄くはないな」


「よ、よかったぁ……じゃあ見逃して……」


「見逃すわけないだろ?まあでも罰として……罰として、何がいいんだ?」


「こんな悪い子には躾が必要じゃないですか?」


「そうだな、でもなにが……」


「鞭ありますよ?まあ調教でもいいですし……私の身体は樹さんのものなんですからナニしてもいいんですよ」


 なんで鞭なんか持ってるんだ……

 そしてなんで財閥家のお嬢様がこんなにも脳内がピンクなんだ……

 お嬢様で残念なやつと言えばもう一人いたな……


「なんでそんな顔で見てくるんですか」


「いやまあなんていうか……紀里と似てるなって」


「絶対悪い意味ですよねそれ。私は樹さんのために生きてるので紀里と同じにしないでください」


「そうだな、紀里と同じにしたら可哀そうだ」


 あんな暴力と弟好きな残念なやつと同じにするのは良くないな。


「そうですそうです!なので……」


「じゃあ今日一日愛理さんのお腹使ってもいいか?」


「お腹を使うとは……?」


「まあ愛理さんのお腹になにしても怒らないでくれと言えばいいのか」


「え、私が怒るようなことをする可能性が……」


「いやそれはないが……念のためだな」


「じゃあなんで私のお腹を触ることにしたんです?他にもあったでしょうに……」


 それは……

 決して気持ちいからとは言えない。

 愛理さんのお腹触ったり見たりするたびに思うんだよ、気持ちいいなとか顔を埋めたいなとか……舐めたいなとか……

 まあでもそんなことを通常の生活でしてしまったら俺の尊厳と理性を破壊し変態呼ばわりされかねないからな……

 すると突然愛理さんが服を捲りお腹を見せてきた。


「なにやってるんだ!?」


「え?こういうことじゃないんですか?」


「まあそういうことだな……」


「やっぱりこういうことじゃないですか~ほ~らっ、今すぐにでも顔を埋めたいんですよね?」


 ……俺は愛理さんの誘惑に負け愛理さんのお腹に顔を埋めた。

 愛理さんの匂いと体温とお腹の柔らかさに負けてしまいそうだ。

 この丁度良く引き締まっているお腹なのにとてもなんというかふよふよした感じが最高でたまらない。

 愛理さんのお腹はとても形がよく引き締まっていて綺麗だから見てるだけでも満足感を得ることができる。


「樹さんえっちぃ」


 こればかりは俺も否定できない。

 何してもいいんだよな?

 よくない事ばかりが頭の中に浮かんでくる。

 舐めるか吸うか……


「ひゃぁっ!?」


 吸ってしまった。

 言い換えればキスマークを付けることと同じことをしたと言えばいいか。

 流石に吸われると思っていなかったのだろう愛理さんの反応がとても可愛らしい。

 いつもは俺の事をからかったりしているがこうやって反撃して愛理さんの可愛い反応を見れる。

 最高だな。


「あぁ……そんなところまで……うぅ、しばらく消えなかったら責任取ってくださいね?」


 愛理さんにそんなことを言われたがやめられるはずもなくずっと愛理さんのお腹に顔を埋めた。









「は~痕付いちゃいましたね」


「す、すまん」


「まあ樹さんの愛情表現ということですね。お腹吸って舐めるのが……」


 痕が付いた部分を触りながら俺の顔を見てきた。


「まあいいんですよ?樹さんが何したって許しますから」


 そう言われると謎の罪悪感が生まれてくる。

 愛理さんの顔をまともに見れないまま今日一日が終わった。

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