#1 (愛理視点)
私、雪上愛理は今配信をしている。
私は『sivea』というV事務所の中では大手のところへ『雪姫雪花』というVtuberとして所属していた。
今日はその事務所へ所属している先輩とコラボしていた。
「あ~もう少し手加減してくれない?ゆきちゃん」
「いやですよ~たとえ先輩でも勝負は勝負で~す」
「そんな~こんなの勝てっこないじゃんか」
「まあ、私は上で待ってますから安心して来てください」
「安心するって何を⁉上から見下されてるだけじゃん」
私に対戦ゲームでずっと負かされているこの人は同じsivea所属『
siveaの中で一期生で事務所がここまで有名になる前から活動していた。この人が他事務所の人とコラボし始めたりといろいろとしてくれたおかげで今ではここまで来ている。
なので事務所の中ではとても活躍してくれている人。
だけどゲームが下手のなので今みたいに私に負けている。
「ゆきちゃん手加減って知ってる?」
「もちろん知ってますが?」
「たぶんゆきちゃんの言ってる手加減は手加減じゃないと思う」
失礼な。
そうツッコもうとしたがちらっと見たコメ欄ではなぜか先輩の味方が増えていた。
仕方がないので私ができる限りの手加減をしてやろうと思った。
そんなこと些細なことを思っていると始まった。
「ゆきちゃん手加減……」
「最大の手加減をしましたよ?」
「あれ、舐めプって言うんだよ?わかる?」
私の手加減は舐めプと思われるみたい。
視聴者にも責められる結果となってしまった。
まあ、その大半がノリと冗談だけど……
そのあとも何試合かして配信を閉じた。
「お疲れ様~やっぱりいつも変わらずゲーム強いね」
先輩はまだ抜けず、私としゃべるつもりみたいだ。
「そんなことないですよ。それを言ったらあの人がいるじゃないですか」
「あーあの人ね~」
私と先輩は遠い目でとある人のことを思い浮かべた。
二つ名人力チーターとまで世の中から言われているあの人がいるので私たちはあの人とコラボするときは極力ゲームをしないという謎の掟があるくらい。
「まあ、それでもこの事務所内では二番目ぐらいじゃない?実力」
「そうですかね?」
「そりゃあ何個も大会出てるんだしそれにまだ高校生で若いんだから伸びしろもある」
「私はその高校生なのにこの間人生を左右するようなこと言われましたからね」
「あ、私はただの一般市民だからよくわからないけどまあ頑張って」
私は許嫁のことを聞かされた当日あまりにも訳が分からなくなりツキ先輩に相談をしたが無視された。
というかできることなら許嫁の話なかったことにしてもらいたい。
「いや~事務所から正式に聞かされた時はびっくりしたよ」
「その前に話していますが?」
「冗談だと思ってた」
結婚しましたとかならまだわかるかもしれないけど許嫁は冗談でも言わない気がする。
それでもそういう先輩なので仕方がない。
「会うのって明日だっけ?」
「はい……」
「まあ頑張ってね」
そう言い残すとピロンっという音とともにグループから出て行った。
許嫁……
なんで私は財閥の娘として生まれたんだろう?
そう何度も昔から思っているがこれに関してもそういうことだろう。
「あ、そういえばあと数分で凛斗さん配信始めるんだった」
私はPCでそのまま見ようと思ったがいろいろと悩みすぎて疲れているのでスマホを持ってベットに寝っ転がった。
「こんばんは~いつも通りの二人だな~」
と、いつもの変わらないテンションで始まった。
今日は何をしようか迷っている様子だったので私はすぐに『参加型をしましょう』と打った。
コメントを出すと同時に立凛さんも同じように考えていたみたいだった。
「立凛さんいいなあ」
私は私のことを語るオタクVtuberを見ているただのリスナーだけど立凛さんは凛斗さんのイラストレーターなので日常的にも会話できるんだろうなと思い少し羨ましかった。
そんなことを考えながらも参加する準備をした。
結局PCを使うことになったけどまあいいか。
「参加型だったらVCつけて喋れるかな?」
そう思いまた打ち込んで出した。
するとすんなりと承諾してくれたので私も立凛さんもVCを付けた。
大丈夫だよね。雪花ってばれないよね?
不安になりながらも喋ってみた。
「えっと、こ、こんばんは」
「初めまして?雪さん対よろ~」
「こちらこそ対よろです!」
緊張してしまいあまりうまく話せなかった。
しゃ、喋れた……
凛斗さんとしゃべれる日が来るなんて……
私たちは参加型を楽しみ凛斗さんと意見交換(私には喋れてるだけでうれしくて限界を迎えそうだった意見交換)とかいろいろとできた。
私が雑談配信をしてもらいたくてねだってみたら案外すんなりと配信してくれることになった。
「やっぱり優しいな」
私はそう感じる。
凛斗さんからお嬢様の話を聞いたけどなんだかどっちもどっちだった気がする。
特に話す内容がなくて困っているので私は相談することにした。
「人の配信でこういうこと聞くのはあれかもしれないけどでも凛斗さんだからいいよね?」
そう思い素早く打ち込んだ。
「相談も乗ってくれるんだ」
少し気を楽にして許嫁の件のことをコメントにして出した。
大丈夫かな?身バレしないよね?
「はあ、会ったこともない人と許嫁だなんて」
そう思いながらも打ち込んだ。
「それだったら凛斗さんが許嫁だったらなあ」
心の声駄々洩れでコメントにも打って出してしまった。
でも正直言ってかっこいいし声良いし冷静だしこんな人がそばにいたらな~と思う。
でもそんなことは置いておいて本題に入ることにした。
「やっぱり互いに共通している所見つけないとかあ」
凛斗さん、立凛さんにもそう言われてしまった。
何か話せること今日のうちに考えておこうかな?
凛斗さんの配信が終わり寝るまでの間ずっと考えていた。
日が昇り私の部屋に朝が来たことを伝えてきた。
「ふわぁ、眠い」
寝てもまだ眠い。
少し伸びをしてから身支度を始めた。
「今日何着て行けばいいのかな?」
私はこういうことがあっても滅多に行かないのでこれと言って決まった服がない。
「制服でいいか」
学生の正装といえば制服だろう。
そう思いいつも通り制服に着替えて下へ降りた。
「おはよう、お父さんお母さん」
「おはよう、今日のことは覚えているね?」
「うん」
「あと一時間もすれば家を出るからそれまでに身支度を終わらせておいで」
そういうと席を立ちあがって食卓から出て行った。
「愛理?大丈夫?気が浮かないみたいだけど……」
「大丈夫だよお母さん」
「そう?会ったことがないから緊張するかもしれないけど頑張ってね」
そんな話をしてお母さんとの会話は終わり。
私は朝食をとって部屋に戻った。
不安だ。第一会ったこともない人と話す上に許嫁と喋るとなるとさすがに緊張するだろうし不安だ。
「時間だよ」
「うん、今行く」
部屋の外からお父さんが声をかけてきた。
私は覚悟を決めて家を出た。
車に乗って移動しているとき私はふと思い出したかのように相手がどんな人か聞くことにした。
「そういえば相手は誰なの?」
「IT企業の社長兼私の親友でもある男の息子だよ」
私はその話を聞いて面倒くさく思った。
なぜか。それは親同士の親友というつながりだけで許嫁が決まったから。
どうせお父さんのことだから投資とかもするんだろうなあ。
そこらへんは私には関係ないことだと思った。
「そういえば彼から聞いたんだけど……」
彼というのはそのお父さんの親友のことだろう。
そう思いつつも耳を傾けた。
「愛里と同じでVtuber?っていうのをやってるらしいよ」
「そうなの?」
「今もやってるかは知らないらしいけどなるというのを息子さんから聞いたらしい」
私は共通点が見つかり少し安心したがそれと反対に別の不安を持つことになった。
私は一応登録者数が100万人を超えている。
ということはもしかするとの可能性で相手は知っているかもしれない。
なのでばれるとまた面倒なことになるかもしれない、そう思ったので私はできる限り隠すことにした。
「孫が見れるのはいつになるかな?」
「お父さん気が早い」
「でも楽しみだよ?」
こればかりは頭を抱えるしかなかった。
「そういえば相手の写真見ておく?」
「あるの?」
「少し前のらしいけどね」
そういうとスマホの画面に人の写った写真を出して見せてくれた。
髪で隠れて顔が見えにくいけど好みではあった。
これ陰キャで髪で顔隠してクラスの中でぼっちでいるけど実は顔がいいタイプの人間じゃない?
「ありがとう」
「どうだった?」
「意外と顔がいいのかな?」
「確かにそうかもね」
お父さんも画面を見てそう答えた。
「僕はこの子と一回だけ会ったことがあるけど一番の印象は落ち着いていて簡単に言うと頭がいいって感じかな」
「どういうこと?」
お父さんがそう言うのは珍しいと思い思わず聞いてしまった。
「えっと……わかりやすい例で言えば愛里の所属している事務所のHPってセキュリティシステムとかいろいろ入っているよね?」
「詳しくないけどそう聞いてる。それがどうしたの?」
「そのセキュリティを一人で作り上げたのがこの子だよ」
えっ……
私はその才能と身近で関わりがあったことに驚いた。
私はそう言うことを知っているわけではないけどそれでも一人で作り上げることがすごいことぐらいはわかる。
「彼が開発したものは今や世界中で有名だよ。ただ顔も何もそれどころか会社の功績に全部しているぐらいだからね。僕がそれを間近で見た時は驚いたよ」
お父さんが認めるぐらいの実力があるってことなんだ。
私はさらに不安に感じてきた。
もう少しで着くとなる時にお父さんが最後に口を開いた。
「あの子を少しだけでもいいから表に立たせてあげてほしい」
そう言うと黙ってしまった。
私はその言葉を忘れないように彼と会うことを決めた。
私は案内された部会社へ入るとこの会社の社長であろう人物が出迎えてくれた。
「城雪久しぶりだな」
「ああ、久しぶりだね。横にいるのが私の娘だよ」
「ほう?写真で見ていたよりもずっときれいだな。あの愚息にはもったいないくらいだ」
「そうかな?僕は気が合うんじゃないかと思うけどね」
「そうか……そうだといいんだがな」
そう言い終わり私たちを連れて行ってくれた。
怖い。私のこの人への第一印象は恐怖。
マフィアのボスをやってそうという偏見を持つくらいには怖かった。
私たちが案内されて入った部屋には一人だけ男の人がいた。
あれが私の許嫁なんだろうな。
「えっと……あの、そのよろしくお願いします?」
私は何といえばいいのかわからなくなりすぐに頭に出てきたことを言った。
「えっと……こちらこそよろしくお願いします」
「二人とも座ってくれ」
社長の人にそう言われたので私もお父さんも彼らに対面して座った。
「樹、あちらは雪上家当主雪上城雪と隣にいるのはお前の許嫁雪上愛里だ」
「愛理、この企業の代表取締役兼社長の神崎弓義と愛理の許嫁の神木樹君だよ」
互いに親が子の紹介を終えた。
樹って言うんだ……
これからは樹さんと呼ぼうと思った。
「許嫁のこと今日聞かされたんだって?すまないね。弓義はもう少し親子の会話を持ったらどうだ?」
「こいつのことだ。あまり気にしてないだろう」
彼はそう言う人間なのだろうか?
私は彼がどういう人なのかを探るために言葉一つ一つを注意深く聞いた。
「さて紹介も済んだところだし弓義僕たちはさっさとこの部屋から退散させてもらおうか?」
「わかった。二人で仲良くやっておけよ」
「うちの子奥手だからね。少しは進捗があるといいんだけど」
「うちもそうだ。いつになったらあの人見知りは治るんだか」
彼は人見知りなんだ……
私は奥手と言われた(先輩たちが言うには)何か共通するものがあれば話を広げられるらしいので少しずつ近づいた方がよさそうかな?
私は話しを広げるために声を出した。
「「あ、あの……」」
言葉が重なりかなり気まずくなった。
それと私は一つ勘違いかもしれないけど気になることを見つけた。
凛斗さん……?
合っているかもわからないので話を広げながらも探ってみることにした。
「で、では、私から……あの……ご、ご趣味とかあります?」
「しゅ、趣味ですか……」
向こうは困惑している様子なので私が先に口を開いた。
「一応私はゲームとかしてたりしてます」
「あ、え、ええっとまあ、自分も結構しています」
「「……」」
気まずい。
私は何か話を続けられないか考えた。
そう思っていると向こうから話を広げてくれた。
「一応聞きますけどどういったゲームを?」
「特に決まってやってないです。あえて言うなら……」
昨日も配信して凛斗さんの参加型にも参加したゲームを口にした。
「自分もまあしてます」
「そうなんですか!」
私は共通するものが分かり少し高揚してしまった。
冷静になれ私。
共通していたことから話を広げることにした。
「私も結構してるんです」
「あれ、結構楽しいですよね」
「楽しくてずっとやってます」
樹さんもあのゲームしてるんだ。
私は一緒にできるかもしれないという喜びを隅に凛斗さんか探りを入れた。
「あの~失礼かもしれませんが一つ聞きたいことが……」
「はい??何でしょうか?」
「唐突かもしれませんがVtuber知ってたりとかって……」
へ?
私は急に樹さんの口からVtuberという言葉が出てきて動揺を隠せなかった。
私が雪姫雪花ってことを知って?
それに続けて追い打ちをかけるように話を切り出された。
「ちなみに聞きますけど雪姫雪花って知ってます?」
「え、え、え、い、いや、いやいやち、違いますよ」
私は明らかな動揺をした上に雪姫雪花とばれるような発言をしてしまった。
さすがにばれたかもしれない。
「もしかして……雪姫雪花だったりします?」
「ひゃああああああああお、終わったぁ」
私は膝からガクッとうなだれた。
失言だった。
ちなみにと思って気づいた理由を聞いてみた。
「な、なんでわかったんです?」
「ふぐっ、え、い、いや声が似てるなあと思ってカマかけたら引っかかって……」
「そ、そんなぁ~」
何とも幸せそうな顔でそう言ってきた。
こうなったら合ってなくても言ってやる。
「ばれたのならこっちも聞きたいことがあります!」
「なんですか?」
「神木凛斗さんですよね!?」
「は?え、な、なんで……?」
勢いに任せてそう口走ったが勢いに任せて言ったのが正解だったのかもしれない。
凛斗さんだった……
推しが目の前にいるなんて……
「何で知って……」
そう聞いてきたので私は隠さず話すことにした。
「それはだって私も一リスナーなんですから」
「はい!?」
「だから、私も一リスナーなんです」
「え?いやでも……」
困惑しながらも疑ってきた。
確かに雪という名前で配信に行っているけど……
すると樹さんは何かに気づいたような顔をした。
「まさか雪さん?」
「はいそうですよ!昨日も配信に来て参加型に入っていた雪です!」
「へ?は、はああああああっ!?」
驚きを隠せないのか声を上げていた。
というか昨日の参加型で気づかなかったなんて……
さすがにあきれたけど少し声を変えていたから疑っただけかもしれない。
まさか私の許嫁が私を推している私の推しだなんて思ってもいなかった。
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