第12話 大奥反乱②


 紫乃は足早に廊下を歩いていた。すると突然、傍の襖が開き、彼女の腕が引かれる。

 きゃっと紫乃が声を上げると、その叫び声が漏れぬ様に口を押さえつけられる。紫乃の小さな身体を二人の女が身動き取れぬ様押さえつけた。一人の女が紫乃の前にやってくるが、その姿は逆光と大粒の涙により判断出来ない。


「そなたに頼みがあるのじゃ」


 紫乃の体は酷く震えている。紫乃一人に対し相手は五人と身の危険を感じた。紫乃は抵抗する事なく、何度か頷く。すると女は襟合わせから白い包みを取り出した。


「これを桃子が口にする汁物に全て入れるのじゃ」


 紫乃は大きく目を見開いた。頭を縦に振ることができない。すると女は紫乃の小さな顎を掴み上げ、顔をギョッと近づけた。


「断れば、そなたの命は保証できぬ」


 自然とこぼれ落ちる大粒の涙が紫乃の視界をぼやけさせる。


「やってくれるな?」


 紫乃は小刻みに頷くしかなかった。

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