第1章 第3話

そして、私が4歳の頃。

幼稚園に入園して間もなく。


「大きくなったら何になりたい?」


そういう話題になった。


「ボクはね、ファイトマンになる!」


「私はユキちゃんになる!」


ファイトマンもユキちゃんも人気アニメのキャラクターだった。

好きだけど、そうなりたいと思った事が無い。


「沙希ちゃん、何になるの?」


そう聞いてきたのは幼馴染みの上原遥うえはらはるかだった。


「遥ちゃんは?」


「私ね、ケーキ屋さん!」


「へぇー。

ケーキ屋になったら、ケーキくれる?」


「いいよ!」


結局、遥ちゃんはケーキ屋にならないと思う。

でも、その時は何となくケーキにつられて応援していた。


「沙希ちゃんは?」


「分からない。」


「え?」


「分からないよ。」


私には、そういう夢とかなかった。


「私ね、この子とずっと一緒にいる!」


そう言った女子がいた。

まだ結婚って事が分からないけど、パパやママみたいに仲良く暮らしたい男子がいるって事だ。


「うーん、私ね、お兄ちゃんと一緒にいたい!」


「お兄ちゃん?

誰?」


「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。」


「兄弟?」


「違う。」


お兄ちゃんをイトコと理解するのは、まだまだ先の事。

名前は『佐藤拓哉』って覚えてた。

同じ佐藤だから覚えやすかった。


「沙希ちゃん、お嫁さんになりたいの?」


誰かが言った。

お嫁さんの意味を知らなかった。


「お嫁さん?」


「うん。

ママはパパのお嫁さんって言うんだって。」


「ママはお嫁さんなの?」


「うん。」


誰かが教えてくれた。

家に帰って、


「ママはお嫁さんなの?」


って聞いてみた。


「え?」


「パパのお嫁さん?」


「あぁ、そうね。

お嫁さんだよ。」


「お嫁さんになったから、パパとずっと一緒?」


「うん。

離婚しなかったらね。」


「離婚?」


「うん。

一緒にいたくなくて離れちゃう事。」


「え?

ママ、いなくなる?」


「いなくならないよ。」


「良かった!」


離婚って何かを何となく分かったのは小学校に入ってから。


「ねぇ、ママ。

私、お兄ちゃんのお嫁さんになれる?」


「え?

お兄ちゃん?」


「うん。」


「どうだろう?

お兄ちゃんにも選ぶ権利があるし。

あれ?

イトコって結婚出来るの?」


イトコ?

結婚?

今日は新しい言葉ばっかり。


「イトコは結婚出来るんじゃない?

でも、俺、兄貴と同じ孫を可愛いがるとか想像出来ないよ?」


パパが何か色々言ったけど、よく分からない。


「私もお兄さん夫婦と同じ孫って、ちょっと分からない世界ね。」


「そうだよな。

拓哉は優しくて賢くてしっかり者だけどな。」


「そうね。

拓哉君みたいな彼を連れて来たら反対出来ないわね。」


パパとママの話について行けない



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