初恋をあきらめさせてくれませんか?

φまりかφ

第1章 第1話

思い返しても分からないけど。

いつからか大好きになっていた。

それは家族愛のような物だったら、どんなにラクだっただろう。

でも本気で恋をしてしまったの。

その恋の始まりは私が3歳の時だと思う。


沙希さき、ちゃんとニンジン食べないと怒られるよ。」


「やだ。」


「今日のは甘くて美味しいよ?」


「いらない!」


3歳の私は好き嫌いが多くて、ニンジンやピーマンなど野菜が苦手だった。


「沙希ちゃん、ニンジン嫌い?」


「嫌い!」


「じゃあ、食べてあげるよ。

ママに内緒ね!」


「うん!」


私の嫌いな物を食べてくれるお兄ちゃんがいた。

その頃は、お兄ちゃんが私とどんな関係とか知らなかった。

そして、いつも私が怒られないように助けてくれるお兄ちゃんがヒーローだった。


「お兄ちゃん、大好き!」


「ありがとう!」


「お兄ちゃんは沙希の事、好き?」


「うん。」


「やったぁ!」


さすがに3歳児は単純で幸せだった。

好きって伝えて、好きって返してくれたら両思い。

ずーっと一緒にいられるって、そう信じて疑わなかった。


「沙希ちゃん、そろそろ帰るね。」


「何で?」


「帰る時間だから。」


「え?

沙希といるでしょ?」


「一緒にいたいけど、帰らなきゃ。」


「ヤダヤダヤダヤダ!」


泣いて暴れる私を苦笑しながら見てたお兄ちゃん。


「駄目でしょ!

困ってるから!」


「ヤダヤダヤダヤダ!」


「ヤダじゃないの!

また会えるから!」


「ヤーダ。

うわーん!」


大号泣して暴れる私。

皆が困ってた。


「沙希ちゃん、また来るからね。」


困った顔のお兄ちゃんが申し訳なさそうに帰って行く。

私は泣きながら追いかけようとするけど、パパが私をガッチリ捕まえて離さない。


「パパ、イヤ!」


「嫌なんて言わないでよ……。」


パパの悲しそうな表情。


「パパが嫌なら、パパも沙希の事が嫌になるよ!

それでいいの?!」


ママが怒る。


「ママ、いいんだよ。

沙希はまだ小さいんだから。」


「小さいからって、パパがショック受けてるじゃないの!」


「そうだけどさ。

沙希だって悲しかったんだから、しょうがないでしょ?」


「しょうがないって言うなら、その表情をどうにかしてよね!」


パパとママが言い合うのを見てたら、涙が止まった。

パパとママが言い合うのも無視して、絵本を読み始める。


「大丈夫そう?」


「うん。」


「しばらく好きにさせておこうか。」


「そうね。」


絵本に夢中の私をパパとママが見守ってくれる。

3歳の私には分からなかったけど。




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