キミが星になるように
万倉シュウ
序章
0-1 君を知る夜
0
とても幻想的な光景でした。まるで宇宙空間を漂う遊覧船。
音はなく、常に
影ですら
星々にも僕たちと同じように命があります。それが長いか短いか、それだけの違いです。寿命が尽きれば星と言えども機能を停止します。我々人間もいずれは心臓が止まり、土へ
それは即ち、輝きを失うということでしょうか。そうではないと僕は思います。寿命が尽きた恒星は光を失います。けれど、命が尽きたからと言って『無』になるわけではありません。輝きを失うわけではないのです。星々によって生かされた『命』は確かに続いていて、そこに星々の『魂』『想い』が在り続けるのです。
人間も同じです。命が尽きたところで無用の長物になるわけではありません。土に
我々は皆、星の子です。太陽の恩恵を受けた地球、その子供なのです。誰しも光を浴びて育っています。そんな我々が輝けないわけがないのです。他者を照らす光になれないわけがないのです。
誰であろうと星のように輝けます。ただ、輝き方を――“在り方”を知らないだけなのです。
1
――どうしてキミは死を望むんだい?
声が聞こえる。少女と少年の狭間の声だ。聞き覚えがないはずなのに、どこか懐かしさを感じる。
(……毎日がつまらないからだ)
――どうしてキミは毎日がつまらないんだい?
(僕がつまらない人間だからだ。誰も幸せにできない、誰も笑顔にできない、ただのお荷物だからだ)
――どうしてキミはつまらないんだい?
(……何も、考えていないからだ。僕は、面白いことも、楽しいことも、ためになることも、馬鹿らしいことも考えられない。何も生み出せないんだよ)
――どうしてキミは何も考えていないんだい?
(考えたって否定される。却下される。怒られる。嫌な顔をされる。だから、何も発信したくない。発信しないなら、どれだけ考えたって無意味だろ)
――どうしてキミは否定されるんだい?
(……僕に
――どうしてキミは原因がわかっているのに直さないんだい?
(……考えることをやめたからだ。原因がわかったって直すためにどうすればいいかわからない。それを考えることもやめた。どうせ失敗して怒られる。空回りするに決まってる。僕は何をしたってうまくいかない運命なんだよ)
――どうしてキミは自分の運命を知っているんだい?
(……経験的にわかるんだよ)
――どうしてキミは十数年しか生きていないのに、数十年先の未来まで見通せるんだい?
(…………)
――どうしてキミは自分の運命に
(…………)
――どうしてキミは失敗することを前提にしているんだい?
(……今まで生きてきて、痛感したからだ。一生懸命にやるほど、失敗した時に辛くなる。うまくいったことなんてない。頑張ったって苦しいだけだ)
――どうしてキミはうまくいったことがないんだい?
(……そんなの僕が知りたいくらいだ。どうせ『努力が足りない』とか『辛くなるほど頑張ってない』とか言うんだろ。僕の気持ちなんて知らないくせに、どれだけ頑張ったかも知らないくせに、決めつけてるのはそっちじゃないか)
――どうしてキミは悔しい気持ちがあるのに死を望むんだい?
――どうしてキミは自ら苦しい道を選ぶんだい?
――どうしてキミは今、泣いているんだい?
(……うるさい。放っておいてくれ。僕は……何もできない人間なんだよ)
――それは違うよ。
――そんな生物はいないよ。
――皆、生まれた瞬間から輝いている。
――輝き方を忘れてしまっているだけだよ。
(綺麗事だ。世界は平等じゃない。持つ者と持たない者がいる。僕は持たない側の人間なんだよ。輝けるはずがない)
――世界はキミが思うよりもずっと綺麗だよ。
――まるでガラス越しに見た光のように、
(嘘だ)
――なら、一度見てみるといいよ。
――キミが『輝き』というものを理解できるように。
――星に願いをかけましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます