センパイをボクが好きにさせてやる

クラル

前編 ボクの大好きなセンパイ


 ボクには大好きなセンパイがいる。優しくて、可愛くて、美少女を全て詰め込んだような美しさ。正直、学校としては強くないが合唱部のエースで、周りからの信頼も厚い。文武両道なセンパイと一緒に毎日を過ごせたら、ボクの青春はどんなに楽しいだろうか。


「おい。何してるんだよ、ボク[ちゃん]」

「ふえぇ!って、なんだ、夏樹かあ。ボクとセンパイのことを考えてたんだよー!」

声の主は同じクラスの夏樹。話すと大体喧嘩になるから、ボクは嫌われてるらしい。

「何だよソレ。ま、そんなに釣り合いたいんなら、そのボクボク言うのやめれば?」

「え、何で?ボクは確かに女の子だけど、一人称は自由じゃん?多様性の時代だよ?」

「そうだけどさ・・・。もういいや」

ちなみに夏樹は口喧嘩にめちゃくちゃ弱い。

「じゃーねー夏樹!部活行ってくる!」

「お、おう。・・・何でだよ」

 後半の言葉に気づいていれば、ボクはその後、あんなことには巻き込まれなかったのかもしれない。


 センパイに会いに部活へ向かう。軽やかな足取り、やるみきった口角。自分で言うのもあれだが、弱小合唱部をここまで楽しんでいるのは偉いと思う。動機は限りなく不純だが。

「こーんにっちはー!センパイ」

「やっほー、友希ちゃん!今日も頑張ろうね!」

ボクの挨拶に奈実センパイは笑顔で答えてくれる。結んでいても腰まではある長いポニーテールを揺らしながら準備をする姿は、憧れそのものだ。私もセンパイに近づくには外見からと、ポニーテールにしたことはあったが、低身長なのも相まって、笑えるほど似合わなかった。そもそも髪が胸の上くらいまでしかない。今はツインテールで場を凌いでいる。


 合唱部の練習はこうだ。部室に来たら必要な物を準備し、2人1組でストレッチをする。ボクは友達に頼み込んで、センパイと組ませてもらった。あとはパート練習。ボクは合唱自体好きだし、部活はセンパイと一緒で楽しい。この日常を続け、あわよくばセンパイとデートとかも行きたいかな。メイドカフェとか行って、センパイのメイドが見たいな・・・。

と、ボクとセンパイの2人っきりを妄想するのがボクの趣味だったりする。


 ある日、いつもと同じようにセンパイとのびのびストレッチをしていた。


「おい、友希いるか?!」


この瞬間平穏な日常は終わり、ボクの平和な日々へと繋がるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る