第12話 魔の森に突入!

「さぁ、頑張って行くにゃー!」

「おぉ〜…」

 魔の森に向けて出発した1日目は、何事もなく無事に魔の森に辿り着いた。一夜明け、今から魔の森に向けて踏み出すところである。


 …しかし眠い……野宿と交代で行う見張りによる緊張もあるんだけど、共同で使うことになったテントにユイナの花のような異性の香りが広がっていて、ドキドキして寝付けなかった…。

見張りと寝るのを交代で行うから勿体ないと押し切られて、テントを追加で購入せずにユイナの持っていたものを使ったけど、ヤバいから帰ったら絶対買おう。


「何か言ったにゃー?」

「いやっ!ここから魔の森だから慎重に行こう。地図によると目的地はあっちだよ。」

「了解にゃ。索敵よろしくにゃ。」


「うん、…『サーチ』」

…索敵の魔法を使うと、左前方に反応があった。


「目的地に向けて進むと左手に、この低さと大きさはウルフかな?が4匹いるよ。更に100mくらい奥に巨大な何かが1匹いるね。」

「ウルフは囲まれるたり仲間を呼ばれると厄介だから、直ぐに潰したいにゃ。」

「近づくと匂いで気付かれるよね…どうしよっか?」


何か先制攻撃ができる良い作戦がないかと2人で考え、ユイナが

「投げナイフが当たる距離まで近づきたいけど…風下になるように、風魔法であちらからこちらに風を吹かせるのは……」

と言いながらこちらを見ると、

「暴発が危にゃいから止めとくとして…」

と別の方法を考え始めた。

「それくらいなら大丈夫!…のはず」

「ホントかにゃ〜?自爆は嫌だにゃ〜…」

ユイナがジト目で見てくるが、声を出せば大丈夫。と自分に言い聞かせて、

「任せて」

とユイナに言って、準備を始めた。


さて、自爆は怖いから少し方向をずらして…

『ウィンド!』

風魔法を唱えると、

「おぉ〜!成功にゃ!」

狙い通りにこちらが風下になるように良い風が吹いていた。

「じゃあ近づいて、投げナイフを投げたら突っ込むにゃ。ライルは茂みに隠れていたら良いにゃ。」

そう言ってユイナは音もなく素早い身のこなしでウルフに近づいていった。


シャッ!ザクッ!!

 ユイナが投げたナイフは見事に1匹の首元に刺さり、刺さったウルフはそのままドサッと倒れた。

 その間にユイナは疾風のように駆け寄り、相手に避ける暇を与えず、さらに1匹を切り捨てた。

 残り2匹となったウルフは、飛びのいてユイナと距離を取ると、飛びかかるタイミングを計りながら、ユイナを中心に周りをグルグルと回りだした。


…これ同時に飛び掛かられると厳しくないか?牽制しよう!

隠れていた茂みから体を起こし、自作魔道具を使って近い方の1匹を狙い、小さなファイアボールをボッ!と撃ち出した。

 ウルフはいきなり向かってきた火に少し焼かれて、動揺して動きが止まり、その隙にユイナは反対側のウルフにサッと飛び掛かり、切り裂いた。

よしっ!


 最後に残ったウルフはユイナ相手は不利と見ると転身し、残り1匹になって気を緩めていた僕に飛びかかってきた!

「ライルッ!棍棒!」

 焦ったユイナの声を聞きながら、向かってくるウルフの大きく開いた口をワンドで受け止めた。ワンドを咥えこんだウルフに対し、

『ファイア!』

と火をイメージして魔力を込めると、ワンドから炎が湧き上がり、口の中を焼かれたウルフはのたうち回って、倒れた。

「ふぅー。」

危なかった…。


「ライル、良かっ…」

 ユイナがこちらに向かってこようとしたところ、ドドドドドッ!!と音を立てながら巨大な何かが突っ込んできた!

 それは全長が6m、高さ2mを越える巨大なボア(猪)だった。

 ユイナは何とか転がって避けると、そこはナイフを投げて倒したウルフの近くだった。

 ユイナが転がった体勢でジャイアントボアが旋回してくる様子を目で追っていると、ナイフが刺さったウルフが最期の力を振り絞り、飛びかかってきた!


 あっ!体勢が崩れてて避けられない!ヤバい!

僕はスローモーションのように感じる時間の中、咄嗟にユイナとウルフの間に土の壁の魔法を挟もうと、

『アースシールド!!』

と唱えていた!

 すると、ユイナの手前からウルフに向かって3mくらいの奥行きの地面が、ドンッ!とユイナの身長ぐらい打ち上がり、

「ギャン〜〜ッ!」

とウルフも景気よく撃ち上がっていた。

 そこへ旋回してきたジャイアントボアが突っ込んできたが、ユイナが更に転がって回避すると、ボアは突然現れていた壁に対処できず、ドゴォーン!!!と盛大な音を立てて壁に激突した。

 フラフラになったジャイアントボアの首をユイナが切り裂くと、音を立ててボアは崩れ落ちた。


「ふぃ〜。凄かったにゃん…」

 安堵して脱力するユイナに、こちらも緊張が切れてペタンと腰砕けのように座り込んでいた。

偶然上手くいったけどヤバかった。ハハッ…まだ手が震えてるよ。


「ライル、ありがとにゃ。助かったにゃ。暴発も良い方向にいったし。ワンドの使い方も上手かったにゃ。」

「うん。無事で良かった。」

まだ心臓の鼓動が激しいけど、ユイナの元気な姿に安堵の声がもれた。

「でも攻撃する時は狙われやすくなるし、周りに目が向きにくくなるから気をつけて欲しいにゃ。…うん、それでも今回は助かったし、嬉しかったにゃ。これからもよろしくにゃ〜。」

そうか、自分に危機感が足りなかったし、一杯一杯で周囲のことをすっかり忘れていたから、ジャイアントボアの接近に気付けなかったんだ…これは反省だな。

落ち込み反省していると、ユイナがニコニコしながら手を引っ張って立たせてくれた。



「あっこれ美味しいと言ってたジャイアントボアにゃ!」

目をキラキラさせて、解体を始めるユイナ。

「ライル、血の匂いで色々寄って来ないように索敵よろしくにゃ。あとお肉冷やしたいんだけど、ワンドに氷ってまとえるにゃん?……おぉー!便利にゃー!」

テキパキと解体して、

「ボアの牙と皮は素材になるにゃ♪ お肉は冷やしてこの葉っぱに包んで、出来上がり〜♪ ウルフの牙も集めておくにゃ〜♪」


ユイナは上機嫌で素材と肉を確保し、今日のことは反省してこれからに生かそうと思いながら、二人は目的地に向かうのだった。

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