第34話

「で、今日は遠出してどこに行くの?」

「ん、偵察」

「へぇ偵察かあ・・・え?」

「ソラ君とシズは生徒会、よしのんはクラス準備」

 ふっふっふと不敵な表情を浮かべる観月。

「みんな秋都祭モードだけど、実はキンキ大会本選もそう遠くは無いのよ」

 車内のアナウンスで、隣県最初の駅への到着が告げられる。

「私、本来受け身は苦手なんだよね。そろそろリミッターを解除させて貰うわ」

 観月は手にしたキンキ大会参加校名簿をぐっと握り締めた。

「さあて、殴り込み・・・いや、偵察に向かいますか」

「へっ、まさか今日の事は國府田部長に許可貰っていないの!?」

 思わぬ急展開に全く付いて行けない詩織の腕を取って、観月は「橘」と書かれた駅のホームに降り立った。



 県下一のお嬢様学校である私立橘女子高校は、当然セキュリティも厳重なのだが。

「あっさり、通れたね」

 書類記入1つで門をくぐれた事に疑問を持つ詩織。

「当然、今回はオフィシャルで来てるからね」

 観月が悪戯っぽく笑う。

「なんだ、結局アポ取ってたんだ」

「ゴメンね、かやりん」

 ちょっとからかってみただけなんだ、と彼女はウインクをした。

「タテマエの訪問内容は、練習試合の申込みね」

 続いて出て来た台詞の中身に、詩織は嫌な引っ掛かりを覚えた。

「建前って、じゃあ」

「かやりん、心して掛かりなさい」

 観月はぐっと唇を引き締めた。

「啓西高校に匹敵する程の強豪校に乗り込むチャンス。ウィークポイントを含め徹底的に洗い出してやるわよっ」

「・・・」

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