第5話
「はぁ・・・」
レジの前で佳乃は大きく溜め息をついた。
夕方の混雑する時間までまだ余裕がある。
「老けるぞ、佳乃」
横合いからそう言ってたしなめる声がした。彼女が首を廻らすと、Tシャツデニムに緑色のエプロン姿の男子店員が笑いながら彼女を見ている。
「失礼な言い方ね、マサト」
佳乃は、幼馴染兼バイト仲間である相澤正人に毒づいた。
良くも悪くも、彼女が地を出せる数少ない相手だ。
ちなみにもう一人は、従姉妹兼彼の恋人である月島伊織である。
「すげーじゃん、いきなりナンバー2かよ!!」
休憩時間、飲み終わった缶コーヒーを軽く振りながら、正人は言った。
「他人事だと思って・・・ふぅ」
彼の反応に少しむくれた佳乃は、通算100回目の溜め息をつく。
「部員も10人超えたし、全員同学年なのよ。何で私が、って感じ」
「確かに井隼さんや吉田さんの方が適任かもなぁ」
正人は3人娘と面識があるので、素直に感想を述べる。
「でしょう??あーぁ」
机に突っ伏した佳乃に対して正人は優しくこう言った。
「俺は、佳乃がダメだなんて一言も言ってないぜ」
「え??」
予想外の台詞に顔を上げた佳乃。
それを見た正人はニヤニヤしながら言葉を続けた。
「それだけ期待されてるんだよ、佳乃の王子サマにね♪」
「・・・その言い方やめて」
耳を赤くした佳乃は、手にしたバンダナを被り直した。
「さ、休憩時間終わったよ。戻った戻った」
「へーい」
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