第44話 セーフ
「ど、同棲……?」
美月は呆気にとられたような表情を浮かべる。それもそのはずだ。
レストランで月城を見つけたと思ったら、
処理が追いつかないのも頷ける。
「うん、そうだよ?」
月城はさも当然の事かのような返事をし、俺たちの顔をまじまじとみる。
「二人ともどうしたの? そんな顔して」
「流石に家はまずいだろ?」
と、俺は呆れたように続けた。第一、家に入れて何をするんだ。
同棲について白状をしたのも意味が分からない上に、家に連れてくる? 理解が追いつかないぞ。
すると、月城はジト目で俺を見つめた。
「えー? 私たちの愛の巣、美月にも見せてあげたいでしょ?」
俺は美月の方を確認し、思わずため息をこぼす。
「お前なあ……」
それから、数分、放心状態の美月をよそに俺は月城を説得し続けた。
「……あ、分かったよ。ゆーくんが家に入れたくない理由」
そしてしばらく経った後、月城はやっと閃いたように目を輝かせた。
「やっぱり、私と二人きりがいいってことだよね?」
そう言って月城は俺の手を取る。
「ふふ、思えば美月を家に呼ぶなんて危ないじゃん。ゆーくんはかっこいいから美月が好きになっちゃうかもしれないし、家に呼んだら私が見えないうちに美月とゆーくんの間でなにか起きちゃうかもしれないしね。やっぱり、ゆーくんは私のことを思ってくれてたんだ……!」
「ああ、そういう事だ。そうとなればさっさと家へ帰るぞ」
一刻も早くこの状況を抜け出したい俺は、適当に返事をしておく。長々とした月城の話なんて耳に入っていないしな。すると、月城は嬉しそうに微笑む。
「そうだね、ゆーくん……! 私が間違ってたよ!」
俺はホッと胸を撫で下ろした。やっとこの修羅場から抜け出せる。
美月には申し訳ないが、月城に何を話されるか分かったもんじゃないからな。
「残念だったね?」
月城はそう言って美月に笑みを向けると、家の方へ向かって歩き出す。
「ゆーくん、行こ!!」
「ああ」
俺が返事をし、月城の方へ向かおうとすると、美月に呼び止められた。
「……私、今までの月城の言動が全く理解出来てないんだけど…………付き合って同棲してるっていうのは本当なの?」
「え、あ、いや、半分事実というか、違うと言ったら嘘になるというか」
と、美少女を目の前にした俺は思わず戸惑ってしまう。すると、先を急いでいたはずの月城も割り込んできた。
「ねえ? 二人で何話してるの?」
帰りたい、もうその一心だ。
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