第42話 詰み
俺は無心でパスタを口に放り込んだ。完全に終わった、これは詰みじゃないか、と。
あれから、月城と美月は目が合ったものの、店の中で騒ぎ立てることは出来ない。
ということから、今の状況について聞かれることはなく、帰り際だった美月はすんなり帰っていった。しかし、このことが、月城のメンバー、美月にバレてしまったことには変わりない。
安心したのも束の間、美月から月城にメッセージが来たらしく店の外で会うことになってしまった。もちろん、俺も一緒に。
「どうするんだ、月城……?」
呑気にパスタを口に運んでいる月城に俺は、恐る恐る問いかける。
が、月城は焦る様子もなく、なぜか口を膨らませている。
「あ、あの泥棒猫……! ゆーくんが私と一緒にご飯を食べてたからって嫉妬して。私からゆーくんを奪う気ね……!」
「月城?」
全く意味の分からないことを呟く月城に俺は思わず戸惑ってしまう。
されているであろう、俺たちの関係の誤解を解かなければいけない、と言う話をしているのだが……泥棒猫? 俺を奪う? 月城の思考はやはり、俺には理解出来ない。
すると、月城は戸惑う俺に笑いかける。
「あ、ああっ、大丈夫だよ。ゆーくん。私がゆーくんへの愛で負けることなんてないから! 絶対にゆーくんをあの女に渡したりなんかしないから!」
「……?」
俺は、月城の思考について完全に考えることをやめ、再びパスタに手をつける。はやいところ食べ終わってなにか策を考えておこう。この調子じゃ月城はなにも考えていないだろう。
と、考える俺を他所に月城は同じ調子で笑いかけてくる。
「全くっ! ゆーくんは心配性だなっ♡♡」
流石にまずい、月城がこの調子じゃ解けるはずの誤解もとけなくなってしまうぞ。
「お、おい。月城、本当にまずいんじゃないか?」
俺がそういうが、月城は変わらずキョトンとしている。
「え? なにが?」
「あれは完全にダメなシーンを見られてしまったぞ? 俺たちの関係を誤解されかねない……月城も何か策を──」
俺がそういうと、月城は食い気味に答える。
「──誤解? ゆーくん、どういう意味? 何が誤解なの? 私たちはそういう関係でしょ? ゆーくんは私の事嫌いなの? 嫌いになったの?」
「あ、いや」
月城の圧に俺はくちごもってしまう。というか、何か月城の癪に触るようなことを言ってしまっただろうか。
「ゆーくん?」
「い、いや、なんでもない……というか、待ってるんだろ? いそがなきゃな」
俺はそういって、パスタを流し込むように水を飲み干した。
♢ ♢ ♢
時間がたち、俺たちは美月との待ち合わせ場所に来ていた。
「どうしたの? こんな場所に呼び出して」
薄暗く、人影がない、待ち合わせ場所についた月城は、心底面倒くさそうな表情を浮かべる。
そして美月は、スマホを片手に持ち、呆れたように続けた。俺は会話に入れそうもないし、存在感を消しておこう。
「どうしたのって……。じゃあ、単刀直入に言うけど、二人はどんな関係なの?」
美月が月城にそういうと、月城は、待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「ふふ、恋人だよっ♡♡」
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