第12話

「そうやって、慌てるキミもかわいいよ」


 ご満悦で私を見てくる魔法使いさん。


(もーうっ)


 多分この人は私が怒っても喜ぶ人かもしれない。

 魔法使いさんは無敵に違いない。


「そうですよ・・・私はただの女です。こんなことで動揺してしまう女なんですっ。だから、神様なんて言われたら、天罰を貰っちゃいます」


「じゃあ・・・聖女っていうのはどうかな?」


「・・・せいじょ?」


「うん。聖なる夜の聖に、女の子の女で聖女。どうかな?」


 清く正しくいきようとしてきた私にとってその言葉は結構嬉しかった。

 男の子が騎士は騎士でも聖騎士を目指すって言う気持ちが少しわかった。


(私もまだ・・・子どもなのかな?)


「うん、気に入ってくれたみたいだね。聖女ミーシャ」


(あぁ、ダメだ)


 聖女ミーシャだなんて、言われるのはとても恥ずかしい。

 嬉しいんだけれど、超恥ずかしい。

 それも、師匠であり初恋で、今もこんなにも心をドキドキさせてくる魔法使いさんに言われるのは超超超恥ずかしい。


(そう・・・これが・・・恋)


 初恋をしていた。

 魔法使いさんへの初恋は好きだ、という感情しかなかった。

 みんなに好かれたいし、みんなのことが好きな中で、お父様とお母様を除いて一番好きなのが、魔法使いさんだったという気持ちだった。こんな言い方も変だけれど、魔法使いさんがいない中で、一番を決めろと言われても多分決められたと思う。


 でも今も一番ということには変わらないけれど、魔法使いさんという存在自体を求めていた。魔法使いさんに抱きしめて欲しいし、まだ手に感触が残っているけれど、彼の唇を自分の唇に重ねて欲しいと思った。そして、私にとって魔法使いさんの代わりはいない。


「ねぇ、私。魔法使いさんが大好き」


 私は素直に伝えた。

 なんか、嫌な気持ちもさっぱり綺麗になったし、色々考えるのが面倒くさくなった。


(なんか、魔法使いさんに似てきたのかも。でも・・・)


 それも、それでいい。

 だって、私の言葉を聞いて、とても嬉しそうな顔をしてドギマギしている魔法使いさんが隣にいるんだもの。


「返事はないんですか? 魔法使いさん」


 私は魔法使いさんの腕に寄りかかる。


「う・・・っ」


 魔法使いさんが顔を真っ赤にしながら言葉を絞り出そうとする。


「う?」


 私は口の形をうの字にして尋ねる。


 チュッ


 魔法使いさんが私の唇にキスをしてきた。

 さっきの手のひらで触れたのもドキドキしたけれど、そんなの全く比じゃない。

 今までの気持ちが机上の空論だったみたい私の気持ちは高揚していき、天にも昇る気持ちだった。


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