第11話
溢れる気持ちは止められないし、幸せな気持ちはみんなと分かち合いたい。
「きゃっ」
私の心に何かが芽吹いた。
痛みはないし、どちらかと言えば幸福なものなのだけれど、びっくりして声を漏らしてしまった。
私の心から湧き上がる白い輝きが私を埋め尽くし、私はその白い光を抑えきることができなかった。白い光は私から溢れて、周りへと広がって行く。
「これは・・・驚いたな」
魔法使いさんは苦笑いをしながら、その光景を眺めていた。
白い光はみんなへと広がっていき、触れたみんなが再び動き出す。
「きゃあああ・・・っ?」
みんなが戸惑う。
さっきまであった痛みが無くなっている様子だった。
そして、大きな煉獄の炎は天に飛翔し、大きな花火となって弾けた。そして、火の粉は綺麗な紅蓮の花と変わって、みんなの元へと舞い降りて来た。
「なんだこれ・・・っ」
「気持ちいい・・・」
みんなはまるで温泉に入ったかのように、目を閉じて心地よさに浸った顔になっている。
「ぎゃああああ・・・・っ?」
本物の煉獄の炎に焼かれて、一番ひどい症状で皮膚がボロボロで、髪の毛もチリチリになったリリスも私から広がる白い光で傷が癒えていき、元のリリスに戻って行く。
「はははっ・・・弟子が師匠を超えた日・・・かな」
魔法使いさんはそう言って、私の横に立った。
「魔法使いさん、これは?」
「わからないや。だって、ボクの知っている魔法の常識を超えちゃったんだもん」
「そんな・・・」
私は、すがるように魔法使いさんの袖を握る。
だって、嬉しい気持よりも不安の気持ちの方が大きい。
「魔法・・・というより、これはもう奇跡だよ」
私はもう一度みんなの顔を見る。
大人も子どもも、男も女もそれ以外も、みんな心が穏やかな顔をしている。さっきまで、私にヘイトを向けていたあのリリスでさえ、天使のような顔をしている。
「ボクが知っている神様は、心がキレイで優れた人間や動物達だけを残して、他の生物を全て洗い流した。けれど、キミはみんなの悪いところだけを洗い流した。これは、新たな神モゴモゴッ」
私は魔法使いさんの口を両手でふさいだ。
だって、コトダマって言葉がある。
そんなことをこの場で言って、神様扱いされても困ってしまう。
いや、もしかしたら、魔法使いさんは、私が神格化されて普通でいられなくなったら、皆の前にもいられなくなって、自分のところに来るしかないって思っている作戦かもしれない。
「もごもごっ」
「あっ、ごめんなさい」
私は必死に魔法使いさんの口を抑えていたけれど、魔法使いさんの唇を触れてしまったので、恥ずかしくなって慌て手を離す。
男らしいアゴやシュっとした頬も素敵だけれど、唇だけは柔らかくて、その唇が私の手の中で動いていて、それを意識したらとてもドキドキしてしまい、まだその感触が私の手のひらに残っていて、何度も思い出そうとしている私がいた。
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