第9話
「でもさ、キミのお父さんお母さんも、お父さんとお母さんだよっ!」
魔法使いさんが腕を組みながら、頬を膨らませてぷんぷんしている。
少し可愛い。
「はい?」
言っている意味がまったくわからないので、私は説明を求める。
「だってさ、今はあんな風に捨て子のリリスに駆け寄っているけど、キミの時は何もしなかったじゃないか」
「捨て子と言う言い方は、やめてもらえますか?」
「あぁ、ごめんごめん」
事実を率直に伝えてくる魔法使いさん。でも、こちらが止めてと言えば止めてくれるのがいいところだ。
「でも、キミもだけど、お遊びの法律に左右され過ぎ。あんな理不尽な法律なんて無視すればいいのにさ。そういうところ真面目なんだからいやになっちゃうよ。まったく。いつも見ていて、心配してたんだから」
「ん? いつも?」
「あっ」
魔法使いさんは素直だ。
やってしまったと言う顔をしている。
「まぁ、弟子がちゃんとやっているかなって心配だったからさ。もちろん、キミの成長のためというか、キミの人生だから死ぬようなピンチでもなければ手を出すつもりは無かったよ、うん。」
「・・・ずーっと見てたんですか?」
それは嫌だ。
子ども扱いされている気分だし、初恋の相手でも許せない。
「たまにさ、たまーに。ちゃんと、節度を持たないと。じゃなきゃ、魔法使いと言えど、この煉獄の炎で僕だってただではすまないよ?」
嘘をつくような人でもないし、確かに涼しげな顔をしている魔法使いさんの言うことは真実なのだろう。
「うーん、じゃあ信じます」
「ありがとうっ」
無邪気に笑う魔法使いさん。
胸が少し熱くなる。
「でもさ、話し戻しちゃうけど、キミは別に悪いことしてないし、まぁ、ちょっと秘密にしてたのが気に食わなかったとしても、ごめんなさいで、お終いじゃない? ボクならキミが謝ってきたらすぐに許しちゃうけどな。謝ったら許す、なぜそれがみんなできないのさ。まったく、苦しい世界だね」
アレクを見て、眉間にしわを寄せる魔法使いさん。
けれど、あまりそう言う顔をしないせいか、眉間の筋肉がほとんどないみたいでピクピクすぐに限界を迎えているのがかわいい。
「本当ですか? 私が禁止された魔法をたくさん使ったら、怒ったんじゃないですか?」
みなさんには申し訳ない気持ちがありつつも、魔法使いさんのノリに少し私もノリ気になってしまう。
「キミが乱用するような女性だとは微塵も思っていないよ。絶対にそんなことしないじゃん。だから、その仮定自体がありえないけれど、敢えて言えば、ボクは怒るかな。例えば、ボクの家をぶっ壊しに来たりとかしたら」
「しないですよ、そんなこと」
「でしょ」
二人で思わず笑い合ってしまう。
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