第1話: 何もかもが分からない、けれども
開けっ放しの入口より差し込む光が、チラチラと彼の瞼を焼く。自然の目覚ましは、彼の意識を浮上させるに十分足る力を発揮した。
――ずきん、と。
そうして、だ。深く、それはもう深く寝入った彼が目を覚ましてすぐに知覚したのは……強烈な頭痛であった。
相当に深く寝入っていたからなのか、それとも疲労が抜けきってないからなのか、あるいは別の理由があるのか。
何にせよ、痛む頭に負けず劣らず痛む四肢。頭痛はすぐに治まるだろうが、四肢の痛みはそうはいかないだろう。
溜息を吐きつつ、寝心地の悪い寝床より身体を起こせば、ぱきぱきと関節が音を立てて……そうして初めて、ハッと彼は我に返った。
(……家主が、帰って来ていない?)
見やれば、室内は昨日より何の変化も見られない。
つまり、痕跡が何一つ見当たらない。
その事実に、彼は……困惑して室内を見回す。
昨日は……囲炉裏だけでなく提灯にも火が灯っていた。所用で離れるにしても、一晩も離れるならば両方とも火の始末はしておくはず。
それをしていなかったということは、家主はすぐに戻ってくるつもりだったのだろう。
結果的にそうなってはいないようだが……何か、遭ったのだろうか?
――いや、そもそも、だ。
彼の視線が、囲炉裏にて今も変わらず揺れている炎と、気付き難いが変わらず役目を果たしている提灯へと向けられる。
(……囲炉裏とかの火って、何もしなくても一晩も燃えっぱなしなのか?)
――そんなわけがない。
ほとんど反射的に、彼はそれを否定した。
長持ちする炭など、そういう物がある事は知っている。しかし、それは長く緩やかに燃焼をするだけだ。はっきり炎を目視出来るほどに燃焼してれば、炭でもあっという間に燃え尽きてしまう。
見た所、囲炉裏にて燃えているのは炭どころか薪だ。炭よりも燃焼する力はあるが、その分だけ燃え尽きるのは速い。
多少なり火が強く成り過ぎないように薪のくべ方を家主が工夫していたとしても、一晩も燃え続けるような量には……少なくとも、彼には見えなかった。
――というか、昨日と全く変わっていない?
それに、囲炉裏もそうだが、提灯の方も不自然だ。提灯に似せた石油(または、灯油)ランプだとしても、一晩も点けっぱなしにすればさすがに燃料も底を尽きそうなのだが……そもそも、だ。
家主は……寝ている不審者を放置して、また出かけた?
見知らぬ者が我が物顔で寝ているというのに、わざわざ火が絶えないように薪をくべて、提灯に油を差して、再び家を留守にする?
――そんなこと、あり得るのだろうか?
いくら温厚で親切な家主でも、見知らぬ人物が家の中で寝ていれば声ぐらいは掛けるだろう。そうでなくとも、傍で見張るぐらいはする――あっ。
ぐぐうっ……と。
まるで、無駄な事を考えるなと言わんばかりにタイミング良く腹が鳴った。それは、おそらくは目覚めてから彼が出した音の中では一番大きな……腹の鳴き声であった。
……とにかく、助けだ。家主の件もそうだが、助けを呼ばなくては……警察、そうだ、警察だ、警察に連絡すればいい。
今更ながらに思い至った彼は、室内を見回す……が、無い。電話機らしきものは、何一つ無い。
もしかたら、ここは山小屋かその類なのだろうか。
それにしては生活感というか、内装の作りがソレではない。明らかに、生活する為の設備が整い過ぎている。一時的に身を休めるにしては……と思わなくはないが、無い物は仕方がない。
背に腹はかえられぬと内心にて頭を下げながら、箪笥を漁る。可能性は低いが、携帯電話などの、外部と連絡を取る為の道具があるかもと考えたからだ。
……けれども、無い。
最初に見た棚の中に有るのは着物……家主の趣味なのか、まるでタイムスリップしたかのような衣服ばかりだ。
まあ、元々期待は薄かった。
少しばかり気落ちはしたが、構わず調べる。せめて、住所が……ここが何処なのか、それを知る手掛かりが見つかればという思惑が有ったからだった。
(……どういうことだ?)
しかし、それすら無かった。
箪笥の引き出しは、全部で4つ。その内二つは衣服類で、一つは精米が入った麻袋、一つは……何故かは分からないが、味噌が入った木箱が収まっていた。
これには、色々と不可思議で納得出来ない事にひとまず横に置いていた彼も、さすがに無視出来ない違和感を覚えた。
仮にここが山小屋なら、万が一の避難場所として出入り口を開放しておくのはそこまで不思議ではない。
でも、その場合は外部への連絡手段なり、そこが山の何処に立てられたものなのか、それぐらいは置かれている(紛失している場合は別)はずだ。
それらすら置かれていない簡易も簡易な、文字通り雨風凌げるだけの小屋ならともかく、竈が有って、囲炉裏が有って、箪笥が置かれ、畳まで置かれている。
缶詰とかが入っていたなら分かる。保存が利くし、常温のまま食べられるからだ。
だが、調理しなければならない米や、保存が利かない味噌がそのまま入れられている、その意味が分からない。
わざわざそんなモノを箪笥に保存しているのに……山小屋にしてはこれだけ設備が整っているというのに、肝心要なモノが無い。
ならば誰かの家かと考え直しても、それはそれで、外部への連絡手段が一つも無いばかりか、不審者が寝ていても声を掛けずに火を絶やさ……ん?
「……誰だ、お前?」
それを見たのは、偶然であった。より正確に言い表すのであれば、ソレに意識を向け、気付いたのが……ようやくであった。
無意識のうちに、彼は……箪笥の上に置かれた鏡へと手を伸ばす。
同じく、鏡に映った見知らぬ誰かが手を伸ばし……指先が、鏡面を境にして接触した。こつこつ、と指先が鏡を突けば、鏡の向こうに居る誰かも同じく指先を突いて来た。
……。
……。
…………え?
鏡に映し出された誰かは非常に美しく、艶やかさを通り越して危うさすら感じさせる顔立ちの……おそらくは15、6歳ぐらいと思われる少年であった。
よれよれでボロボロな恰好を差し引いても、美しい。直感的に彼は少年だと判断した(まあ、下半身の感覚が……ね)が、髪を伸ばせば誰もが女性だと見間違うだろう。
そんな、信じ難いぐらいな美貌の少年が……鏡に映し出されている。呆然と、呆けた様子の美少年が瞬きをすれば、それに合わせて彼も瞬きを……え?
……。
……。
…………は、え、ええ!?
勢い余って鏡を割らなかったのは、単純に偶然なのだろう。
それぐらいの勢いで鏡へとズイッと顔を近付けた彼は……震える指先で、己の頬を抓んだ。
映し出される、鏡に映っている誰かの頬も抓まれる。
上下に動かせば、合わせて鏡の誰かの頬も上下に……鏡の誰かが頬を抓れば、同時に、彼の頬からも痛みが走った。
「…………」
言葉は、出なかった。悲鳴も、上げられなかった。事態を、状況を、上手く呑み込めなかったからだ。
けれども、状況を理解するまで、時間は彼に優しくしてはくれなかった。
それは、再び鳴った腹の音と共に存在感を示し始めた空腹感。そして、今になって唐突に姿を見せた……掻き毟りたくなるほどの、強烈な渇きであった。
(の、喉が……!?)
考えて見れば、当たり前だろう。
昨日の夜から今に至るまで、彼は一滴も水分を摂取していない。加えて、冷や汗やら何やらで、相当に汗を掻いていた覚えがある。
さすがにいきなり死亡するなんて事はないが、そこまでの渇きに慣れていない彼の苦痛は、言葉で言い表せられるモノではない。
昨夜は混乱のあまりそこまで気が回らなかったが、睡眠を取ったことで落ち着いてしまったのだろう。
そうなれば、肉体を生かす為に脳が行う行動は……ただ一つ。
空腹感やのどの渇き……生存する為の欲求を満たすための指令を身体に送る……ただそれだけであった。
「――み、みずっ」
反射的に水道の蛇口を探すが、見当たらない。当然、冷蔵庫なんてモノもない。
キョロキョロと、室内を見回した彼は……竃の傍、部屋の隅に置かれた、蓋付きの大きな壺を見つけた。
あれは、もしや水瓶か!?
考える余裕は、なかった。
駆け寄って蓋を開ければ、透明な水面が見える。蓋の上に置かれていた柄杓(ひしゃく)で一口。
……後はもう、貪るように二口三口、二杯に三杯と胃袋に水分を流し続け……大きなため息と共に、脱力した。
――一拍遅れて、ぶるりと背筋に震えが走った。
喉が潤ったら……仕方なく、彼は小屋を出て、裏へと回り……用を足す。
その際、明らかに記憶にあるソレとは大きさその他諸々が異なる今のソレを目にし……戻って、柄杓の水で軽く手を洗った後。
「……何が起きているんだ?」
囲炉裏の前に、腰を下ろし。誰に言うでもなく、そう呟いたのであった。
ちなみに、声も記憶のソレとは異なっていた事に今更ながら気付いたが……まあ、とにかく、彼は困惑するしかなかった。
何せ、此処が何処かが分からない。知識も技術も経験すら無い身で、この小屋を出てふもとに出られるかと言えば……賭けたっていい、己は遭難して死ぬだろう。
準備が万全に整っているならともかく、いや、それでも余裕で死ねるだろうが、今はその準備すら皆無。
ちょっと足を滑らせただけで、そのまま枝葉で身体を切って出血が止まらず……というのも、大げさではない。人の身体なんて、それぐらいに柔な造りなのだ。
……不幸中の幸いというべきか、この小屋の中はとても暖かい。無言のままに、彼は己が身体を見下ろした。
少なくとも、こんな恰好で一晩過ごしても死亡せずに済んだのだ。今にして分かるが、あの場所でそのまま一晩居たら……高い確率で凍死するか、低体温症に陥っていただろう。
(とにかく、家主が戻ってくるまで待とう……)
ぎゅるる……と。
そんな彼の判断に対して、彼の胃袋は抗議の声を上げ……ついでに、彼の瞳は本人の意思を無視して米と味噌が入っている箪笥へと向けられたが……彼は、固く目を瞑って堪えるのであった。
……。
……。
…………そうして、色々考え事を続けていると、再び日が暮れて……夜。
やはりというか、何と言うべきか……彼自身、どう判断すれば良いのか分からないまま……結局、家主は戻って来なかった。
(……現状を、整理しよう)
むくり、と。
敷かれた畳の上より身体を起こした彼は……改めて、おそらくは昨日の夜より一度として消えていない囲炉裏の火と、提灯の明かりを横目に……大きなため息を零した。
――ここは、おそらくは己が暮らしていた世界ではない。
そう、判断を下す理由は三つある。一つ目は何と言っても、何時まで経っても消えない囲炉裏の火だ。
長持ちしているとか、そういうレベルの話ではない。
はっきりと炎が揺れて、室内全体が温かくなっているというのに……欠片も、火種が燃え尽きる気配がしないのだ。
少なくとも、ここで目覚めてから今に至るまで、ず~っとそのままだ。新たな薪をくべたわけでも、ガス管が通じているわけでもないソコは……変わらず、熱気を放っていた。
囲炉裏がそうなら、提灯の方もそうだ。
昼間は気にならなかったが、こうして日が暮れれば如何に非常識な事なのかが目に見える形で分かってくる。
どれだけ効率の良い提灯やランプだろうと、部屋全体を明るく照らす程ともなれば、燃料の追加無くして不可能な話であった。
そして、二つ目は……部屋の隅に置かれた、葛籠だ。
中に入っていたのは、布に包まれていた包丁を始めとした調理器具と、ツルで束ねられた薪。高さ15cm程度の『らっきー地蔵』。そして、鞘に収まり、その上から丁重に布で包まれていた……刀であった。
――そう、刀だ。それも、普通の刀ではない。
柄の頭(持ち手側の底の部分)に彫られた、『不変』の文字。それは、彼が目覚めて最初に行った、『剣王立志伝』の隠しイベント……その先で見付かるはずの葛籠より手に入るアイテムである。
この刀に関する説明は、そう多くは無い。
ファミコン版では『折れない刀だ』とだけあり、スーファミ(スーパーファミコンの略)版では、『けして折れず、刃こぼれもせず、切れ味が変わらない不変の刀』とだけ説明されている。
攻撃力やレア度だけを見れば、それほど高い物ではない。
しかし、問題なのはそこではなく……刀が、こんな場所に無造作に放置されている、それに尽きた。
いくらなんでも、これはあり得ない。
刀の知識なんぞほぼ皆無な彼でも、刀が一本1万や2万で買える代物でないのは分かる。少なくとも、数十万はするモノであるのは、想像出来る。
包丁ですら、放って置くと錆びるのだ。わざわざ、そんな高価なモノを買って、無造作に……こんな場所に放置しておくだろうか。
それに、消えない囲炉裏の火もそうだが……何よりも彼を驚かせたのは、三つ目となる、箪笥の中に入っている物だ。
――結論から言おう。箪笥の中に入っている物が、減らないのだ。
具体的にどういう意味かと言えば、例えば、中に入っている麻袋(精米入り)を取り出す。そして、引き出しを戻して、再び引き出しを引っ張れば……どうなるか。
結果は、今しがた取り出した麻袋(精米入り)が、先ほどと同じように出現していた……である。
――正直、消えない囲炉裏の火や真剣が有る事よりも、こちらの方が万倍も怖かった。
人間、本当に理解が及ばない現象を前にすると、怯えてしまう生き物なのだろう。
例外はあるだろうが、とりあえず、彼は己が怯える方の人間である事を知った。
……で、この箪笥。
実は、内部構造もおかしいというか、もはや箪笥型の四次元ポケットか何かかと思ってしまうぐらいに、おかしい。
例えば、引き出しを限界まで引くと、引き出しの箱の終点が見えるわけだが……そこから更に引くと、地続きにもう一つ箱が繋がっているのだ。
引き出しだけ見れば、ものすご~く長い箱に、幾つもの区切りを入れているといった感じだろうか。
明らかに箱の長さと箪笥の奥行きのサイズが合わないのと、その区切られた奥のスペース内にも食糧とか色々有るのと……同じく、引き出しを戻せば中身が復活するのは、この際目を瞑る。
他にも、朝から何度も口にしている水瓶の中身も蓋を閉じれば即座に戻ったり、葛籠の薪も同様に、何故かよく乾燥して使用出来る状態になっていたり……まあ、アレだ。
もう、いっその事ここが異世界で、そういう世界観というか、魔法とか普通にある、そういう物理法則が働いている世界……と、彼は無理やり己を納得させたのであった。
……ちなみに、だ。
『らっきー地蔵』の事もあるし、最初は『剣王立志伝』の世界なのかと思ったが……どうも、少し違うのでは……というのが彼の出したひとまずの結論である。
(いちおう、立志伝3にはアイテム増幅バグが有った覚えがあるけど……)
それらを踏まえたうえで、改めて、現時点で彼が出した……想像を交えた総合的な結論は、だ。
1.ここは『剣王立志伝』の世界と思われるが、差異はしっかり見られるので断言は出来ない。酷似している世界、と思った方が良い。
2.五感はしっかりしており、夢ではない。ここが仮にゲームの中であったなら、ゲームオーバーかゲームクリアで戻れるのかもしれないが……保証は無い。
3.おそらく、この小屋に主は元々居ない。誰かが住んでいるにしては、生活感が有るようで全く見られないし……おそらく、始めからこうなっているのだろう。
(そして、四つ目は……俺のこの姿だな)
己の……記憶にあるそれよりも小さく細い両腕を見やった彼は……深々と、息を吐いた。
おそらく……いや、合っていると思うが、今の己はプレイヤーキャラの特徴が出ているのだと思う。
ニューゲームを選んですぐに行う、キャラクター設定。
『剣王立志伝』では御馴染みでシリーズによってどこまで設定出来るかは異なるが、この時、プレイヤーは各種ステータスにSPを割り振る。
SPとは『スペシャル・ポイント』の略だ。
要は、プレイヤーの基礎ステータスに割り振るボーナスみたいなものだと思っていい。
この数字の割合によって、その後の伸び率が大きく変わる。ゲームクリアにおいて、重要な要素の一つである。
と、いうのも、このSPという要素。
『剣王立志伝』は、そのシリーズによってシミュレーションの側面とRPGの側面とが強く出るのに違いがある。
しかし、そんな違いの中でも、SPという要素は共通しているのだが……実は、だ。
そう、実はシリーズによって、何にSPを振り分けるかで明暗がはっきり分かれる仕様となっているのだ。
具体的には、立志伝1では素早さ一択。2では攻撃力一択。3は攻撃力と防御力の二つを最優先にしつつ、残ったSPを他に振り分ける……という、鉄則とも言うべき暗黙の掟がある。
もちろん、守らなくてもクリアは出来る。
だがしかし、3はまだしも、難易度が頭オカシイ1と2に至っては、守らなければ恐ろしく難易度が跳ね上がる鬼畜仕様となっている。さすがは、ファミコンのゲームだ。
……で、だ。
そんな重要なSPの割り振りだが……目覚める前の記憶が確かなら、彼は……主に『魅力』にSPを割り振った覚えがある。
魅力自体は、買い物費用が安くなるとか、兵士たちの士気や、有力武将が仲間になる確率が上がるとか、色々とプレイヤーに有利に働くモノではあるが……ぶっちゃけ、『死に要素』である。
はっきり言えば、『剣王立志伝』というゲームにおいては、雑兵100人よりも、有力武将1人の方が強い。
そして、有力武将20人よりも、攻撃と防御を底上げしたプレイヤー1人の方が強かったりする。
正直、少し慣れたプレイヤーなら『魅力』には最低限しか振り分けない。彼だって、普通にプレイするうつもりなら、他のプレイヤーと同じく1か2ポイントしか割り振らなかっただろう。
(……酒か、やっぱり酒だな。こんなことになるんなら、ちゃんとプレイすれば良かった……)
まあ、考えるだけ今更……というか、普通はこんな事態になるなんて夢にも思わなかっただろうが……まあいい。
――とにかくは、だ。
(まずは、飯だ。生きて買えるにしても、何をするにしても、このままだと飢えて動けなくなる……)
ひとまず、そのように最終的思考をまとめた彼は、だ。
竃と釜があるわけだし、薪も囲炉裏の炎で簡単に点けられる。麻袋の米も味噌も……ついでに、他の食糧が箪笥にあるかもしれない……ので。
とりあえずは……小学生時代以来となる、竈と釜を使用した炊飯へと……うろ覚えな思い出を頼りに、取り組むのであった。
……。
……。
…………で、結果を語らせてもらうのであれば、だ。
「……うん、うん、そうだな」
米と水の量のバランスが間違っていて、火加減が間違っていて、おまけに途中でうっかり蓋を開けてしまった(開けた直後に駄目な事を思い出した)事で。
表面はべちゃべちゃとしつつ米にはしっかりと芯が残り、焦げはもはや炭に近い部分があるばかりか、香りが映って全体的に焦げ臭い味となったソレを。
「空腹は、最高の調味料って本当なんだな……」
彼は、味噌を混ぜることで無理やりミスを誤魔化し……思いのほか美味いなと思いつつ、湧き起こる寂しさと不安を一緒に……次々に腹の中へと流し込むのであった。
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