小城の女王

シヨゥ

第1話

「必要な量を知ることを覚えましょう」

 女王はそう語る。

「必要な量を知る?」

「そう。足るを知る、という人もいますね」

「足るを知る」

「そう。求めすぎてはいけないんです」

「求めすぎてはいけない」

「そう。自分で抱えきれる量を知る。そしてそれ以上求めない。求めるというのは奪うことでもあります。もしそれが所有者が居ないものであれば問題は起きませんが。私たちが求めるということは誰かからも求められるものということ。いずれはその者たちとの争いになります」

「その際は身命に代えてもお守りいたします」

「ありがとう。まずはこの小城から兵を進めましょう。足るを知るために。争いに負けぬ力をつけるために」

「王女からの命が下った! 者ども! 進軍だ!」

 鬨の声が上がる。広場に集った500余の騎士が槍を打ち鳴らす。

「無理はしないように。あなたたちの力は信じていますが、数が少ない。それにまだ周りからの信頼も勝ち得ていません。もしもの場合はここへ戻ってくること。いいですね」

「承知いたしました」

 深々と頭を下げ、颯爽と騎士の間を抜け、騎士は白馬にまたがる。

「出撃!」

 城門が開け放たれ、騎士たちが続々と出撃していく。

「御武運を」

 騎士たちを祝福するように王女はそう声を漏らすのだった。

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小城の女王 シヨゥ @Shiyoxu

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