「勉強量」
「それじゃあ、勉強量について話していくね」
里菜はそう言いながら、机の横の本棚にあるケースを取り出した。そして、その中からコピー用紙を手にとった。
「勉強ってどのくらいすればいいと思う?」
「テスト期間の話?前日の土日とかは八時間とかかな」
恵里がそう答えると、里菜が紙の下の方に八時間と書いた。そしてその隣に三時間と書いた。その数字を見て、恵里は再び?を浮かべた。里菜はそのまま話を続ける。
「テスト期間に必要な時間は三時間。八時間は正直多すぎるかな。何で三時間が良いかこれから説明してくね」
恵里は無言で頷く。
「まず最初に長時間、目安として三時間以上勉強するのをおすすめしない理由から。とにかく疲れる。経験あると思うけど、長時間勉強したら次の週勉強する気出ないでしょ?」
「そうだね」
恵里は激しく頷いた。
「長時間勉強したら反動で一週間も動けなくなっちゃったら、結局平均すると短時間になっちゃうでしょ?だからあまり長時間勉強は良くないの」
「けど、テスト期間にちょっとずつ勉強するよりも、テスト直前に勉強したほうが良くない?そのほうがテストの時に記憶に残るし」
「普通はやっぱそう考えるよね。けどね、圧倒的にちょっとずつ勉強したほうがいい理由があるの。まず最初に、勉強してるときって他になにかしてる?」
「うーん、動画を流しながら勉強してるかな」
そう言うと里菜は紙に動画を見ながらと書いた。
「動画を見ながら勉強、いわゆるながら勉強はね勉強の効率が下がっちゃうのよ。今までにさ、もう時間がないって状況で宿題をしたときとさ、いつも通り動画を見ながら勉強したら終わる早さが全然違ったってこと無い?」
「あー、あったあった。めっちゃガーってできるよね」
「それを勉強する時に常にできるように、ながら勉強を止めたほうが良いってこと」
「えー、それじゃあ嫌だよ。動画見てないと長時間勉強できないし」
恵里がそう言うと、里菜が紙に話をしながら書いていたものを恵里に見せた。
動画を見ながら勉強した場合、長時間勉強が出来る。動画を見なかった場合、勉強に集中できる。
「これを見て、どっちの方が良いと思う?」
「そりゃあ勿論、動画を見ながら勉強したほうじゃない?」
「そうだよね。只、勉強の質を考慮すると、結果が変わってくるんだよ。恵里っていつも漢字の小テストの勉強ってどのくらい時間かかる?」
「大体二時間ぐらいかな」
里菜は紙に動画を見ながら勉強した場合、三時間と書いた。そして、「学校の休み時間で焦りながらした場合は?」と質問を重ねた。
「大体二十分ぐらいかな。昼休み全部使って丁度くらい」
里菜は隣に集中した場合、二十分と書いた。そして、その隣に、二十分分の二時間イコールと書き込んだ。
「恵里、これの答えがなんだか分かる?」
「えっとー、一時間が六十分だから、二時間が百二十分でしょ。二十分の百二十で六だ」
「そうだね、この計算から言えることは、ながら勉強をしていない場合としていない場合での作業効率が六倍も違うんだよ」
「六倍ってどのくらい?」
「一時間で終わる勉強を六時間かけてしてるようなものだね。テスト期間の土日に八時間って言ってたから、八二十六で十六掛ける六分の一で三時間しか勉強していないようなものなのよ」
「たった三時間……?」
恵里は顔に冷や汗を浮かべた。それを見て里菜は苦笑いを浮かべる。
「それだけの勉強力でテストを受けて高得点が取れるわけ無いでしょ?だからまずはながら勉強を止めること。そしたら、今まで八時間土日にやってたテスト勉強が合計三時間だけで良くなる」
恵里の顔はそれを聞き、一気に明るくなった。
「そして計三時間、一日一時間半しか今までしてなかった訳だ。そう考えると、三時間って今までの理恵には足りるでしょ?」
「うん、そうだね」
「そしたら、今後は土日各三時間勉強するだけで良い訳だ。いつもより時間が短いのに、多く勉強はできてしまう。超お得でしょ?」
「うん、次からやってみる」
「だけど、急にながら勉強を止めるのはちょっと危険なのよ。慣れるまでは私が全力集中型勉強法を教えて上げる」
「わかった。三時間で勉強がいい理由はわかったけど、本当に三時間だけでいいの?もっと勉強したほうが良いと思うんだけど」
「ながら勉強を止めて長時間勉強をするとね、脳が溶ける」
恵里の顔がこわばり、体を仰け反らした。そして両手で頭を押さえて、不安を顔に出している。
「大丈夫、死ぬわけじゃないから。脳が疲れて溶けそうになるってことだから」
「なーんだ、脳が本当に溶けちゃうのかと思ったよー」
「長時間勉強はとっても疲れるから、私も無理。三時間以上勉強するとね、疲れが溜まって効率が段々と下がっていっちゃうからしない方が良いね」
「なるほど、ながら勉強をせずに勉強を三時間以内に収めることが大切なんだね」
「そう。それじゃあ次は「全力集中型勉強法」を教えるね」
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