文芸部は癖が強い! 〜廃部寸前です☆〜

きりなが とうま

第1話 青春を取り戻す

 私の名前は霧永燈眞。

本名は八奈見俊景。小説家という稀有なものを生業としている。


 嬉しいことに俺が執筆するライトノベル小説は飛ぶように売れる。

新作を出せば出す程人気になり、アニメ化、ドラマ化などの映像化がされ、興行収入も鰻登り。


これが最盛期だろうという状態が、ありがたいことにかれこれ五年は継続している。


勿論今の生活に不満などがあってはたまらない。


書籍化したくて、売れたくて頑張っているのになかなか売れない人たちもいるのだから不満を漏らしてはいけないだろう。


しかし一つだけ、一つだけ言わせてはもらえないだろうか。これだけは今の機会を逃すと絶対に経験できない、味わえないのだ。


いくら人気になろうともお金持ちになろうとも手に入らないもの、それは高校時代の恋愛経験。


そう、私は恋愛がしたいっ!



 この八奈見俊景、小説家デビューを果たしたのは小学六年生。


最初は自分が妄想した物語を形にできることがただ楽しかった。それからだんだんみんなが楽しんでくれるのが心から嬉しくて小説を書いてきた。


だから今までは小説を書くことしかしてこなかった。


他のみんなが恋愛をしてようがゲームで盛り上がっていようが興味などなかった。


 しかし高校二年生の春、恋愛小説を書いている時、気づいたのだ。恋に落ちるリアルな心理描写が上手く書けないことに。だから分かった、分かってしまった。今を逃すと高校生での甘酸っぱい恋愛は一生味わえない、と。



 青春の醍醐味と言える恋愛をしたことがない。


これは私の小説家人生にとって大きな壁となるだろう。恋愛というスパイスはどんなジャンルを問わず必要な要素だと私は思う。


ミステリだろうがサスペンス、ファンタジー、現代ドラマ、どれも少し恋愛を混ぜれば物語は深くなっていく。


恋愛をしたことのない私といえど一度も人を好きになったことがないわけではない。


中学三年生の時、勇気を振り絞って好きかもしれない子に告白はしてみた。


いや、結果は見えていたのだが見事にフラれた、完膚なきまでにフラれた。ショックは少なかった。そもそもあまり恋愛的に好きという感情ではなかったのかもしれない。


 ファンタジー系の小説で売れていた私に担当さんが「それも一つの青春だよ」と言っていたが俺はそんな結果で青春が終わるのは嫌なのだ。せめてもう少しキラキラとした青春を送ってみたい。


だから私は決心した。


続巻の執筆を遅らせ、普通の高校生活を送ってみることを。

勿論反対されまくった。担当さんからは「今の作品が売れてるんだから良いじゃないか、その作品が終わっても同じジャンルで新しい作品を書けばいい」と言われたがそれでも止まることはできない。



 渋る担当に編集長が一言、「学生の仕事は執筆じゃねぇ、青春だろ」という何ともかっこいいセリフによって約束を取り付けることができたのだ。あのときのダンディーすぎる編集長にオフィスのみんなは息をのんでたなぁ。


快く認めてくれた編集長からも一応の条件は出た。

それは執筆自体はしておいてくれ、とのことだった。今までみたいにバリバリはやらなくていいからすぐに復帰はできるようにしておきたいということらしい。


勿論私は快諾。


小説を書くことが嫌いになったわけではないし、そのくらいは苦ではなかったからだ。そして出版社から出る際に編集長からもう一言いわれた。

「俺たちの仕事を増やしてくれたんだ、彼女くらい作って紹介してくれよ」



私は編集長が大好きだ。









〇〇修正しました〇〇






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