第60話 狙われる学園
騎士団への報告会が終わった翌日。
この日もいつも通り、生徒たちを見送ってから諸々の仕事を済ませ、そろそろ昼食にしようかと管理小屋へと戻ってくる――と、
「うん?」
小屋の前に誰かが立っていた。
「スミス副学園長?」
「仕事中に悪いな。……ちょっといいかい?」
「っ! もちろんですよ」
この感じ……前と一緒だ。
騎士団に説明をしてもらいたいとお願いしに来た時と、副学園長の放つ気配がまったく同じだったのだ。
どうやら今回も、何か俺に頼みごとがあるらしい。
そう直感した俺は、副学園長を管理小屋へと招き入れ、コーヒーを出してから早速本題へと移る――つもりだったが、副学園長の方が先に切りだした。
「つい先ほど、周辺を警備している騎士から連絡が入った」
「連絡?」
「うむ。……ここから少し離れた位置で、武装した集団が集まっている、と」
「なっ!?」
ぶ、武装した集団!?
「ま、まさか……話に出ていたクーデターを起こそうとしている連中ですか?」
「詳細はまだ不明だ。向こうにも目立った動きがなく、まだ揃いきっていないという状況と思われる――と、現地の騎士は分析しているようだ」
「そ、そうですか……しかし、そうなるとヤツらの狙いは――」
「間違いなくこの学園だろうな」
そうとしか考えられない。
だとすると……まずいぞ。
「生徒たちはこの状況を?」
「まだ知らせてはいない。だが、心配には及ばない。私やキュセロ学園長に加え、今は騎士団も合流している。抜かりはない。――と、言いたいところだが」
スミス副学園長はそこで一度黙り込んでしまい、少し間をあけてから声のボリュームを大幅に下げて続ける。
「実は……現在、キュセロ学園長は病を患っていて、最近になりその病状が悪化しつつあるのだ」
「えっ!?」
お、おいおい……それってかなりまずい状況じゃないのか?
ベッドの上で丸まっていたラドルフもビックリして起き上がっている。というか、使い魔なのに主人の体調の変化に気づかなかったのか?
「ラドルフが気づかないのも無理はない。学園長は使い魔たちに動揺が走らないよう細心の注意を払っていたからな」
「なるほど……確かに、学園長の使い魔たちは、この学園の防衛の要……取り乱してそれが崩れるのを恐れたんですね?」
「その通りだ」
自身の健康よりも学園の防衛を優先させる――さすがは学園長だな。
しかし、最悪のタイミングで最悪の展開が訪れる結果となった。
……待てよ。
「……都合が良すぎませんか?」
「君もそう思うか。――私やリチャード殿も同じ意見だ」
学園長が体調を崩したと同時に、学園へ攻め込もうとする反乱軍の動きがある。
これは果たして偶然だろうか。
それとも――例の内通者の仕業だろうか。
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