第51話 仕組まれた事件

 学園が所有するダンジョンに現れたモンスター。

 やはり、あれは何者かが手引きしたものであるというは間違いないようだが――学園関係者による調査の結果、新事実が明らかとなる。


「まず、あなたが見つけたあの銀貨だけど……残された魔紋を照合した結果、学園の誰のものでもないことが分かったわ」

「何?」


 そんなバカな。

 あのダンジョン周辺は学園関係者でなければ立ち入れないはずだ。

 にもかかわらず、どうして部外者の魔力があのダンジョンに――そう考えた時、ある予感が脳裏をよぎった。


「まさか……学園の関係者が黒幕ではなく、協力者だと?」

「学園長たちはそう見ているようね」


 どうやら、そっち路線が濃厚らしい。

 けど、そうなると……犯人の特定は難しそうだ。

 あそこは学園の関係者しか出入りできない――表向きにはそうなっているが、実際のところは少々異なるケースがある。


「ダンジョンを管理している職員たちのために、学園街から差し入れなどが持ち込まれているそうだな」

「え、えぇ……もしかして――」


 サラは気づいたようだな。

 

 学園のある敷地まではふたつの高い壁を突破しなければならない。しかし、一年のうちたった一日ではあるが、その固く閉ざされた堅牢な学園から生徒たちが出てくると気がある。


 それが――ダンジョン演習だ。


「ダンジョンを管理している場所には、学園関係者であれば誰でも自由に出入りできるという点を突き、罠を張っていたわけね」

「うん。――ただ、そうなると黒幕候補が絞られるどころかさらに増えてしまうんだけどな」

「い、言われてみれば……」


 あそこに出入りしている学園街の人間は結構いるからなぁ。

 魔紋の調査……その対象者を学園街でダンジョン管理所に出入りしている者まで広げた方がよさそうだ。


「そういえば、この前のダンジョン演習で大変な事態が起きたそうだな。学園街ではもうその話題で持ちきりだよ」


 料理を運んできた店主が会話へと参戦。

 どうやら、例の事件はすでに学園街で有名になっているらしい。まあ、これほど距離が近いのだから隠し通すのは難しいか。


「おふたりの様子を見る限り、犯人捜しは難航しているようだね」

「ははは、面目ない」

「何を言う。学園の職員たちがどれほど熱意を持って子どもたちと接しているかは、一番近くで見ている我々学園街の人間がよく知っている。悪いのは学園の生徒たちに危害を加えようとするヤツだよ」


 店主は今回の犯人に対して憤慨していた。

 学園街で店を出す人たちは、学園が休校の日になるとここへやってくる生徒たちを我が子のように可愛がっている人が大半だ。

 食堂の店主もそのひとりで、この店のメニューは学生のみ半額の値段で料理を提供しているらしい。年齢的にも育ち盛りでたくさん食べたいだろうから、この配慮は生徒たちにとっても嬉しいだろうな。何よりおいしいし。


 その後もニコールのことやダンジョンの事件について、さらに最近の生活に関してなどなど――さまざまな話題で盛り上がった俺とサラ。

 こういうふうに気兼ねなく話ができる同僚が近くにいるっていうはいいものだ。

 また何かあったら、この食堂に誘って語り合おうと思う。

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