第41話 職員会議
ついに王立学園の職員会議が始まる。
四つある校舎のうち、中央にある職員専用棟の三階――ここには緊急時の対策会議を開く議場があり、職員たちは底に集められていた。
その中に……学生寮管理人である俺も足を踏み入れる。
正直、とんでもなく場違いな気がしてならないが……ダンジョンで起きた事件をどの職員よりも近くで見ているため、証人としてこの場に呼ばれたようだった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」
サラがそう声をかけてくれたが……幼い頃から冒険者の世界で生きてきた俺には、このエリートだらけの空間は少々息苦しく感じてしまう。
とはいえ、これからは俺もこの学園の関係者になるわけだから、このような場においてもしっかり対応できるようにしておかなくては。これも人生経験だ。
職員会議はキュセロ学園長とスミス副学園長がやってきたいよいよスタートとなる。
ちなみに、今日の学園長は幼女スタイルだ。
司会役を務める二年生の学年主任であるシモンズ先生が議題を読み上げる。
「では、本日の議題――昨日ダンジョン内で起きました、モンスターの襲撃事件についてですが……まず、詳しい現場の状況を同行していた学生寮管理人のルーシャス殿にお話ししていただきましょう」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれ、緊張しながら起立。
同時に、会議に参加している全職員の視線が俺に注がれた。
うおぉ……なんか圧倒される。
これまでに経験のないプレッシャーだ。
それでも、俺は俺の役目を果たすべく、背筋を伸ばして昨日の状況を説明した。
大型のモンスターが二体も同時に出現したという点に関心が集まる――のかと思いきや、職員たちはアデレートの戦いぶりに興味をひかれたようだ。
「死霊魔術師の戦いかとしては王道だが……」
「従霊が相手を殴り倒すなんてケースは初耳だ」
「どんな従霊なのか、一度見て見たいな」
希少な属性であるがゆえに学園でも対応が難しかったアデレートが、他の生徒を守るために必死に戦う――その光景があまり想像できていないようだった。
話題が逸れたため、スミス副学園長が「ゴホン」とわざとらしく咳払いをする。途端に、騒がしかった職員たちは皆一様に黙り、シャキッと背筋を伸ばした。……根は生徒想いで優しい良い人なんだろうけど、あの低音ボイスと人相ではそういったリアクションになってしまうのも致し方ないか。
気を取り直して説明を続行し、なんとか最後まで終えることができた。
「ありがとうございます、ルーシャス殿」
「い、いえ」
「では、今の説明を聞いて何か質問やご意見などはありますか?」
シモンズ先生がそう尋ねると、ひとりの職員が手をあげる。
その人は二十代半ばほどの若い男性で、身なりから察するに恐らく教員だろう。
「ダンジョン内で発見された銀貨の件で関与している学園の関係者がハッキリ分かるのでしょうが……問題はなぜそのような行動に出たのかだと思います」
「やっぱり、気がかりなのはそこよね」
男性教員の意見に賛同の意を示したのはキュセロ学園長だった。
「城や騎士団の詰め所ではなく、学園を狙ってくる……黒幕にとってはそれがもっとも自身にとって得になる標的ということよね」
キュセロ学園長の指摘に、職員たちは騒然となるのだった。
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