第38話 真相解明へ
ダンジョンから出ると、俺たちはすぐに学園へすべてを包み隠さずに報告した。
すると、すぐにスミス副学園長が飛んでくる。
「大変だったな。生徒たちを守ってくれたこと……礼を言う」
「いえ、ほとんど彼らがモンスターを倒したわけですし、情けない話ですが、むしろ俺の方が生徒たちに助けられましたよ」
これは嘘偽りのない事実だ。
みんなの活躍があったからこそ、俺もこうして生き残れたんだ。
リゲル、レオン、そしてアデレート――この三人は今後も切磋琢磨して強くなっていくだろう。学園としても期待が高まるだろう。
……もちろん、俺がスミス副学園長に話したいのは将来有望な若者たちの活躍ぶりだけではない。いいこともあれば、悪いこともある。
「例のモンスターについてですが……」
「皆まで言うな。今、こちらに学園関係者から選抜された調査班が向かっている。あのダンジョンに強いモンスターが二体も同時に出現した……偶然とは思えないからな」
さすがは副学園長。
すでに手を回していたか。
学園としても、このダンジョンは今後も利用していくつもりでいるだろうから、同じような事態が起きないように対策を練るのは当然の対応と言える。
ただ……今回の件でもっとも避けたいのは――あのモンスターをこのダンジョンに出現させるように仕向けたのが学園関係者という事態だ。そうなれば、学園で働いている人たちの中に裏切り者が潜んでいるという、厄介な状況になるからな。
「だが、黒幕の狙いは一体何なんだ? 学園に何か恨みを持つ者の犯行なのか?」
スミス副学園長はその点も気にかけているようだった。
二体の巨大モンスターをダンジョンに差し向ける……これはかなり大規模な仕掛けだ。エリートを憎むって軽い動機じゃないと思う。
学園そのものをなくそうとしている。
どこか、そんな執念めいたものを感じるな。
今回の件で、ダンジョン演習は急遽中止になった。
緊張している者が多かったが、中には自分の腕を試したいとワクワクしている者もいた。彼らがそれを果たせなかったのは心残りだが……さすがにこれ以上の続行は難しいだろう。
せめて、真実がすべて明るみとなってから改めて挑戦させる――やるとするなら、そういう方針となるか。
生徒たちを学園に帰した後、俺はサラに呼ばれて再びダンジョンを訪れた。
厳密に言うと、俺を呼んだのはサラではなく、スミス副学園長らしいが。
「おぉ、待っていたぞ。ちょっとこっちへ来てくれ」
戻ってきて早々に副学園長が手招きをしている。何事かと思って近づいてみると、そこにはアデレートの従霊によってボコボコにされた二体のモンスターの亡骸が。
「こいつらを処分する前に……これをどう見る?」
スミス副学園長はそう言うと、モンスターの腹部を指さした。
一見すると、何もないように思えるが……そこには驚くべき事実が。
「これ……魔鉱石ですか?」
「さすがだな」
「えっ? 魔鉱石? どこに?」
サラがそう尋ねるのも無理はない。俺は思わず魔鉱石と口走ったが、実際に見慣れた形であるわけじゃない。
モンスターの腹の部分には、赤い横線がいくつか入っている。
何も知らない人が見ればただの模様にしか映らないだろう。
……だが、この赤い線はあとから塗られたものだ。
さらに厄介なのが、この赤色を出すために使用されている原料。これがいわゆる魔鉱石なのだが――俺にはある心当たりがあった。
「冒険者を狂暴化させる赤い魔鉱石……まさか、これを利用した?」
「私はそう見ている」
言い切ったスミス副学園長。
……まあ、確かに、あのモンスターは巨体だったが、討伐自体は難しくないはず。実力的にも、リゲルやレオンが苦戦するほどではないにもかかわらず、なかなか倒せなかった理由はそこにあったのか。
これが発覚したことにより、あのモンスターが人為的にここへ送り込まれた可能性がほぼ決定的となった。
「学園長には私の方から報告をしておく。君たちふたりにはこのダンジョン周辺を調査してもらいたいのだ。――元冒険者としての知識を生かして」
「「分かりました」」
俺もサラも、かつては冒険者としてダンジョンに何度か挑戦した過去がある。そこで得た経験から、学園関係者では気づきにくい点にも目が行くと判断したのだろう。
それなら……久しぶりにサラとのタッグを復活させるとするか。
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