第10話 アドバンテージも良いんじゃない
――かぽーん……
「はぁぁ……。気持ち良い……ねぇ……ちーちゃん」
「あぁ……まぁ……な」
「えぇ……? ちーちゃん、気持ち良くないのぉ?」
「え? うん。いや、気持ち良いよ。ホントに本当さ。広い風呂と言うのはとても解放感があって、自宅では味わえないこの感覚が何ともなぁ……」
「でしょ? 私もそう思うものぉ。だって自宅じゃ絶対に味わえないよねぇ」
「うっ……うん。そうだな」
「あれぇ? ちーちゃん、なんだかちょっと不満げだけど、何か気になる事でもあるの?」
「うぅぅん。あるのか? と、問われれば、間違い無くあるし、無いのか? と問われても……やっぱり、あるなぁ……」
「へぇぇ。それじゃあ、何が不満なのか言ってみて」
「あぁ、そうだな。それじゃあ怒らないで聞いてくれるか?」
「うん。私、ちーちゃんが言うコトなら、絶対に怒らない自信があるよ」
「そうか。それは良かった。それじゃあ言わせてもらうけど」
「うんうん。言って、言って!」
「お前……どうして私の後ろに居るんだ?」
「え? 後ろって?」
「いや、ソコ後ろだろ? なんでこんなに大きな風呂に入ってて、お前は私を抱きかかえる様な形で後ろにいるんだ?」
「えぇ? 他のお客さんに迷惑がかからない様にぃ?」
「なぜに疑問形っ! って言うか、いまこの湯舟の中にはお前と私の二人きり。他に誰も入っとらんぞ?」
「えへへぇ。二人きりだねぇ……まるで貸し切りみたい」
「そうだなぁ。平日の夕方だし、まだ一般客が来るには早い時間帯だからなぁ……ってそうじゃなくって! だったらお前、もうちょっとこう、広がろうよ。って言うか、ついさっき、銭湯は解放感が好きってお前も言ってただろ? これだったらウチの風呂に一人で入った方がよっぽどくつろげるわっ!」
「えぇぇ? 言って無いよぉ。わたし、解放感が良いなんて言ってないもん」
「いやいやいや。思い出してみろ? ちゃんと言ってるはずだぞ!」
「ちーちゃん勘違いしてるよぉ。私が言ったのは、『自宅じゃ絶対に味わえない事』が良いって言ったんだよ?」
「うん? ……あぁぁ。そうか。そうだったか? うぅぅん。そうだった様な気も……するけどぉ。まぁ、
「うぅぅん、それもあるんだけどぉ……」
「それもあるけど……って事は、他にもあるのか?」
「うん、そう。そうなの」
「へぇぇ。それじゃあ、その他にある自宅じゃ味わえない銭湯の良さ……って言うのは何なんだ?」
「えへへぇ。それはね? 私の手の中にぃ……」
「手の中に?」
「ちーちゃんのオッパイがあるって事っ! 手ブラ復活っ! きゅっ! コリコリッ!」
「何がきゅっ! コリコリッ! だっ! ドサクサにまぎれて、揉むな、揉むなっ! って言うか、コリコリもするなっ! くっ! 予想はしていたけど、やっぱりソレが目的かっ! お前ってヤツは全く期待を裏切らんヤツだなっ!!」
「えへへぇ。そうでしょぉ!」
「そうでしょぉ! じゃないっ! とりあえず、私の後ろから離れろ!」
「えぇぇ。でも良く考えてみて? 私が後ろじゃないとすると、私が前って事になるじゃない?」
「え? どう言うコトだ?」
「いや、だからぁ。私が後ろじゃなかったら、前に行くしかないって事。となると、私はちーちゃんの膝の上に乗るって事になる訳じゃない? ちょうど、いまの位置が逆になる感じで」
「まぁ、もしお前が前に来るとしたら、そう言うコトになるな」
「となると、ちーちゃんが私のオッパイを揉む事になる訳なんだけど、そうなると、私はいったい何を揉めば良いの?」
「ちょっとナニ言ってるのか良くわからないんだけど」
「そうするとぉ、もともと揉みたい私は、仕方なくちーちゃんの方を向く事になる訳じゃない」
「もう、何を言っても無駄そうだし、この後の展開も気になるからとりあえずスルーするけど。あえて言っておくが、これはサッカーで言う所のアドバンテージだからな。既にファールは確定していると思えよっ。で? お前が私の方を向いたらどうなるって?」
「いやぁ……流石に公衆の面前でちーちゃんと正面から向き合ってオッパイを揉み合うのは恥ずかしいなぁ……と思ってね。でも、ちーちゃんがシタイんだったら私、頑張るよっ!」
「頑張らんでも良いわっ! ピピー。レッドカードでーす。一発退場っ!」
「えぇぇ! 審判ずるぅぅい! だったらもっとコリコリしてやるっ!」
「おっ! おほっ! こっ、コラっ! ヤメロっ!」
「いやぁぁ! 止めなぁぁい!」
「うわぁー!」
「あははははは!」
スーパー銭湯……
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