第2章 落第女神の憂鬱 4

 そんなこんなで、ようやく神界の中央、アクロポリスの大神殿にたどり着いた。大理石でできた重厚な建物。正面には巨大な柱がそびえ、威厳を一層増している。そして、上の方が雲に隠れてしまうほど高い。

 ボクたち四人の前に立ちふさがるような、正面の大階段を前にする。

「気が進まないなあ……」

 不安と緊張と、普段の日常をぶち壊された不満を込めて、ボクは大きくため息をひとつついた。

「意気地が無いですの。せっかく私たちここまできたというのに」

「まあ、頑張ってー。それとさっきも言ったけど、ため息吐くと幸運逃すよー」

「もういいよ。赤点とる時点で、ボクに運なんて、残っちゃいないからさ」

 追い討ちをかけるかのように、ボクの心はさらにどんよりとして来た。

「試験は運ではない気がしますの……。あなたが寝てばかりで勉強しなかったことがいけませんの」

「うるさい。優等生が、うるさい」

「優等生は関係ありませんの! 私はただあなたのことを気にかけて……」

「それがお節介なんだよ……」

「まあっ、なんてことを! 私が気にかけなかったら、誰がいるというのですの? 女神見習いの中で」

 こうしてボクとミヘアは、口論になった。お互いの日々の不満を言い出すと止まらなくなってしまった。そばのコトナは「やっぱ女神同士の喧嘩って、なんか面白いねー」として傍観を決め込む一方、ハルノは「ふ、二人とも! 落ち着いてください!」と、内気な彼女なりに仲裁しようとしていた。

 しかしその願いは届かず、ついに両者、身構えて対峙するのに至った。

「いいですわ。決闘しましょう。ここであなたに分からせれば、アナタ自身の愚かさを少しは見直すいいきっかけになりますでしょうし」

「うるさい生意気な。こちとらいっぺん、君とは勝負したかったんだ。もしボクが勝ったら、ボクの眠りを邪魔しに部屋に入らないだけでなく、ボクが宿題を写す時に、嫌がらずにノートを見せること。いいね?」

「望むところですわ。でもどうせあなたは負ける運命にあるわ。準備はいいですわね?」

「御託はいい。とっととかかってこい」

 別にボクに勝算があったわけでもない。でも、一度売られた喧嘩は、買うのがボクだ。まあどうせ向こうが勝って言うことを聞かせられても、ボクはあとでバックレれば良いだけだし、やってやろうか。

 決闘の内容は、ガチンコの魔法勝負だ。基礎魔法を習得しているボクたちだからできる対決。お互いの右手に光を貯めはじめ、今にもそれをぶつけようとする。

 両者ともに呪文を唱え始める。

「そこまでだ」

 そんなボクたちの間に入ってきた、一人の男。とっさの出来事に、思わず手の光をボクたちはしまうことにした。

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