ゾンビじゃいけませんか?

のなめ

第1話 序幕

 ビッターン。


 いきおいよくドアが閉められる。


 靴が乱暴に脱ぎ捨てられる。


 お約束どおりの舌打ちが、とりあえずのようにはさまれる。


 ふつふつと湧きあがる怒りをたしなめていくと、けっきょくため息しか出てこなかった。


 さすがに自分に嫌気がさすようにして、通路をトボトボ歩き始めた。


 それでも部屋に入る前、いったん立ち止まっていると、やっぱりそこで浮かんでくる。


 そのまま禿げ頭をわし掴んで壁に叩きつけてやった。


 上下左右と場所を変え、めりこませるように叩きつけてその回数をカウントしていく。


 十数回ほどくり返すと、空しいかな、最終的にはもうひとつため息が加えられただけだった。


 やれやれ、と大袈裟につぶやきながら部屋に入る。


 淀んだ空気がいたるところを漂っていた。


 さっそく閉め切られた窓が目につく。


 開けると新鮮な空気が耳元をくすぐっていった。


 あとはゆだねるようにして全身で浴びる。


 それから、ふぅー、と一呼吸。


 今度の吐息はとても心地がよかった。


 風に身をまかせ、見下ろす先をぼんやり眺めていると、気持ちは不思議と和らいでいった。


 あー、あの禿げ教授、とっととしんでくんねーかな。

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