「こんばんは、死神です」そう言って俺の元にやって来たのはリクルートスーツを着た小柄な女の子でした

阿藤Q助

【プロローグ】

「汚ねーなー」

「くせーぞ、こいつ」

「貧乏人に触ったら、貧乏がうつるってよー」


 いつものバカ共がボクをののしる。

 だから嫌だって母さんに言ったんだ。

 毎日違う服を着て行かなきゃ、イジメのターゲットにされるって。

 夜遅くにパートから帰って来た母さんは、目も合わさずに「きちんと洗濯した服なんだから、堂々と胸を張っていなさい」って言うけど。


 僕が言いたいのはそういう事じゃない。


 そもそもなんでウチはお父さんが居ないの?

 なんで夏休みにディズニーランドに行けないの? 

 近所のファミレスだって数えるほどしか行った事が無い。

 体育の授業では、クラスの皆がカッコイイシューズを履いてるのに、僕だけボロボロの靴。


 なんで? 何でなの?


 たまり兼ねた僕はお母さんを責め立てた事がある。

 お母さんは泣き出してしまって、何も言わなかった。


 ……あれから何年経っただろうか?

 母さんには申し訳ない事をしたと、今でも思っている。

 俺にとってたった一人の肉親だった母さん。

 地元の市議会議員が運転する車に跳ねられて死んでしまった。


 議員は飲酒運転だったという噂を聞いた。

 なのに、……なのに、何故か母さんが突然走行中の車に飛び込んだということになっていた。

 警察は「おそらく自殺を図ったのではないか」そんな一言で片づけた。

 母さんがそんな事をするハズはない。


 おかしい。こんなことが許されていいのか?


 母さんの葬式の席で投げるように札束の入った封筒を寄こした議員。

 その時俺は悟った。


 ……そうか、金か! 金さえあればなんでもアリか!


 クソ! クソ! クソ!

 金がそんなに偉えのかよ!


 ……分かった。


 それなら、俺はなりふり構わず金を稼いでのし上がってやる。

 このクソみたいな世の中でテッペン獲ってやる。



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