異世界に無能はいらない件について

VAN

プロローグ 宮本総一郎と終焉の竜

 「さてはお前、クソ雑魚だな?」


 神様は言った。神様が言うセリフとはほど遠いセリフだが確かに俺のことをクソ雑魚といった。


 「なんでかな~なんでかな~???ソシャゲで限定のしかも推しキャラのガチャ引いて1000連爆死してショック死ってなんでかな~?僕そんな人間弱く作った覚えはないんだけどな~」


 実に不名誉だが事実である。この宮本総一郎、死因は、俺の最高の押しキャラ「ツバキ」ちゃんのハロウィン衣装verがピックアップされたソシャゲの限定ガチャに親のすねを少しずつかじってためた50万を投資した挙句、1000連爆死のショックにてこの世を去った。25歳だった。


 「なんでかな~なんでかな~人間ってなんでこんなに馬鹿なのかな???」


 「神様、人間はおろかな生き物なんですよ」


 「もう一回死んだほうがいいんじゃない?」


 神様はそう言って持っていた杖を天にかざした。何か嫌な感じがする。


 「もういいや、もう一回死んできてよ」


 そして謎の光にいきなり吸い込まれた俺はしばらく気を失った。



 気が付くとそこはRPGのゲームの世界のような緑豊かな草原、透き通るほどきれいな小川、そして真っ赤に燃える炎・・・

 それは今まで見てきた草原を燃やし尽くし、小川を一瞬にして蒸発させた。

 そう、この綺麗な世界は現在進行形で火の海にされそうになっているところであった。そしてその炎を口から絶えず吐き出す一匹の赤黒い竜。

 

 「人よ、恐れよ。我が名はアルドラス。終焉の竜なり。貴様に終焉を・・」

 

 「ちょっとぉぉぉまってよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 精一杯叫んだ。ものすごく叫んだ。どうにもならないけどとりあえず叫んでみた。

 

 「なに?意味わかんないんですけど?多分異世界転生系なのは把握したけど、こんなお粗末な流れで転生しちゃっていいんですか???せっかくならほかの異世界転生系みたいなかっこいい転生してみたかったなぁー!ねぇ神様!主人公なのにみっともなく泣いちゃうよ?25歳だけど泣いちゃうよ?」

 

 俺は絶えず口にした。

 

 「しかも何?いきなりラスボスですか?竜王ですか?ミ〇ボレアスですか?勝てませんってそんなぁ!転生系あるある俺ツェー能力持ってないっすって勘弁してくださいよぉ、ドラゴン大大大王様ぁぁ」


 「話聞こうか?」


  大量の炎ではなく大量の愚痴を吐いた俺に同情したのか終焉の竜さんはラスボスっぽい構えをといた。ていうか、終焉の竜普通にやさしくてびっくり鈍器。


 「え、大丈夫なんすか?終焉の竜なんすよね?キャラ崩壊してません?」


 「いいよ別に、どうせ最後殺すし」


 「ああそうか、きみはそういうやつだったんだね」


 いつか使いたい国語の教科書名言ランキング第4位ぐらいのセリフを言うことができた。まあつまり未練はない。人生オワタというわけだ。完全に詰みました。でもなぜか知らないが終焉の竜さんは俺のここに至るまでのお話を聞きたいらしいので遺言として話してやることにした。


 「なるほどね・・・なんかかわいそう、ごめん殺す気失せたわ。」


 残虐そうなあの終焉の竜が同情して殺すのをやめた。しかも謝罪付き。みじめだ。デスゲームには勝ったのに人として負けた気分だ。なんでだろう、目がかすんで見えないや。


 「そのかわり」


 そんな終焉の竜は俺にとんでもないことを話した。


 「この終焉の竜、アルドラスの部下になれ」

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