006_ゲーセンの記憶
「白色」「ゲーム」「穏やかな記憶」で。
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白色のアームが、透明なアクリル板越しに横へ動いた。俺が目をつけていた、茶色にクマさんの縫いぐるみのワキを狙う。
(ちょうど良い。わきだけに、ワキが甘いんだよ!)
アームは重い頭の下、ワキの上に出る。今度は白いアームを縦に動かす。
良い感じだ。
アームは今、クマさん縫いぐるみの関節上にある。
「良し!」俺は呟く。
俺の隣で彼女の喉がゴクリとなるのを耳にする。
アームが降り、クマさんの頭をなでながら下降し、クマさんの頭がぐらついたところで閉じに入る。
俺も彼女も凝視。
「おお」俺が漏らした俺さまやったぜの印。
「おおおおお?」彼女も釣られるも、なぜ疑問系?
アームが熊の手に引っ掛かり、大きな頭がアームの手前にやや傾いだ。まるで、俺たちにお辞儀をするように。
「よっしゃ!」
俺の強い言葉。俺は彼女が「ゴクリ」と唾を飲み込むのを聞く。
アームは排出口へと動く。クマさんの首にアームが掛かり、足を引き摺られていく。
(そのまま、そのまま、そのままだクマ公!)
クマさんの体がピクピクと右へ左へ動くたび、俺達は「おお」「おおおおお?」と繰り返す。
やがて。俺たちの掛け声が変わる。「頑張れ!」「あと少し!」俺と彼女はアクリル越しに視線が釘付けだ。
そして──コロン♪ 白いアームが解き放たれ、最後の仕事をしたのだ。
「やったぜ!」排出口から転び出たクマさんの縫いぐるみ。俺は雄叫びを上げる。
「わーい!」彼女が飛び上がって喜ぶ。「さすがさすが!」縫いぐるみを拾った彼女はクマさん片手に俺の背中をポコポコ叩く。
(これが本気を出した俺の実力だ! ……そこ、マグレなどと本当のことを漏らすなよぅ!?)
でも。
「クマさんありがとね!」
「応!」
と。
クマさんを掴んだままの彼女の両手があがる。俺もそんな彼女の掌と、クマさんを軽やかに叩く。
そう。
俺と彼女はハイタッチを決めたのだ。
「「イェイ!!」」
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