第13話 世界
どういうことだ?
『その前に柳也様にとって魔王とはどのような認識ですか?』
ラノベの知識でしかないけど、魔族と魔物の王みたいな意味じゃないか?
『それは半分正解で半分間違いです。魔王というのは尖兵に過ぎません』
·········ガチか?
『はい、魔族の王を魔王と表していますが、魔物の王ではありません。ですので魔王に対して魔物は牙をむきますし、実力が足らなければ殺されます』
魔物はどこから生まれているんだ?
『魔族の上位種である悪魔です。いえ、この場合魔族が悪魔の劣等種と表す方が適切ですね』
悪魔、か。悪魔って何かと交換で願い事叶えてくれるんじゃなかったっけ?
『ええ、ですがその場合は召喚者の命を代償にしばらくの間自由を得るというのがほとんどですね。悪魔は力を持てば持つほど力が制限されますから』
なんか矛盾してねぇか?
『いえ、制限されるのは自らではありません。魔族の上位互換の悪魔の中でも頂点に立つ魔神が制限しています』
うへぇ、まさかの神様かよ。
『いえ、魔神というのは呼称なので自由に呼んで貰って構いません。ですが力の大きさで表すなら我々と同じくらいあります』
でもそんな迷惑するなら殺っちゃえばよくね?神様1人と同じレベルならカズで掛かれば殺れるっしょ。もしくは殺すには特別な力が必要で〜みたいな?
『いえ、そのような関係ではありません。ただの利害の一致です』
利害の一致?魔物が生まれることが何か利益になるのか?俺の怒気は知らず知らずのうちに膨れ上がる。
『いえ、そちらではありません。悪魔の力を制限しているところです。柳也様は悪魔の力を誤認しています。現在の柳也様の力は人の世に置いては並外れた力ではあります。それにさらに成長するでしょう。ですが今の柳也様では下級魔族をナギ倒せる程度で、中級魔族と相対すれば直ぐに敗北をするでしょう。そしてその上に大級魔族、超級魔族、そして[至高魔天]と呼ばれる魔王の懐刀の魔族。そして魔王です。本来ならば魔王単体でこの世界は簡単に滅ぼせてしまうのです』
その力を制限してるのが魔神ってことか。
『その通りです。魔神は我々がいるところとは違い、魔界と呼ばれる悪魔の住まう場所におり、呑気に暮らしております。魔神は神とは名ばかりのただの悪魔ですので、下界に干渉することは容易なので力の制限もできるのですが、我々神は存在の位階が違うため、下界に干渉するだけでもかなりの影響を及ぼしてしまうのです』
うーん、めっちゃ簡単にまとめると、魔神は神様と違って簡単に力を使えるよってことね?
『はい、その通りです。魔神を倒すことは可能です。ですが魔神レベルの強者が育つことは今後ないでしょう。そのレベルの強者を育てると今後何百万年の月日が必要でしょう』
そうか、確かに利害の一致だな。というかその魔神が裏切ることは無いのか?
『はい、魔神とは[神約]を結んでいますし、そもそも魔神の性格上そんなことはしないでしょう。魔神の性格は極度の戦闘狂です。そして少しでも才のある者を見かけたら死ぬギリギリまでしごきます。そして限界が訪れたと分かると、すぐに解放します。その者は歴史上でも名を残しているはずです』
と言われてもこの世界の歴史知らないからなぁ。初代勇者とかじゃないよね?
『はい、初代勇者一行は柳也様同様に地球から召喚されています。これから勉強することになると思いますが、万人斬りと呼ばれたハリル、竜殺しのゴマージュ、海割の《うみわり》のマッサル、魔法王のシャリルです。どれも魔神が育てた人です』
うん、やっぱり聞いたことないな。
『それに魔神はとても楽観的ですし、魔界を抜け出して下界にも移動します』
はぁ!?それって危険なんじゃ······
『下界に来た当初は危険な現場も多数見られたので干渉にならないように調整することがありましたが、今は外科医での生活に慣れた様子で監視の目が減りましたよ』
監視の目って······まぁ、それだけ危険な人物ってことだな。というか、魔神がいて殺すことができないのも分かった。だがそれが魔王討伐に参加しないことにどう繋がるんだ?
『魔族は悪魔の劣等種であり、劣等種と差別化を図るために魔神が下界に追放したということになっています。しかし実情は世界のバランスを保つために[神約]で実行したことを行っているのです。それは魔物も同様です』
············理解した。人口が増え続けないようにってことだろ?
『いえ、それは副次的た効果にすぎません。人類は魔力を空気中にから吸収します。それは魔力支配でのスキルを持っている柳也様はよく分かっていると思います』
ああ、俺の体に新しく魔力が入る感覚のことなら分かっている。
『その魔力は酸素のように植物が光合成をして生まれた酸素のように”何か”が魔力を空気中に生成しています』
それが魔物って訳か。確かにこんな身近に魔法っていう便利なものが存在しているんだ。それを供給する魔力が無くなれば生活レベルが下がるのは必至。そんな急激な環境の変化でどれだけの人が不幸になり、死に行くのか。
『その通りです。なので例え魔物による被害が増えようと、街が滅ぼされようと、我々は魔物の供給を断つわけには行かないのです』
その気持ちは分かった。いや、その心をどれだけ抱えてきて、どれだけ辛かったのかは分かんないけど、意味は分かった。
『そして先程の話に戻りますが、魔族は悪魔の劣等種ですが、人間に比べれば遥かに強靭で、戦闘面でも優れている部分が多いです』
ふむふむ、では力が制御された魔族なら俺はどれだけ勝てる
『余裕で勝てるとなれば大魔族ですね。多少の傷を負うのなら超級魔族。命を捨てて戦うのなら[至高魔天]ですね』
だが回復魔法とかもあるんだろ?
『はい、ですので相手や柳也様が回復魔法などの手段がある前提ですので』
『そのような世界の仕組みを知っているのは魔神や我々神を除いてだと魔王と柳也様しかいません』
え?魔王は世襲制とかなのか?
『はい、魔王は世襲制で魔王の家計は魔族の中でも強力な個体が多いです。魔族は大体が家計の強さで強さが決まります。生まれが重視されます』
生まれがそのまま強さに繋がり、強さがその人の権利になるってことか。
『いえ、そこまでではありません。魔族にもそれぞれ暮らしがありますので。一々人間から奪っていると、いずれは報復されますし。どうしても食料が足りない場合は平和的交渉。または農村でも襲っていますね』
まぁ、どんな世界だってそんなもんだよな。日本だって土一揆とか一向一揆とか色々あったんだ。食事が少なくなれば、判断が鈍り、鈍った判断は、誤った行動を促すからな。日本のよりも力の差がはっきりしてるから蹂躙見たくなるだけだろ?
『ええ、農村には自警団と呼ばれるものもないですからね。都市部にしかありませんよ』
魔法があるから誤魔化されてるだけで、実際の文明レベルは低いんだな。まぁ、未開拓地域があるってだけで十分だが。
『ですが地球に比べて十分に広いですよ?大陸だって複数ありますし。面積だって比べ物になりません』
この星って球体だよな?
『ふふっ、どうでしょうか?それは自身の目で確かめてください』
うわぁ、煙に巻かれたなぁ。
『時間もなくなってきたので答えを聞きましょう。魔王討伐から外れていただけますか?』
どこまでのサポートが外れたって言うのか分からないが、俺自身は魔王討伐はしないよ。だけど魔王が迷惑をかけるならちゃんと分からせる。それでいいか?
『はい、今代の魔王はそのような軽率な行動はしない方なのでそのように言って頂ければ安心です。サポート仰っていましたが、魔都に入らなければ大丈夫です。ですので資金的な援助や武装や道具の支給も可能です』
まぁ、そこまで出来ればOKだな。神様もありがとうな
『いえ、これが仕事ですので』
それじゃぁな
そう言って神様からエリィに変わった。
『マスター、神様とどのような会話をしていたのですか?』
エリィは聞こえなかったのか?
『はい、この話は例えエリィでも話すことが出来ないからと言われましたので』
神様がそう言うってことは言わない方がいいんだろうな。
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読者の皆様はお気づきだと思いますが、『魔王を討伐してはならない理由』について結局のところ有耶無耶になっております。これは情報を書きすぎては今後の展開が予想出来てしまうと思ったので少し隠しました。今回の物語は会話文が多くて、戦闘描写もない面白みのない文章だと思いましたが、今後の話の展開のためにもこのような世界の核心に触れる話が必要だと思いかけせて頂きました。
ついでですが異世界ファンタジー週間にランクインしました。956位とランキングに入ったと名乗るのもおこがましいですが、通知からそのお知らせが入った時はとても驚きました。これからも読んでいただけると嬉しいです
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