第10話 ネタ(?)武器

アリスを部屋に取りに帰ると案の定アリスは怒っていた。


『信じられない!勇者が聖剣を置いていくなんて』


悪いと思ってるって。ただの訓練に聖剣を持っていっても意味ないだろ?


『それでも置いてくなんて信じられない!』


『まぁまぁ、アリスさんも落ち着いて』


『っ!あなたは誰?』


『マスターの補助をするエリィです』


『ふーん、私の名前はアリスよ』


仲良くてよろしいござんすね。さて、エリィ冒険者ギルドはどこにある。


『城の外に出て、次のエリアの貴族街の外にあります』


貴族街なんてのがあるんだな。身分差がはっきりしてんなぁ。


『それ程までに貴族と平民には差があるのです』


俺は貴族外を抜けてから防具屋に向かう。ここら辺はRPGの通りに武器と防具で別れてるな。どちらも扱う素材に違いはないだろうけど、作る過程が全く違うからな。


俺が入った防具屋はチェーン展開している活気のある店ではなく、地元で愛されている老舗の雰囲気を漂わせていた。


「客か」


カウンターの奥から声が聞こえる。随分と野太い声だな。


「鎧を見てもいいですか?」


「ああ、勝手にしろ。ただ値段は書いてある通りだ。そこから一銭も値下げはしねぇ」


値下げ交渉が一般的なのか?まぁ、少しでも安くいいものを買いたいとは思うが······俺の近辺になかったから新鮮だな。エリィ、今の俺の鑑定だとどれくらい見れる?


『名前と主材料、そして特殊効果ですね』


特殊効果?魔法の威力が上がる杖とか衝撃波が出せるようになるナックルとかか?


『そのようなものです。ですが中にはもっと極端な物まであります』


そうか。ま、そういうのを見つけるのも今後の楽しみだな。


俺は置いてある防具を片っ端から鑑定していく。


【鉄の鎧】

鉄で作られた鎧。

特殊効果 無し


【革の鎧】

リザードマンの革で作られた鎧

特殊効果 貫通攻撃軽減


【銀の胸当て】

銀で作られた胸当て

特殊効果 死者攻撃軽減


【竜の鎧】

竜の鱗で作られた鎧

特殊効果 対竜攻撃軽減


ふむ、俺が持っていたファンタジー防具のイメージが音を立ててら崩れていく······。竜の鎧って防具の中だと上位に位置するんじゃないのか!?特殊効果が竜からの攻撃を軽減するなんて、竜相手にしか効かないじゃないか!


「なあ、おっさん。どれもこれも今ひとつだぞ。おっさんの事だから奥の方にいい防具隠してんじゃねぇの?」


「ほう、若造め。店先にある防具で満足出来んか。それは少々目が肥えているか、それとも物の価値を正しく理解してないだけか」


「どっちでもない。俺はただ思ったことを言ってるだけだ。それにおっさんの実力でこの程度しか作れないって冗談がキツイぜ」


「そこまで言うか。いいだろう、取っておきを見せてやろう」


そう言っておっさんはを持って出てきた


「なんだそれは?」


「ふっ、やはりこの価値が分からんか」


俺はその言葉にカチンと来たので鑑定をしてみる。


自動盾オートシールド

魔石を元に作られた盾。

特殊効果 浮遊 自動防衛 個人認証


「なっ、特殊効果が3つ······」


「なんだ、鑑定の力に頼っておったのか。拍子抜けもいいとこじゃ。まぁ、鑑定で見たのなら分かるじゃろう。これはこの盾が自身の意思で所有者を守る。まぁ、儂も3台目をようやく完成させ#たところじゃ」


「ということは俺自身は命令を降す必要もなく、片手を塞ぐ必要も無いということか?」


「その通りじゃ。この盾は個人しか守れん。しかも契約来した相手だけじゃ」


俺に迷う余地などなかった。


「よし、いくらだ?」


「はん、若造が払える金額なわけなかろうて」


「でも言ってみろ。俺がどっかの貴族の血族かもな」


「若造のような護衛も連れ歩かん奔放な貴族がおったら儂だったらその性格を矯正しておるわ」


「話を逸らすな」


「材料費だけなら100万ペルじゃな。制作費を考えれば150万ペルじゃ」


「3台で450万か」


「どうした?値段に臆したか?」


そう言っておっさんは笑ってる。ガチでムカつくなこのじじぃ。俺はインフラのことも頭をよぎったが、中世にお金の量を計算しているやつが居ないだろうと高をくくり、金貨を4枚作り出す。それに加えて銀貨を50枚取り出し、


「これで450万ペルだ」


俺はおっさんの驚いた顔が見たかったんだが、おっさんは淡々と


「ほら」


と告げ450万ペルと交換で自動盾オートシールドを手渡す。


「これってどうやって登録するんだ?」


「なんじゃ、魔道具を使ったことがないのか?」


「ああ、まず魔道具のことすら今初めて知った」


「とんだ田舎から来たようじゃな。まぁいい。魔道具は魔物から取れる魔石などで作られる道具のことじゃ。普通の道具との違いは自身が流す魔力によって性能を発揮するところじゃ。この盾は所有者の設定に使っておるが、他にもものを冷やしたり温めたりするのもあるそうじゃが、儂は魔道具のことはそこまで詳しく知らん」


「え?ならその盾は?」


「知り合いの付与師に付与してもらっただけじゃ。魔道具の作り方は普通のと大して変わらん。ただ魔石があるかないかの違いだけじゃ」


「なら100万ペルもしないんじゃ······」


「この盾の素材は鑑定じゃ見抜けんのか?」


「魔石をもとに作られたってことしか」


「そうか。まぁ使った魔石も大概じゃったからな。それと比べたら素材も霞んで見えるか」


「ちなみになんの素材を?」


「鉱石の方は軽くて頑丈なミスリル。魔石の方は確かウルフロードじゃったかな?」


エリィ、ウルフロードは?


『ウルフロードは狼種の魔物の中でもトップに君臨します。他の狼種を統率するカリスマを持っていながら、的確な指示を出せるほどの知能。そして何より圧倒的な個の力を持ち備えています』


なるほどな。ファンタジーで定番のゴブリンやオーク、オーガのロードと比べたらどうだ?


『個の力ならゴブリンやオークに勝つことは出来ますが、深手を覚悟の上で辛勝です。オーガと戦ったならば確実に負けるでしょう。知能の面ならウルフロードが圧倒的です。集団としての力ならオーガといい勝負ですね。オーガの方が数が少ないのが条件です』


まぁ、基本的強い魔物程個体数は少ないだろうな。そうなったら人間も生存権が危うくなるし。


「はぁ、それならその材料費にも納得だ。だが盾の形はどうにかならなかったのか?」


そう、問題は盾の形なある。計3つあるのだが、1つ目は普通の円形の盾なのだが、2つ目はは剣のような十字架のような形の盾。1番酷い3つ目は厨二病全開の死神が持っていそうな大鎌のような盾。


「これはただの盾では無い。攻防両方を担えるのじゃ。若造は既に剣を持っておるようじゃが、もし魔物に囲まれたらどうする?いくら若造が強かったとしても、傷は負うじゃろ?」


「その前になんで俺が1人で戦う前提なんだ?」


「若造みたいなやつが誰かと群れて戦う風景を想像出来ん」


絶対にパーティー組んでこいつを見返そうと密かに決意しつつ、否定しきれない竜也なのであった(作者目線)


「これは自分から攻撃することの出来る武器じゃ。じゃが欠点もあっての。攻撃する時は明確な指示が必要となる。戦闘中に自分が戦っている最中に別の武器に指示をするなんて2


············エリィ


『私はマスターの一部ですので可能です。しかし言葉による指示ならば無理です』


「この指示は言葉じゃないと意味が無いのか?」


「いや、個人認証を済ませれば思考するだけで良い。だが3つあるならそれぞれに名前をつけるなりして個別に指示を出す必要がある」


「そういうのを買った後に言うのはズルいだろ」


「聞かれてないからの。じゃが今から返品することも可能じゃ。そしたら今受け取った450万ペルをそのまま返そう。さすがに戦った後に使い物にならないからって返品されるなら半分は頂くが」


「いや、その必要は無い。そのまま貰おう。それと他に鎧はないか?出来れば冒険者として見てもらえて、動きやすいのがいいのだが」


「そうか。なら騎士風のはイヤか。予算はどの程度じゃ?」


「············金貨5枚だ」


現在所持しているのは銀貨50枚と銅貨100枚なのだがこの店にちゃんとした鎧があるならそれが欲しい。あんなふざけたのでもあれだけ高価な材料を扱える程だ。もしかしたらという気持ちがある。


「そうか。そんなに金を持ってるのか。なら儂に依頼をするのはどうじゃ?」


「依頼?」


「ああ、そうじゃ。生憎じゃが今の儂が作った中で金貨5枚に相当するような防具はない。いや、金貨程の値打ちのものもない」


「え、竜の鱗の鎧もか?」


「そうだ。あれは地龍と呼ばれる竜の中でもかなり下の方だ。ウルフロードの方が10倍は強い」


本当か?


『10倍かどうかは別として地龍よりも圧倒的に強いです。地龍の戦闘スタイルは肉を切らせて骨を断つですが、ウルフロードはヒットアンドアウェイを用います。相手によってスタイルは変えますが一般的にはこうなっています。地龍は他の竜種よりも体が柔らかく、弱点が多いです。ウルフロードよりも少し硬い程度ですね』


そんなんで肉を切らせて骨を断つ戦法をよく使う気になれたな。


「あれはいくらなんだ?」


「銀貨90枚だったかの?家に置いてある鎧だとあれが1番じゃな。最近はあの盾を作る方が楽しくてな」


「それで金貨5枚だとどの程度の鎧ができる?」


「今流通している素材にもよる。金貨5枚あればかなりの素材を買うことが出来る。ワイバーンの鱗も買うことができるが、滅多に出回らない。貴重な素材は、なかなか取れないから貴重なんだ」


「ウルフロードとどっちが上だ?」


「ワイバーンは制空権があるからな。単純な力量だとウルフロードじゃが、空を飛んでいるからと言うだけで大抵はワイバーンに軍杯が上がる」


「鎧で動きやすいと考えると局所を守るのがいいか?それとも騎士の鎧の軽い形か?」


仕事となると雰囲気が変わる。できる人程その傾向にあるのは地球でもこっちでも同じか。


「騎士の鎧に近い形だな。だが冒険者とひと目でわかる格好がいい。別に汚くていいって言ってる訳じゃないぞ? 」


「それくらい分かっておる。ふむ、なら先に金貨3枚を渡せ。完成したら残りの2枚と交換じゃ」


「分かった」


俺はポケットから取り出すフリをして金貨3枚を作り出す。


「ふむ、では先に採寸をしておこう」


採寸を終えた俺におもむろに茶色のコートと胸当て、黒のズボンを渡してくる


「これは?」


「そんな服装で冒険者登録したところで小童どもに舐められるだけじゃ。若造が若く見えたとしても、服装だけでも合わせておけ」


俺はおっさんの好意を無駄にせずに、ありがたく受けとり、奥の部屋で着替える。そして誰もいなくなったそのまま冒険者ギルドに向かう子だった

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