第6話 ちょっとした駆け引き

俺らが食堂に着くと既に席に着いている生徒がほとんどだった。食堂の形もハリー○ッター見た感じまだ派閥の形成はできてないようだな。生徒会長もつるんでいた仲間とまだつるんでいるだけのようだな。


程なくして教師含めて全員が集まることとなった。

そして上座(誕生日席)に座っている王様が


「勇者様方のためにご馳走を用意した。各々楽しんで欲しい。それでは乾杯!」


王様が乾杯と言うがそれに合わせて言う人はゼロだった。俺は目の前の食べ物を鑑定する。


【オークのステーキ】

オークの肉が使われているステーキ


【ダッシュバードの丸焼き】

ダッシュバードの肉が使われている丸焼き


成果も芳しくないな。位も低いせいもあると思うが、1番はやっぱりレベル不足だな。レベルが上がったら毒の有無や品質なども分かるんだろうか?レベルを上げる方法も聞かないとな。使ってれば上がるならいいんだが、道具屋らが必要なら尚更金を稼がねばならないくなる。


昼食自体は直ぐに食べ終わった。すると王様が


「本日は訓練を休みとする。だが、明日以降は8時に朝食をここで取り、9時から12時まで訓練、12時から13時まで昼食、13時から18時まで訓練。18時から19時までが夕食、19時から21時までが入浴だ。入浴の時間は時間内ならいつでも良い。男湯、女湯手別れているから間違えないように」


そう言って王様は食堂から出ていった。


「さぁてと、俺らも引き上げますか」


俺は隣に座ってる唯と対面に座っている蓮と凛を連れて部屋に戻る。


「エミィ、王様に面会はできる?」


「っ、恐らくですが無理かと」


「だよねぇ。でも聞くだけ聞いてみてくれる?」


「はい、分かりました」


「あ、監視ならそこの3人にやらせとくから安心して行っておいで」


「いえ、信用していますので」


ケモ耳娘からそう言って貰えると嬉しいなぁ。信用してくれたらもふもふさせてくれないかなぁ。


「柳也······」


「こ、コホン。食堂で見た感じまだ派閥は形成されてなかったな。生徒会長が仲いいヤツとつるんでる程度だったな」


「静流センパイもいつも通りだったぞ」


「せ、先生の中にも変わった人はいませんでした」


「でも知らない女の人が生徒会長のこと見てたよ」


「本当か?どんな人だった?」


「えーっと、綺麗な金髪の人で綺麗な人だったよ」


「情報が少なすぎる······」


「あ、あと、緑色の目をしてたよ」


「金髪で緑の目か。······王女じゃないか?王様も金髪だったし。目の色は青だったけど母方の遺伝だと考えれば納得がいく」


「確かにな。でも王女サマみたいな大層な身分のお方が何故だ?」


「······分かんないな。この国の王位継承権を女性が持てるのだとしたら派閥争いに勇者を巻き込むつもりだろう。もしくは単純に一目惚れとか?」


「それは無いだろ!するなら柳也を推薦するぜ!」


「なんで俺なんだよ!」


「だって金持ちだったし、ゲーム上手いし、イケメンだし、リアルチートだし」


「異世界に来て札束は意味ないだろ。ゲームの文化もないし、イケメンではないし、リアルチートに関しては俺も同意だな」


「否定するなら全部しろや!」


「リューヤ様、陛下の許可がおりました。仲間の方々もご一緒しますか?」


「頼む」


「ではついてきてください」


俺らは部屋を出てエミィについて行く


「しっかし、この城は巨大迷宮みたいだよなぁ。全校生徒に一人一部屋割り振れるって」


「それもそうだが、これからの王様との会話は3人とも変に話さないでくれ。変なことを口走って相手に情報を与えたくない」


「分かったぜ。でも質問されたらどうするんだ?」


「その場合は答えて構わない。が、無駄に緊張する必要は無い。たとえ無礼があっても罪にはならないからな。こんかことできるのなんてなかなか無いんだ。思いっきりタメで話してやろうな」


俺がそう言うと緊張が解けたのか3人は柔らかい笑みを漏らす。逆にメイドの4人はどうなるかと内心ヒヤヒヤしていた。


───コンコンコン


「失礼します、陛下、リューヤ様御一行をお連れしました」


「4人を中へ。メイドは外で待機」


「了解しました」


俺らが中に入ると、王様は机に向かって執務をしていた。


「すまぬな、こちらの手が離せなくてな」


「気にすんな。こっちが時間取ってくれなんて無理言ったんだ。それくらい承知の上だ」


「では率直に内容を話してくれ」


「んじゃ言わせてもらう。今回の職業とスキルをメモした髪、俺にも見せて」


「却下だ」


即答された。そりゃそうだな


「理由は?」


「逆に問うがなぜ見たいのだ?見たところで何も良いことはないと思うが」


「王様も予想してんだろ?こんだけ大量に勇者を召喚すりゃ、いずれは好みで別れる。初めはそんな優しいもんだが、いずれは力の差が生まれ、いじめに繋がる。向こうみたいな精神的ないじめじゃなくて物理的ないじめだ。好みで別れた同士が対立し、派閥が生まれる。派閥の当主、いわば神輿に担ぎあげられるのは人望も必要だし実力が必要だ。日本の頃なら人望なんて聞けば分かったんだが、職業やらスキルやらが絡んでくると流石に分かんねぇ。その実力を今のうちに把握しておこうってことだ?」


「そうか。このような大規模な召喚は此度が初なのでそこまで頭が回らなかった。ふむ、確かにリューヤの言う通りだ。それでその情報に何を対価として差し出す?」


だな」


「貸し?」


「ああ、先に言っとくが俺ら4人は他の誰よりも強い。特に俺はな。現時点でここまで考えられるやつが勇者や国単位で考えてどこまでいるかな?」


「はははっ!自分を売り込んだか。面白い。ならもう1つ条件をつけよう。明日からの訓練。お前ら4人は騎士団の正規の訓練をしろ。そのふたつが条件だ。先に言うなら、騎士団の訓練は勇者が行う訓練の10倍は厳しいぞ」


「どうする?」


俺はみんなに聞く


「強くなれんなら上等だ!」


「ええ、その通りね」


「わ、私も賛成です」


「だそうだ。当然俺も賛成だ。さて、その名簿を手帳を見せてもらおうか」


「分かった。これが名簿だ」


そして渡されたのは─────────意味不明な記号が並ぶ表だった。


「どういうことだ?」


「確かにこれに記してあるよ。ただしでね」


確かにそうだ。相手の言語を話せるからって、読めるとは限らないんだ。


「クックック、解読に時間がかかるだろう?」


「汚ぇぞ!」


「そうよ!」


「ひ、卑怯です!」


「我はそんなこと一言も言っておらんぞ?」


「ああ、その通りだ。確かにそうは言ってない、だが、王様、そりゃ勘違いだぜ?」


「何?」


「俺のことを見くびったな」


この程度俺にできないわけがない!まずは並んだ順を思い出す。恐らく上から順に書かれているはずだ。そして名前の字と記号を照らし合わせる。いや、意外と簡単だな。に変わる文字が使われているだけで、そこまで変化がない。しかも感じなどの文化がない。これは勝った!


「············宮城亮平。職業、聖騎士。スキル、剣術、光属性魔法、回復魔法」


「何!?」


「姫野静流。職業、姫騎士。スキル、剣術、騎乗術、風属性魔法」


「まさかこの短時間で解読したとでも言うのか」


「ああ、その通りだ。日本語と同じような言語だったから助かったぜ。さらに俺から色々と搾り取ろうとしたんだろうが、残念だったな。次やるなら暗号でやりな。行くぞ」


ポカーンとしている3人を連れて部屋の扉に向かう。


「あ、そういえば、食堂にいる時に金髪で緑の目をした綺麗な女の子が生徒会長······亮平先輩のことを見てたぞ。なんで見てたかは知らんが、後継者争いに巻き込むなら、俺らは巻き込むなよ?」


俺は最後に釘を指してから部屋を出て行く。












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