第2話 勝利への条件
「二車単を当てればいいの?」
「そうじゃ。難しくないじゃろ?競輪が好きなお前には」
神様はそういうが、聞いたことも見たこともない選手の中から優勝者をいきなり当てろと言われると難しい。これは競輪のみならず、競馬、競艇、オートレースでも同じ。始めたその日から、いきなり当てられるほど優しいものでもないのだ。
「その封筒の中に二万円。スマホの競輪投票サイトに一万円がある。君には、今日の決勝戦で二車単を当ててもらおう。まあ、当てられなくても、最低限、優勝者を当てれば許してやろう」
「そうすれば、私のいた世界に帰れるの?」
「無論。約束は守る。軍資金、スマホ、スポーツ紙。それらのヒントで二車単を当てることを目指せ」
「・・・」
黙ってスポーツ紙を握りしめるアリサ。
「もしかして、まだ信じていないのか?だが、あとで試せばいい。自分が魔法を使えるのかどうかを。この世界には魔法使いも、魔法もない。君の家族、友人も存在していないぞ。一端の勝負師なら、逃げずに勝負しろ」
「わかった・・・」
強張った表情で答えるアリサ。
「なら、結構。立川競輪場は予定通りに開門する。中で車券を買うもよし。スマホを使うもよし。それは君次第じゃ」
口数少ないアリサに向かって話し続ける競輪の神様。
「あとでまた立川競輪場で会おう。答え合わせをせねばな。決勝戦は十六時三十分発走じゃ。十六時二十七分に君の答えを聞かせてもらう」
「つまり、私の予想ね・・・」
「そうじゃな。二車単の車券と、あと優勝するのは誰であるかを聞く」
どうやらうろたえている暇はないようだ。アリサは決心した。彼女の顔を見た神様は言う。
「うむ。健闘を祈るぞ」
「じゃあ、また―」
アリサが一瞬、下を向いたときだった。顔を上げたときには、既に競輪の神様は目の前から消えていた。
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