第6話 魔剣士と炎魔法のテスト
キリヤとディルの戦いから数日、二人は現在訓練場にて、炎魔法の実技テストを受けていた。
「【ファイア・ボール】」
生徒が撃った火の弾が遠くにある的に当たる。
「30点!」
そして、その魔法に点数を付けるのは炎魔法を教える教師。
この教師はキリヤたちの担任とは別であり、この学園ではそれぞれの魔法ごとに専門の教師がいる。
「【ファイア・ボール】」
「48点!」
「【ファイア・ボール】」
「20点!」
次々と生徒が魔法を発動させ的へと当てていくが、教師の採点は厳しく、50点を超える者も今のところ数人だけしかいない。
「次、ディルガス=ライデルト」
「俺の番か。兄貴、見ててくださいね!」
「ああ、がんばれよ〜」
キリヤはディルに適当な返事を返すが、対するディルはキリヤに良いところを見せようとやる気になっている。
「いくぞ、【ファイア・ボール】」
ディルが放った【ファイア・ボール】は他の生徒よりも大きく、速く的へと向かっていく。
「ふむ。……80点」
教師は的、もとい名簿を見ながらこれまでで一番高い点数を付ける。
「よし!どうですか兄貴!」
「あぁ、凄かったと思うぞ。点数もこれまでで一番だったしな」
ディルはキリヤのもとに戻り、教師は再び点数を付け始める。
「にしてもあの教師、どう考えても点数が低すぎるんじゃないか?」
ディルのテストが、終わったあとの数人も50点を超えるものは現れない。
「あぁ、それはあの教師が元魔法騎士団だからだと思いますよ」
「元魔法騎士?」
魔法騎士とは、その名のとおりこの国における騎士団であり、魔法主義の世界においては普通の騎士ではなく、強い魔法が使えるものこそが騎士となれる。
ちなみに、騎士になればそれなりの地位を得ることができ、下手な貴族よりも高い地位と金を得ることもできる。
「ええ。これはこの学園ではそこそこ有名な話なんですが、……あの教師どうも自分より地位が下の者たちを蔑んで騎士団内で嫌われてたらしいんです。それである時失態を起こしてしまい、誰にも庇ってもらえず失脚、その後にこの学園に来たって話があります」
「なるほど。なんか性格はこの前までのお前みたいだな」
キリヤが言うとディルは胸を抑えながら膝を付く。
「っ、さすが兄貴、耳に痛いことを。ですが、俺は兄貴のおかげで心を入れ替えましたからね。っと、それであいつはその時の腹いせに生徒に厳しく接してるらしいですよ」
「ふぅん。……でもお前は、高い点数もらってたよな?」
「それは俺の実力……と、言いたいところですが、その理由は俺が高位の貴族だからですね」
「と言うと?」
「あの教師、高位の貴族の生徒に高い点数を付けて、あとから贔屓してやった恩を返せって言ってくるらしいんです」
「つまり実力を見ていないと?」
「いえ、完全に実力を見てないわけじゃないんですよ、家柄が無くても50点超えてるのが実力のあるやつです。それでも他の教師が見ればもっと高い点数が付いてもおかしくはないんですが……」
「要するにあいつから高い点数を取るには地位と実力を持ってなきゃダメってことだな。あいつみたいに」
「え?」
キリヤは次にテストする生徒を見る。
「次は……フェルニーナ=フレイナ」
「はい」
フレイナは返事をし、的の前の前まで歩く。
「ああ、フレイナ嬢ですね。確かに、次期【炎帝】候補なら地位も実力も申し分ない」
フレイナは的の前に着くと、的を見据えて魔法を放つ。
「【ファイア・バード】」
フレイナが放った魔法は、鳥の形をした炎。それは、真っ直ぐと的へと飛んでいき的を燃やし壊す。
「さすがは【炎帝】候補、フレイナ家と言ったところだな。文句なしの100点だ」
フレイナはそんな評価されながらも、表情を変えることなく一礼をして、元の場所へ戻る。
「なるほど、……あれで100点なのか」
「兄貴、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。次は俺の番だな、行ってくる」
「はい、兄貴なら高得点間違いなしです!」
キリヤはディルの声援を背中に受けながら教師の元に歩いていく。
「次は……キリヤか。お前はテストするまでもないな0点だ」
「……まだ、見てもないのにずいぶんな評価だな」
「見るだと?魔法の使えない奴の何を見る?それとも手品でも見せてくれるのか?」
教師はキリヤをバカにしたように嗤う。
「あいにく手品はないが、これならどうだ?こい、魔剣『
ピュェェロ、という鳴き声とともに、何処からともなく、赤い鳥が現れる。
「『
キリヤが命じると、『不死鳥』の身が炎に包まれ、そのまま燃え尽き、灰となる。
「な、なんだ?いきなり何が?」
それを見ていた多くの生徒は、いきなり現れた鳥が、灰となったのを驚いてる。
そんな中、
「すこし、静かにしていてもらえるかしら?」
フレイナは、丁寧ながらも冷たい声で騒ぐ生徒を黙らせ、キリヤの行動を見ている。
そして数秒後、燃えた鳥の灰が再び燃えだし、新たな形を作る。
それこそ、
「……魔剣『
死して灰となり、その灰から再び生き返る、不死なる鳥の剣、
魔剣『
______
いきなり目の前で起こったことに、ポカンとなっていた教師だが、首を振り吾に戻る。
「な、なんだ。その剣は……」
「まぁ、細かいこと気にしないでくれ。それよりも、テストを始めよう。と、その前に確認なんだが……」
「確認だと?」
「なぁに、簡単な確認さ。さっきフレイナが放った魔法、あんたはあれに100点を付けた。要するに、あれと同じくらいのことが出来れば100点が貰えるってことだよな?」
「まぁ、そうなるな。……あれだけの魔法が使えればの話だがな!」
「そうか、それを聞けて安心したよ」
キリヤはもう聞くことはない言うかのように、教師から目を離し、代わりに遠くに並んでいる的に目を向ける。
「……不死鳥よ、全てを燃やし尽くせ『
キリヤは『
すると、『
ピュエロロロー!
と、本来聞こえるはずのない鳴き声が聞こえるようなほど、生きたような炎が的を焼き尽くし、的は無惨な灰となる。
「な?!あ……」
教師含め、その場にいるほぼ全員が口をポカンと開けてまさに、絶句している。
それもそのはず、キリヤが放った『
そんな、皆が唖然としてる中ただ一人キリヤは、
「先生。これで100点、貰えますよね?」
嗤いながらそう言った。
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