私の思い
この部屋にいるみんなに見守られながら、私は自分の思いを告げる。
「…お姉様、また多くの迷惑をかけるかもしれません。それに、一つ下の子供を養子にするなんて愚かだと、他の貴族たちに言われるかもしれません……だけど、だけど私は! それでも私はこれからもずっと……お姉様と一緒にいたいです!」
「アリシア!」
お姉様が感極まった声を上げ、近づいて来るが抱きつくことはない。だって、私は……ジャンの肩に担がれているのだから。
「ちょっとジャン! アリシアを下ろしてよ! 抱きつけないじゃない!」
「はいはい。お嬢、下ろしますよ」
ジャンの掛け声と共に、一人、笑いを堪える声が聞こえる。
「ククッ、まったくしまらねぇな」
レオス様の呟きにリオン様が答える。
「ふふっ、別にいいじゃないか。やっと二人とも正直に自分の気持ちを伝えられたのだから」
「それもそうだな」
二人とも好き勝手に言って。確かに私は自分の気持ちを押し殺したこともあったけど……
「アリシア!」
ジャンにゆっくり下ろしてもらい、お姉様に抱きつかれる。お姉様はもう二度と離さないと思っているのか、抱き締める力はいつもよりも強く、少し痛い。
けれど、この痛さがなによりも私のことを思ってくれていたと感じることができて、少し嬉しくも感じる。
そしてこの状況を楽しんでいる周りの人達……リオン様やサリア、ドーラに加えてジャンにも多くの迷惑をかけたし、助けて貰ったので、何も言えない。けれど、レオス様はなんというか……納得できない。
「…お姉様、ちょっと…」
「? どうしたの、アリシア?」
「ごめんなさい、少しレオス様にお礼が言いたいので行って来てもいいですか?」
「……わかった」
お姉様は渋々…本当に渋々といった感じで離してくれる。
「必ず戻って来ますから」
レオス様に言うことだけ言って、今度は私からお姉様に抱きつこう。
「んっ? どうした?」
そんなことを考えている間に、近づいて来た私を疑問に思ったレオス様が声をかけてくる。
私はそんなレオス様に微笑みかけ、両手でレオス様の手を取り、胸の位置まで持ち上げ、見上げる。
「なっ、なにを」
「…レオス様、本日は本当にありがとうございます。お姉様とは一緒にいたいけれど、もう一度家族として関わることを怯えていた私に、レオス様の言葉はとても後押しになりました」
「あ、ああ」
「ですので、お礼を言わせてください。ありがとうございました。お・と・う・さ・ま」
「なっ! お、お前!」
「ふふっ、それでは私はお姉様の元に戻りますね」
「お前! ちょっと待て!」
「……レオス、ちょっと話をしようか」
「なっ、リオン、お前まで! さっきの全部見てただろう! 俺からしたんじゃねぇ!」
「別にどっちからとかはいいんだ。結果的に手を握ったんだろう?」
「なっ! 不可抗力だ!」
「少し部屋の外に行こうか。サリアとドーラもついて来てくれ」
「「はい」」
リオン様がレオス様を連れて部屋の外に出る。その際、リオン様がこちらを見て、笑っているように見えた。気のせいかな? けど、今はそんなことより――
「お姉様、ただいま!」
さっきまでの茶番を座って見ていたお姉様に抱きつく。
「おかえり。けれど、あまりレオ様をいじめないであげてね」
「……考えておきます」
「もうっ、それって止めるつもりないでしょ? まあ、アリシアとレオ様が仲が良いのはいいことなんだけど…」
お姉様は、アレが仲が良いということなんでしょうか? 少なくともレオス様にとってはそうでないと思うのですが…
やっぱりお姉様は他の人よりも抜けているような……
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