【完結】転生者のお姉様は自分を悪役令嬢と言い張るのですが…どう考えても悪役は私です

話したいこと

目を開けると、私の前にはエヴァンス公爵家から推薦されてこの家に来たドーラさんがいた。

「アリシア様。お帰りなさいませ。このような出迎えをしてしまい申し訳ありません」

「ドーラさん、どうしてこんなやつに頭を下げるの「黙りなさい！」…」

　どうやら、この家でも一目置かれているみたい。

「ドーラさん、ありがとう。エヴァンス公爵からあなたの事を聞いたわ。私の護衛だったのね。ありがとう」

「エヴァンス公爵から？いえ、お礼を言われるようなことではありません。それに、こうして駆けつけるのも遅れてしまう始末ですし…」

　言い淀んだってことは、彼女もリオン様関係か…まったく、いつも守ってくださるのですね、あの方は…

「良いのよ。彼女たちの言っていることは本当のことなのだから、それに、父も動いたのでしょう？それで捕らえられた」

「…はい」

「そう。ふふっ、父はもう捕らえられた。そしてシェリアは私のお人形。これで、この家で一番偉いのはわた…痛い痛い！」

　急に頭を強く撫で付けられるが、とても痛い。頭を抑えながら後ろを見上げるとジャンがいた。

「すまねぇなお嬢。我慢できなくて、ついやってしまった。だが、お嬢が無事に帰ってきてくれて嬉しいぜ」

「ジャン！今はそんな時ではないでしょう！？」

　ついって、今はそんな和やかにする時じゃなくて、私も父たちと同じように閉じ込めるべきでしょう！？

「お嬢がいつものように悪役ぶろうとしているから止めただけだろう？なんだそれは、流行っているのか？」

「はやっ、そんなんじゃなくて、私はただ「アリシアー！」グフっ」

　悪役ぶるとか、そんな話じゃない。実際私は悪役なのだし、決して流行っているわけでは…

　今度は前からお姉様が私の名前を叫びながら突っ込んできた。今絶対変な声出た！それに、お姉様はもっと淑女らしくしてください！

　もう！どうして私の計画を最後までさせてくれないのですか！？

　ここで、みんなに嫌われれば、別れる時に私が悲しくならずに済むのに、どうして…これが私にとっての罰なのですか…

　数人にでも、この家でこんな風に温かくされたら、別れが辛くなるじゃ…ないですか…

「…お姉様、放して貰っても良いですか？」

「だって、昨日帰ってくると思っていたのに帰ってこなかったんだもん。何かあったのか心配だったんだから！」

「それは…」

「もしかして、リオン様と何かあった？」

　ふと、今朝のことを思い出し、顔が赤くなるのがわかる。

「へぇ〜、何があったのか詳しく聞きたいな？」

「お姉様が想像していることは何もありません！！ただ、お姉様と似たようなことをされただけで…あっ」

「なるほど、私と似たようなことで、朝までってことは一緒にベッドで「お姉様！！」分かったよ〜」

「お、お嬢様、どうして、そんな人と仲良く…その娘はお嬢様のことをお、お人形と呼んで、幽閉していたんですよ！？」

　私を囲んでいた侍女の内の一人が当然の疑問を投げ掛ける。だけど、お姉様はそんな疑問がわからないかのように答える。

「えっ、あなたたちは私がアリシアに虐待されていたと思う？それに、私の監視はマリアよ？新しく入って来た人たちはわからないけれど、あなたたちはマリアのことを知っているでしょう？」

「それは…」

「それに、アリシアたちが食事をしている間に、マリアが食事を運んできてくれているのも知っているでしょう？あの男たちがそんなことをしてくれたと思う？」

「「「…………」」」

「お姉様、そのぐらいで、みんなはお姉様のことをとても心配していたのです。私のことは良いですから。それよりも、父と母はどこにいるのかご存知ですか？」

「それは…」

　言い淀み、ジャンのことを見る。体格的に父たちを運べるのはジャンや騎士たちしかいないか。

「ジャン、父たちを出そうとは思っていないわ。少し話したいことがあるの。お願い」

「…俺も一緒にいますけど、それでも良いなら」

「ええ、けど面白いものなんて何もないわよ？それでも？」

「それでもです」

「分かった。案内して」

　ただ、昨日知ったことをちゃんと二人の言葉で聞きたい。特に、お母さんから。

　私はまだ期待しちゃっているのかな？