第6話 感謝の笑顔

「あれ……」


 気がつくと那月の前に見覚えのある天井があった。


 そのまま周囲を見回すと、玄関、ソファー、テーブル、テレビではない四十インチのモニターがあった。


 どれも那月が日常で使っている物だ。


 あらためてここが自分の居住空間、家であることが分かった。


 そして自分が衣神いしんの選んだピンクのパジャマを着てベッドに寝ていることも。


「気がつきましたか」


 そう声をかけてきたのは惣神そうしんだった。


「あ、センセー、おはよう」


 愛称を使いながら起き上がる那月。


「気分はどうだい?」


「別に、何ともない」


 銃神じゅうしんの問いかけに、那月は小さく答えた。


「何か飲み物のを用意しまッスか?」


「それじゃあ、お湯」


「了解でッス」


 そう言うと宅神たくしんはベッドの横にあるサイドテーブルに、白湯が入った那月のお気に入りマグカップを出現させた。


「ありがとう」


 ゆっくり手に持ち、那月は静かに口へ運んだ。


 適温の白湯が体内にしみこんでいく。


「ふう……」


 幸せの息をはく那月。


「その様子なら大丈夫ね」


「ガーッハハハ、那月は一日寝てれば何でも回復する」


「とりあえず安心した。稼いだはいいが、無理をした形だったからな」


 衣神、武神ぶしん商神しょうしんが、ほっとした声で言った。


 しかし、商神の言葉で那月は思い出し、落ち込んだ表情になった。


「私……、マヨちゃんになったんだ……」


 那月の言うマヨとは魔揺まようのことであり、魔力の以上流出とその状態をさす。


「魔力は安定したが、身体はまだ疲れているだろう。いまは休め」


 クールながらも温かさを感じる声。


「うん、そうする」


 自分を気遣う呪神じゅしんに、那月は素直に答えた。


「何も慌てることはありませんからね」


「そのとおり」


「ガーッハハハ、動くだけが全てではない」


「もう少し落ちつきましたら美味しいものを用意しまッス」


「まずは元気の回復」


「心と身体からだ、両方あって資本だ。どちらかがかけても全力は出せねえ。休むときは休む、だな」


 他の神も気持ちは同じ。


「みんな、ありがとう」


 那月は感謝の笑顔を見せた。

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