第3話

長い牙や巨体を持つ仲間もやられたってことは、よっぽど強い奴なんだろうな。なんの取り柄もない俺はきっと、かなわない。


……けど、けど、なにかせずにいられない。


ここで何もせず逃げるのは嫌だ。


 俺は怠け者だ。皆が働いている昼間にはぐーすか寝てるような奴だ。夜、一人で起きてごそごそ動き回って、そのへんに落ちてる果実を拾い食いしたりして、生き延びている。でも、その世界は俺以外のすべてが寝静まり、ただただ、静寂が広がっている。


夜の間に誰も気づかないような秘密基地を作ったり、たまに仲間が寝ているところに行きあって寝顔を見たりすると、平和だな、なんて嬉しくなっちまう。 


俺は、この世界が好きなんだ。


 この世界を滅ぼそうとする、魔物。


どんなやつだ?怖い。怖いよ。でも、仲間を殺した。俺達の世界を奪おうとしているような奴。どんな奴でも許せねえ。


 俺は城に忍び込んだ。魔物の部下らしい見張りの眷属は居眠りこいている。俺は城の中心部に進む。今は闇が最も濃い時だ。俺の力が全開になる時間。俺の目にはすべてが映る。

俺以外の生きとし生ける者は明かりがないと何も見えない、漆黒の闇だ。


 俺は王座の間の扉を、音が出ないようそっと、開けてみる。

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