武蔵野ドラゴン~2分で読める物語

@mikotofumino

第1話

 俺は夜、動く。


 昼間は住みかでじっとしている。眠っていたり、ぼんやりしていたり。


 反対に、俺の仲間たちはよく動き回る。この武蔵野国の朝から日が沈むまで狩りをしたり、草原を駆け回ったり。

雨のときも、晴れのときも。


まっこと健康的である。


 鳥の羽音や、さえずる声。風のそよぐ音、落ち葉を踏みしだく音。

藪から飛び出し、顔を見合わせて挨拶する。

仲間の楽しそうな声が、俺の寝床にも響いてくる。


 それでも、俺は起き上がらない。

俺ほどの怠け者はいないのだ。


 今日も今日とて、俺が寝ている間に皆は活動している。


平和だなあ。


 ある夜のことだ。


 俺が目覚めた時、仲間たちからの手紙が、枕元におかれているのに気づいた。

書きなぐったような文字だ。


「魔物が襲ってきて、ほとんど殺された」


「俺たちは逃げる。お前も目覚めたら身を隠せ」


「魔物は城を占拠したわ。できるだけ遠くに逃げて」

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