第7話

 僕の背後からくる気配、その気配は蛆虫をもっていかせた怪人だ。赤のメッシュがはいった前髪の怪人が現れ、僕の背後で停止した。横目を向けて、僕に一礼。その後、耳元まで顔を近づけてきた。手で囲いをつくって告げられた。








「一匹成虫化いたしました」








「ありがとう」








 小声で告げ、怪人はまた一礼。離れていこうとする。その姿を僕は手のジェスチャーだけで引き留めた。直接生み出した怪人は僕の命令に忠実だ。僕が気に入った人間に対して好意的に接するし、敵対したものに対しても同じ感情を抱く。








 呼び止められた怪人が指示を待っていたため、命じた。冒険者たちに向けていた嘲笑をやめ、親睦による笑みを浮かべた。自然な形のものだ。












「外回りしている子と近くにいる子を連れてきて、他の地域の境界線の子は連れてこなくていい。すぐ来れる子だけをつれてきてね。休憩中の子がいれば食事、睡眠以外であれば連れてきてほしい。その場合良い子いい子してあげるから無理してでも連れてきてね」








「はっ」








 敬礼をし、女性型怪人は僕の指示を受けて行動を開始した。すたすたと急いで去る怪人の背を気配で感じた。早歩きだ。豪邸は走ってはいけない。院長の定めたルールだ。それを破るのは僕でもできないし、怪人でもできない。先ほどの凶悪そうな男の怪人、目の前の怪人は特殊事項として見なかったことにした。








 基本的に豪邸のルールは院長が定める。








 院長が責任を負う以上、そのルールに逆らうことは許されない。僕が逆らうと子供もルールを無視する。いくら院長が子供を面倒見るといった我儘であっても、役割は果たしてる。それはさすがにまずいのだ。食料と水と家を与えている以上、全部従うことを要求しても、格好が悪いだけだ。
















「さあ、どうする?君たち!!戦いでもするかな?早くしないと僕たちの仲間が来るよ?君たちは動けなくても僕たちは関係ないからね。冒険者としても一流だとしても、東京のルールを用いたら勝てないよ。地方ルールで戦うからね。地方ルールは簡単。生き残ればいい。それだけさ」












 僕は迎えるように手を広げた。嘲笑を浮かべ、眼孔をもって奴らを見下す。その言葉に凶悪そうな怪人が剣を構え、通路の奥の令嬢の怪人も剣を構えた。幹部二匹が剣を構え、視線に殺気がともる。








 空気が冷たくなっていく。








 Bランク怪人の殺気、Cランク怪人の殺気を前に冒険者たちは余裕を消した。冒険者と怪人の差は離れすぎている。ヒーローのランクと怪人のランクは一致している。魔法少女と怪人のランクも一致している。だが冒険者のランクと怪人のランクは非常に離れている。冒険者はあくまでただの人間が異能の力を手にしただけのもの。経験をつみ魔力などを手に入れて強くなったとしても、元が元。怪人と比べたら大したことはない。








 人類は化け物に勝てない。








 この孤児院を守る化物は見た目が人間なだけだ。








 その生命力の強さ、生物としての格が違う。








 もし人間がこの怪人たちに恐怖を与えるなら、それは院長だろう。僕が気に入っている。また怪人も気に入っている。








 この聖域は院長だけのものだ。








 この孤児院のルールは子供に武器を構えてはいけない。子供を睨んではいけないだ。だからそのルールは適用している。冒険者たちが殺気を飛ばさないのはそれで戦争が始まるからだ。








 もし子供に殺気を飛ばせば殺す。








 院長が責任を負っている環境での狼藉は殺す。












 大剣持ちの冒険者ですら飛ばした殺気を消している。殺気を飛ばした瞬間、怪人が殺気を飛ばし返すからだ。怪人にとって僕への殺気も許されない。








 商人は僕を無言で凝視している。








「あっはっはっは。見てみなよ。あの偉そうな商人や冒険者が見下してたやつに馬鹿にされている。これだからたまらないよね。ざまぁってやつだよね」








 僕は腹の底から笑った。高まる感情を吐き出し、意地悪い表情を浮かべた。僕の表情の変化に高まる緊張。聖職者は掌を掲げ、魔法職の男は錫杖を上に掲げ前方、後方を交互に関し。シーフは笑みをやめて短剣を手にし令嬢の怪人へ向き直った。大剣持ちは僕と凶悪そうな男の怪人を警戒。








 この緊張は長く続かない。








 院長室の扉が勢いよく開いた。その音の大きさに一瞬気を取られた僕たち。本来なら部外者の乱入にも気を取られるわけにはいかない。だが冒険者にとって敵地である以上、警戒のため確認をしないといけない。僕も院長室の扉が開いたことで、ここの責任者が動いたことを理解した。












 ドアから顔を出す形で院長が姿を現した。ドアのふちに置いた、かさかさの手。人差し指に透明テープがまかれているし、そこが赤く変色していた。年頃の少女がするには荒れていた。赤ぎれがいくつかあり、それでいて僕たちを睨みつける大きな瞳。しわ一つない若さを見せ、幼さもまだ残す容姿。首筋まで伸びた髪をゴムでまとめたポニーテール。ドアから通路に立つ際の身長は平均より低い。












 腰に両手を置き、令嬢怪人を睨み、一瞬殺気が乱れる。冒険者を睨みつけ、空気を乱す。凶悪そうな怪人を睨みつけ、戸惑った様子を作る怪人。








 最後に僕を睨みつけた。でも僕は態度を改めない。








 この場にいる全員に院長が指をさす。クリアテープで傷の処置した指をだ。












「ここを血で汚す気なの!戦場じゃないから!!殺し合いなら外でやって!!」








 それに対し、真っ先に反論したのが令嬢の怪人だった。ロングソードを左手にもち、空いた手をおそるおそる上げた。








 院長はそれを見つけ、どうぞと促している。












「奴らが悪いと思うのですが?」








「知ってるけど、そうじゃない。いくらお客様が悪くても、貴方たちが悪くなくても、だめなものはだめ。普通に家で武器を構えて、殺しあうやつがどうかしてる!常識が通じない世の中だけど、常識をすてちゃダメ。子供たちに地獄を見せるわけにはいかないでしょうが!」








 院長が睨み、令嬢は沈黙。だが左手のロングソードは構えたままだ。されど令嬢の怪人は院長の前へ位置を移動していた。話し合いの中での移動、だが院長は黙って見逃してた。この状況を瞬時に理解し、自分がどういう立場かを判断。












 それでいて戦闘を止めさせた。同時に令嬢が自身を守るため動くのを黙認。自分が人質になる可能性がある。人質になられたら僕たち不利だしね。僕たちの立場を優先し、なおかつ戦場になるのを阻止したわけだ。












 僕は大きく拍手した。








「さすがは院長。こいつらが全部悪い。僕たちはこんなことをしたくなかった。でもしないと殺されちゃうんだよ。仕方なくだよ。こいつらが僕たちを馬鹿にして、いじめてくるからね、仕方なくだ」












 キッと睨みつける院長の眼光に僕は肩をすくめた。飄々とした態度で挑む僕に大きくため息をつく責任者。












「とにかくここは戦場じゃないから、やるなら外。お客様もお帰りください。あたしが責任者です。ここのルールはあたしが決める。誰であっても、逆らうことは許さない。お客様とて例外はないから」












 この場の空気は院長が持って行った。この豪邸もとい孤児院は、院長のルールが最優先だ。だから僕は指を鳴らす。すると二人の怪人は剣を収めた。












「ほら、僕たちは仲良しこよしだよ。このお客様と今仲良くなろうとしてる」








「はぁ」








 大きくため息をつく院長。








 僕は冒険者たちに目を向けた。嘲笑は見せているし、冷めた目を向けた。僕の視線に耐えれないのか、大剣もち以外の冒険者が目線を逸らす。商人は僕を凝視しているだけだ。どういう立場なのかを計算しているのかも。












「院長の言葉が聞こえないのかな?ここの責任者の言葉は絶対だよ。僕たちでもそう、君たちもそうだ。ルールを破るなら、本気でどうなるかわかるよね?」












 冷酷さを増す僕の視線が、冒険者たちをとどめる。互いに顔を見て、場を見渡し、己の武器をしまった。戦闘する空気ではないが、警戒の気配はまだ残ってる。
















 脅迫を、院長は額に手をあてつつ、黙認した。








 院長が手をしっしと振った。








「そういうことだから、帰って」








 そういって院長は院長室に戻った。












 僕は道を開けた。凶悪そうな怪人も合わせた。ただ僕の前に立って、護衛の任をしていた。








 冒険者が動き出す。外へと移動する一行が、僕たちの前を通りすぎていく。そのさい商人が僕を見て、薄く笑った。見下すものではなく、まるで騙されたといった再認識のものだ。聖職者が僕の護衛の怪人に一瞥し、びくりと体を震わせた。魔法使いの男は柔らかい表情のままだ。シーフは護衛の怪人と僕を警戒し、油断も見せない。








 大剣もちはその場で停止。








 護衛をはさんで僕たちの視線が合わさった。そうなると先行する冒険者たちも動きを止めて、僕たちを見た。大剣持ちが動きを止めたのを気配で感じて、合わせたのだろう。












「俺の目に狂いはなかった」








「十分、狂ってるよ、おじさん相手に警戒しすぎさ」








 それだけで、大剣持ちは動き出した。動く気配をみて、冒険者一行も再び動き出す。だが動いてなお、大剣持ちは口開く。












「この孤児院の武力は異常だ。この町の規模に見合ってない。過剰だ」








「生き残ってきただけだよ」












「この町には人がいない。強力な人間のほうが目に付くほどだ」








 僕を横目でにらむ男に対し、飄々とした態度は崩さない。












「強いやつしか生き残れない。今の東京と一緒だよ。元気で人生を謳歌できるほどの強い人たちばっかりじゃないか」








 冒険者たちが外へ出る。空いた入り口の戸の前で大剣持ちを待つ仲間たち。












「目につくのが、そういう奴らなだけだ。都合がよいところばかり見ても、貧困は確かにある。弱者を受け入れないやつの考えだ」












「それと一緒だよ。人口が少ないけど、強いやつしか見ないのも、君がそういう頭をしてるってことだよ」








 大剣持ちは僕に眼光を飛ばし、僕もまた飛ばした。








 そして出ていく寸前。












「俺たちはこの町で一晩を過ごす。いい場所はないか?」












「それならこの先の信号を左に曲がって、古河市方面にいくといい。途中大きな十字路があるから右に曲がると途中に農道がある。その道の先に集落がある。そこは比較的安全だ。東京と比べたら何もかも劣るけど、一生懸命弱者が生きてるから、見てきなよ」












「わかった」








 そうして戸が閉められた。そして数分後、赤メッシュの怪人が仲間を引き連れて戻ってきた。








「ごめん、もう終わった」








「ま、間に合いませんでした」








 他の仲間たちも、赤メッシュの怪人も愕然とし、落ち込んでいた。せっかく集めてきてくれたのに、役割をあてられなかった。また落ち込む姿をみて、仕方ない。僕から歩みより全員の頭を撫でた。








「せっかく来てくれたのに、ごめんね」








 おっさんに頭を撫でられて喜ぶ怪人たち。一体ずつ全員平等に撫でた。男性型怪人も女性型怪人も頭を撫でられるのが好きなの面白い。でもいいんだろうか、おっさんだよ。君たち人間としてみたら容姿のレベル高く作ってあるんだ。












 怪人を引き戻したのも何なので、一応警戒のため配置しておくことにした。戻ってきた怪人の数は7体。休憩中の子はいたため、時間をこの分伸ばして再休憩させた。この屋敷に滞在するDランク怪人を2体から3体に変更。庭の監視も含めた数だ。








 周囲を警戒する怪人を3体追加。








 あとは休憩と予備兵力とした。












「武力が過剰か。冒険者にとってそう見えるんだね」












「だからこそ、どの連中もこの町に手出しはできぬ」












 手を出せば絶対報復。その根源を生かすのは周囲より強い武力がなせること。Bランク怪人がいて、Cランク怪人がいて、Dランク怪人が20体。他にも色々防衛には手を加えている。次にパンプキン侵攻ほどの武力が来ても、前回よりは容易に撃退できるだろう。












「できるうちにDランク怪人以上を増やしたいね、40体ほどまでは作成したい」












「2体作成するほどの魔石はそろっておりまぞ。もし作成するならば護衛はお任せを」












 大きな悪の組織が怪人を一体作る期間が一か月。中小の悪の組織が怪人を一体作るのに半年。ティターが怪人を作るのに10日付近。僕が一体つくるのに4日付近。ただし僕もティターも魔力を大量に消費する。3つの魔石を1つに結合してからの作成だ。また結合した場合、鮮度という価値が生まれる。魂の寿命は18時間。作ってからすぐ怪人を生まなければいけない。それ以降は強力な魔石になるだけだ。








 怪人を作り出せば僕でも魔力が切れかける。ティターと僕の魔力総数は実は似た者どおし、僕のほうが多いぐらい。そのためティターと僕は怪人を作るタイミングを考えている。周囲の問題ごとがないかどうかも含めてだ。4日間が僕、10日がティター、この日数僕たちは無防備だ。








 それよりコストもリスクも少ないのが魔獣作成だ。








 魔獣作成の場合、素材が魔石と違うため条件が違う。








 ある程度作り置きができて、魂の寿命の期間が長い。魔結晶の性質は、魂保存に適している。大体2日ほどは魂が魔結晶の中に閉じ込めれる。それを使って怪人の遺体を食わせる蛆虫を作成するのだ。












「今はいいや。変なお客さんがいるからね。あいつらが帰って周辺の安全を確認次第作ろう。そのときは4日ほど君たちに任せきりになるからよろしくね」












「はっ」








 怪人に任せて、豪邸を後にしようとした。








 その前に僕は先ほどの子供の部屋に戻った。ノックを一度してから入る。反応は待たない。子供が先ほどの位置で辛気臭さが増していた。院長が東京へいくかどうかをまだ心配しているようだ。また通路の問題は聞こえていないようだった。たぶん怪人あたりが防音の魔法でもかけたかな。この気配りは令嬢の怪人の仕業だろう












 僕は堂々と入り、テーブルの前に立った。












「廊下に落とし物があったんだよ。あとで院長に渡しといて」








 そして僕は懐から袋を出し、テーブルに置いた。ビニール袋ががさがさなって中身が見える。












「保湿クリームと絆創膏だ。廊下に落としてあったからきっと君たちのものでしょ?」








 その袋から保湿クリームを手にとって、正座をする男子に向けた。その男の子は僕をじぃっと見て、微笑を浮かべた。








「院長のため?」








 首をかしげつつ、ほほえましいものを見る目だった。辛気臭い空気の中での小さな明るさ。院長の手は乾燥しており、赤切れができていた。そのためのクリームだろうって理解しているようだった。








 僕の手から両手でとった。












「落ちてた」








 その表情に少し居心地が悪くなった僕。だからか少し早口になっていた。












「落ちてた。院長のだろうね」








 おじさんは子供の希望に弱い。また袋から絆創膏の箱を取り、壁際の子の足元近くに投げた。放物線を描きつつ、落下した。ただ会話を聞いていたのか、壁際の子も微笑を僕に向けていた。












「落ちてた」








 僕は頑固としていいはった。








「・・・絆創膏、院長怪我してた・・・院長のため」








 壁際の子が僕を見上げ、口を開きかけた。








「違う」








 断固として否定。僕はそういう奴じゃない。








 僕は何もしないのだ。手助けも協力も一切しない。子供がどうなろうと知ったことではない。院長が倒れたとしても助ける気はない。








 要件はなくなった。子供から目をそらした。












「お客様は帰った。絶対とはいわないけど、まあ院長が東京に行くとしても遊びぐらいだよ。ずっとは東京にいるような人じゃない、安心しなよ」








 口調がぶっきらぼうになる僕。もう子供たちに背を向けていた。








 退室する際、子供が僕と目があった。








 微笑まれた。












「院長が心配なんだったら早く渡しにいきな」








 扉を急いで閉めた。若干口調が強くなってしまった。子供相手に何をむきになるのか。僕は他人が嫌いだし、子供も好きじゃない。だが少なくても無駄に心配する必要もない。院長がいなくなる心配より、自分が生きる心配をすべきだろう。








 扉の向こうから聞こえた声。












「俺たちが院長と会いやすくしてくれたのか?」








「たぶん」












 この言葉は聞こえないようにした。覚えていないし、記録もない。
















「昔はこうじゃなかったのに、院長がうつった」








 昔の僕は間違いなく、こんな配慮はしなかった。




















 そして夜になった。








 深淵が世界を包み、夜空に浮かぶ満月が光源となってあたりに満ちていく。街灯もない世界に僕は十字路で立っていた。魔法少女の姿でだ。黒のドレスにスカートの下にスパッツ。頭に灰色のくすんだ王冠をのせている格好。








 腕を組み、その方向を睨みつけていた。








 人影が農道を歩いてくる。それは農道から出てきて、県道の中心を進み近づいてきた。人影が徐々に姿を現す。満月の光が雲にかくれ、一瞬の暗闇が訪れた。だが人影は近づいてくるし、僕はそれを見てにやりと笑みを浮かべた。
















「やあ、冒険者」








 僕が片手をあげれば、相手も片手をあげた。








「魔法少女か」












 雲が流れて、やがて満月の光が下を導く。姿を現したのは赤髪の男だ。プレートメイルを胸部につけ、各関節に金属の当ての男。背負っていた大剣は僕と出会ってすぐ引き抜いていた。












 金属の輝きが夜に目立つ。大剣持ちの目線は頭上の灰色のくすんだ王冠に向かれていた。












「うん」








「悪の誰もがお前の名を出す。敵対したくない魔法少女。悪よりも悪。地獄から現れた腐敗の王。Bランクの上級非道魔法少女。どのヒーローも魔法少女もお前よりは悪名を持たないだろう。恐れを知らない怪人を追い込む天才」












 指を自分の口先に持っていき、少し前かがみになった。








 大剣の切っ先が僕に向けられた。








「腐敗した埃、ロッテンダスト」












 この町の武力を過剰に気にした男。大剣使いの冒険者。口端を大きくゆがめた僕は相手を指さした。








「Aランク冒険者、魔獣殺し、三船十四郎」












 次期Sランク冒険者と名高い男が相手だった。単体ではAランクであり、パーティーの力量なども強い。この国の中で個人冒険者10位以内には入る強者だ。パーティーのランキングでは5位以内の実力もある。








「ヒーロー、魔法少女、冒険者をまとめ、魔獣大侵攻から野田市を守った男。坂東市の悪、パンプキンによる魔獣大侵攻によって野田市は陥落寸前と聞いたよ。よく守れたね」








「その暴走を防いだのは皆の力。俺は意見をまとめただけだ。それに知ってるぞ。お前も坂東市に進撃し、魔獣を腐敗させていたのはな。ただお前はそれを隠蔽していた」












 僕はおどけた態度をみせてごまかした。








「魔獣を防ぎ、そのうち数が減っていった。それで俺たちは反撃に出た。動ける戦力を集め、坂東市の悪パンプキンに対し攻め込んだ。だが肝心の魔獣がいない。俺たちが決死の覚悟で反撃をしたときには終わっていたんだ。坂東市内にある燃えた魔獣の死体の数々。大量の死体が魔結晶だけ抜かれて死んでいた」












「それだけで僕?」












「一部だけ腐敗した魔獣がいたんだ。その場所を調べたら強力な腐敗の魔力が土地に染みついていた。聖職者が対腐敗の魔法を何重にもかけて、ようやく近寄れて調べれた。だが腐敗した魔獣の死体は誰も触れなかった。誰もその魔力に触れられなかった。近寄っただけで対腐敗の魔法が限界を超えていたからだ」








 呼吸をはさみ三坂はつづけた。












「燃えた死体も鑑識に回した。そしたら腐敗が起きてから、炎上していることがわかった」












 僕がパンプキンに嫌がらせでやったことだ。触手が地表に出て監視をする以上、そこに腐敗の魔力をばらまけば、ただではすまないと考えたことだった。だが野生の魔獣が触れてしまった。だから腐敗した。それで長期間残るから場所や魔獣を調べられた。








「共に戦った魔法使いに聞いた。こんな魔法は人間のものじゃない。特化した魔法少女クラスのものだとな。だから今度は魔法少女に聞いた。腐敗魔法をここまで極めたのは考え付く限り、一人だけだとな。ロッテンダスト。お前だけだ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る