第3話

 下妻における地域のスーパーまで運転してきていた。目的地につき駐車場の枠に車を入れる。このスーパーは営業をしていないため駐車場はガラガラだ。ただ一応何台か止まっているが、見た感じ人の管理がされていない放置車両だろう。インフラ崩壊、文明崩壊の象徴とも呼べる店の名残。




 僕は車から降りた。車の横にいた蝙蝠ジャガーの肩を叩き、他の二体の怪人を待った。遅れて数秒


僕がきた道から遠くに影を見つける。僕は一人で運転し、蝙蝠ジャガーはそのわきを自力走行で追走。他の二体は車の速度に追いつかなかったため、遅れたのだ。






 待っている間他愛のない会話をした。






「蝙蝠ジャガー、君早いね。速度何キロ出せるの?人がいないから法定速度なんて関係ないけど、君スピード出しすぎだよ。車で負けたら恥ずかしいから少し本気を出しちゃったけど、全然余裕そうじゃん」






「はっ、少なくても車の速度70までは追走できると思います。そのようにティターノバ様から聞かされております」






「ふぅん、すごいじゃん」






 二体の怪人の姿がくっきりと見えてくる。かなり本気で走っているのだろう。駆ける音が遅れて僕の耳に届くぐらいだ。道路壊れそうだから丁寧に走ってほしい。まあ二体の怪人が走っている場所がアスファルト元々剝がれてたからいいけど。








 周囲を見渡せば原型を残しているのはスーパーのみだ。




 周囲の空き家も道も無事なところが少ない。大体が崩れて壊れて、開けた土地のようになっている。かつての人の動きを知る身としては悲しくなってくる。






 そのスーパーの原型を保ったのでさえ、僕が怪人を送り込んで安定させたからに他ならない。この場所は少し思い出があるのだ。そのために当時Dランク、現在Bランクの怪人をリーダーとした怪人集団を送り込んだ。暴れる野良怪人、魔物、人々の暴走、それらを抑圧し制覇した。




 待っているうち、感慨深くなっていく。だが僕は別の崇高な目的があるため、頭をふるってごまかした。蝙蝠ジャガーが一瞬戸惑っていたけど、無視した。無言になった僕と蝙蝠ジャガーの視線は近寄る二体の怪人のほうだった。




 






 二体の怪人が到着し、スーパーへ入っていく。




 目的は鵺が確保した魔石を譲り受けるためだ。最近野生の怪人の出現が多い。僕のほうの拠点にはDランク怪人を警備に当たらせているため、影響はない。だがほかの人が住む場所に対しての悪影響が大きくなっている。昨日も一人殺された。同じ町に住む以上、その数を減らすのはよろしくない。




 むろんそれをした怪人は八つ裂きにした。魔法少女としての力も使ったりして、駆除はしている。




 ただそういうのは無くしたい。人口の強さは首都圏が証明している。むやみに減らすのは好ましくない。






 少なくてもこの下妻や八千代町あたりでの被害は無くしたいのだ。




 そのための魔石だ。魔石を消費することで僕は怪人を生産できる。それなしでは僕でも怪人を生み出すことは難しい。一応生み出すことはできるが非常に生産性が悪く、強くてもFランクのみだ。魔石を消費することで効率的で強力な怪人を生み出せる。






 秘密結社鵺では首領ティターノバ、上級怪人たる3幹部、蝙蝠ジャガー、シャークノバ、ダガーマンティスノバ以外に触れることを禁じている。僕が命令したわけじゃなく、ティターノバが決めたことだ。3幹部はティターノバが生み出した怪人であり、実力も確か。信頼も忠誠も強いため、魔石に触れることを許可されている。




 怪人が魔石を触れても強化なんてできない。怪人の強化は強い相手と戦うか、生きる年数を増やすかぐらいしかない。簡単ではないのだ。






 僕の周囲を3幹部が囲み、先頭を行く蝙蝠ジャガーは後ろを気配りながらスーパーの廃墟へ向かっていく。後ろというと気を使われているのは僕だ。他の2怪人も僕に対し非常に気を使っている。大変なことだ。だが当然だと思って蝙蝠ジャガーの後をついていく。




 3幹部であっても、魔石の持ち出しは禁止。






 持ち出せるのはティターノバと僕だけだ。






 これは僕が決めた。






 鵺の秘密基地となったスーパーへ入っていた。自動ドアは壊れているため、開けっ放しだ。結構虫が入ると思うけど、内部は意外ときれいだった。野良怪人などが丁寧に掃除をしており、僕の姿を見て怪訝な表情を浮かべていたりもした。だが蝙蝠ジャガーやほかの2怪人が睨みつければ、不審な目は消えた。




 さすが3幹部。強いね。








 そうして僕は基地に入り、魔石を確保した。Aランクの魔石を一つ、Bランクの魔石1つ、Cランクの魔石を2つ。魔石自体ランクごとでも色は変わらない。結晶体なのだけど、内容量が違う。魔力量というのもそう。濃密な魔力のものであれば高ランクであって、薄ければ低ランクだ。種類によっては霊石ともいうやつもある。特殊条件でとれる限定石。




 代わりに僕の力を込めたDランク魔石を1つ蝙蝠ジャガーに預けた。この魔石のもともとはDランク魔石3つだ。それを僕の力で一つにまとめた。




 それはもちろんのこと、効果も教えた。具体的な内容を説明すればするほど空気は凍っていった。






 蝙蝠ジャガーは僕を化物でも見る表情で見ていた。他の2体もそう、怪人作成の苦労は非常に大変。悪の組織がどれほど期間をかけ、生産設備を用意し、そのためのほかの生産を止める苦労を考えればわかる。秘密結社鵺の場合はティターに頼りきりだ。そのティターですら非常に気を使って、大量の魔力を消費するらしい。




 その生産に疲労したティターを護衛しているのは3幹部らしい。








 この魔石をティターが使用すれば、怪人生産が楽になる。ティターの魔力では10日に1体らしいが、この魔石はそれを無効かする。材料として魔石を消費する以上、しょうがないのだけども、それ以外にも効果がある。条件としてはDランク怪人のみになるけど、でも生産魔力は石に入っている以上、術式を発動するための魔力のみの消費でいい。また作成できるのはDランクの怪人と限定できる。これなら5日、いや4日まで短縮できるだろう。






 僕のしたことは悪の組織の常識を、鵺の常識を覆したことになる。だが大首領とティターが位置づけた以上、そのぐらいはできて当然だろう。






 それも説明した。




 3怪人は僕を化物として認定したらしく、改めて膝まづかれた。全員が震え、怯え、恐怖を見せる姿は滑稽だった。だが生みの親のティターより優れた部分がそこしかない以上、自慢する。孫に自慢する祖父母の気分だった。






 ティターノバは仕事があるため出会うことはなかった。そもそも基地にいなかった。






 だからか僕の用事は終わった。






 駐車場まで戻る。僕の後ろを送る蝙蝠ジャガーの視線。見送りはいらないといったが、大首領として君臨する僕相手にそれはできないらしかった。表向き大首領はおらず、首領のみという鵺の組織。だが3幹部になると僕の正体をティターが教えたらしい。信頼置ける怪人には甘くする。




 僕の癖がティターにもついているらしい。




 スマートキーのため車のカギを一々取り出す必要がない。ドアノブに手をかけ、開錠。靴を脱ぎ、社内に入り込んだ。あとは靴を助手席の箱にしまった。蝙蝠ジャガーに手を振って、僕はドアをしめた。




 あとはエンジンをかけ、車を動かした。






 車が発信していく。駐車場から道路へ。まだ残ったアスファルトの道路を進み、僕の車は八千代町のほうへ戻っていく。






 流れていく風景。




 運転中だというのに僕は過去を思い返した。










 過去を思い返す。




 まだ崩壊寸前のとき。






 当時はこの地域にも魔法少女もいた。ヒーローもいた。そのたたかえる人たちの1割が死んだ。他は別の地域に逃げた。文明がなくなった場所に住みたがるのは誰もいない。ここを守っても食料も水もない。家もない。必死に戦うやつなんていない。必死に戦ったやつが死んだ1割だ。


みんな都市部に逃げた。またインフラが残った場所に逃げた。一般人が何もなく逃げても都市部には入れない。ただ魔法少女やヒーローは戦闘ができるため歓迎される。その身内も同様だ。




 崩壊寸前なのに、戦力が消え去った。






 この地域で戦えるのは僕のみだ。魔法少女は僕一人だけ。ヒーローもいない。




 あとは逃げ遅れた人だけだ。ただの一般人が逃げるのも生きるのも難しい。大体が死んだ。最初に良いやつが死んだ。とくに良いやつと代表的な普通の家族。それが最初に消えた。子供のために命を張る父親がしに、子供をかばう母親が食われた。親がいない子供は大人の餌食になって、生き残るための囮にされた。また子供が女であれば、大体が性的な暴行を受けた。






 他人に優しさを見せれるやつが、人間に殺された。荷物を奪うために殺され、そいつは生き残った。生き残った後都市部に逃げた。なぜそれを知っているかといえば、ネットにのっていた。通信インフラが残っていたとき、地方から逃げ延びた代表としてインタビューを受けていた。その記事があったのだ。






 僕は何も思わなかった。






 そんなものだ。勝手に諦めた記憶がある。






 僕を襲う人間もいた。魔法少女のときも、元の姿の時であっても関係がなかった。襲ってくるのは怪人だけじゃない。魔物もそう、魔獣もそう、同じ人間だって襲ってくる。全ての命が僕の敵だった。ただ生き残れた。それはこの世界に敵が現れる前から僕は魔法少女だったからだ。




 取り柄はおっさんのみではない。






 この世界に怪人が現れる前、僕は魔法少女になれていた。魔物が現れる前僕は変身ができた。魔獣が被害をもたらす前、僕は命を腐らせる能力を持っていた。それよりはるか前に僕は命を作ることができた。






 最初に生み出した命。




 それがティターノバ。蛙をベースにした怪人だ。蛙顔で横に伸びた直接のような口。開けば長い舌。蛙独特の粘着はないため、壁に張り付くことはできない。腰をわずかにまげ、大きな目は状況を把握することにたけている。どういう戦闘技能を与えるつもりだったか覚えていない。現在は魔法を多用できることから後列戦力なんだろう。




 ただ現在は普通に剣を使えるから、後衛とは思えないけど。




 最初はFランクだった。僕が9歳に作り上げた。そのころは魔法少女のことはわかっていないけども、たぶんあの時にはなっていた。記憶にないだけで、魔法少女の能力を一部でも持っていたのだろう。






 31歳まで付き添う相棒。ティターノバは非常に賢く、僕の家族に姿を現さず、かといって僕からつかず離れず一緒にいてくれた。環境に適応するための保護色機能を持っていた怪人だ。そもそも田舎で人が少なく、僕の家族自体近所から嫌われていたため、付き合いがない。






 それで24のころ、日常に化物たちが現れた。最初は軍隊や自警団が対処をしていた。だがそのうち追いつかず、軍隊は都市部に引きこもるようになっていく。僕が27のころには軍隊は地方をあきらめ、関東地域に防衛を優先。他は見捨てた。ただ防衛を優先しても被害は抑えきれない。数が多すぎるため軍隊では足りなかったのだ。




 そのころ魔法少女が世の中に現れだした。




 またヒーローも出現しだした。




 僕はその前から魔法少女だった。攻撃してくる怪人どもを殺した。ティターノバも協力して怪人を殺してくれた。殺した怪人から魔石が取れることをしった。




 28のころ、軍隊は北関東を放棄。




 治安が急激に悪化、怪人や魔物や魔獣などによる大侵攻、お互いがお互いを食らう関係でありながらも、全方位から責めてくる異業種ども。それらが人々を食らって、殺していく。人が人を襲って殺して食うこともあれば、犯すこともあるし、強盗も普通になった。




 地方から安全な都市部へ逃げる動きが加速化した。




 それは都市部に元々住む人々から拒絶され、受け入れられなかった。受け入れて仕事や食料などが不足する可能性があるというニュースが頻繁にあったからだ。それを受けて人々は拒絶し、生まれた場所で死ぬ自己責任論が過剰になった。




 都市部入場規制を受ける前に来ないやつが悪いという風潮になった。それを起こしたのは逃げることに成功した地方の人々であるけども。










 僕はそのとき怪人を作り上げた。最初は何回も失敗してスライムのような怪人ができた。できて戦わせようにも弱すぎて魔物に食われた。ティターノバの成功以外、ほぼ怪人なんて作ったことはなかった。




 結局いくつも練習をし、できた怪人が現在Bランクの怪人だ。当時はDランク。その怪人は見た目人間の凶悪そうな顔をしていた。瞼の上から下まで抜けた切り傷、ただ目をふさいではいない。感覚機能は全部怪人のもの。




 ほかに怪人を作った。見た目人間のものだ。現在はCランクの怪人だ。当時Eランク。見た目麗しき令嬢のごとき怪人だ。ただ武器を持たせることから、女性騎士を思い描いて作り上げた。こきっと助けるべき相手に女性という存在は安心感を与えると思った。それが理由で女性の見た目をした怪人を作った。








 29のころ、冒険者が正式に職業となった。魔物を殺して肉体パーツを集めるものたちだ。また依頼を受けて地方に用事がある金持ちの護衛をするようになった。




 魔法省ができた。魔法少女や冒険者の資格をもつ魔法使いを監督する組織ができた。




 都市部限定だができた。






 ヒーロー管轄する組織も現れた。








 でも、都市部だけだ。




 人口が地方から流れてくる都市部だけだ。人口の多さからくる優秀なものの比率の高さが強さを指し示していた。






 その分地方は急速に衰退していく。






 そのくせ都市部は地方に口を出すようになった。もともと地方分権などされておらず、国がまとめて自治体を管理する方式のため、正しいことには正しい。日常に化け物が出る前から地方の人は首都圏に流れていた。だから地方は衰退してたし、その環境において娯楽も生まれない。さびれた地方は、滅びに向かっていたのは事実。




 若さが新しい時代を築くのに、地方には若者がいないのだ。つまらないに決まってる。




 労働力も金もそう、インフラもそう。若者を取られた地方が生き残るすべ。首都圏から金をせびることだった。補助金という形のものを首都圏からせびり、それでようやく形を維持できた。




 その調整をしていたのが国家だ。ただ首都圏の力が増し、国家の力が衰退していく。そうなると制御が聞かなくなってくる。自治体を統括する国家の力がなければ、強いものが我儘を利かす社会が訪れる。




 首都圏を制御していた国家の没落。それがもたらすのは地方の旨いとこどり。










 地方から戦える人、技術を持つ人を優先的に奪うようになった。また都市部で使えない人、働けない人を地方に送る運動が始まりかけた。さすがにそれは生き残った地方が猛烈に反対したが、実体としては送り込まれている。高齢者とかの老後の幸せとかいう戯言など載せてだ。実態をのせず、現実をみせず、妄想のきれいごとだけを残して送り込む。だからそれらは殺され、食われた。








 犯罪者もそう。化け物の手にかかる以上、誰の責任もない。犯罪をするものを保護する余裕も庇う気立てもない。誰も容赦なく切り捨て、危険な地方に送り込まれた。そして、更生の機会もなく、魔物や魔獣などに食われた。










 地方の政府機能がマヒしていく。そうなっていくと都市部の横暴さに反対すらできなくなった。インフラも崩壊した。人々の意見を代行するための選挙なんて起きないし、起きたとしても首都圏のみだ。首都圏が決め、それが主導となって地方を統括していく。




 だから都市部の横暴が目立つようになった。






 また生き残った一都3県、東京をメインとした埼玉、千葉、神奈川の首都圏の同盟。自前でもつ武力と技術を集合し、己の権益を守りだした。反対する地方がないため甘い蜜をそれぞれ提供し、生き残ることにしたのだ。






 いらないものは地方に。




 必要なものは地方から。




 無期懲役がなくなった。死刑囚がなくなった。それらを管理する刑務所がなくなった。だから地方に送り込まれている。死刑宣言に等しい。地方を守る武力はほぼいない。弱者はそこら中にいる魔物たちの餌食になった。










 化物によって都市部の人口は多少減ったものの、地方からくる人、技術者や戦闘スキルを持つ人が増えたためあまり減っていない。






 僕は故郷が壊れていく様を見た。人々がおかしくなっていく様を眺めてた。街並みが崩れていく。日常が日常らしくなくなっていく。その様を見続けた。






 目の前で子供が魔物に食われる。大人が発狂して自分の子供を殺して食う。






 僕は笑ってた。歩道橋の上から壊れていく光景。頬を濡らし、それを眺めてた。ティターノバが僕の様子をみて心配そうにしていた。蛙顔の怪人であるくせに、表情がわかった。僕に対し感情を向けてくる。誰も壊れた世界に壊れない情。ティターノバのランクはCほどあった。そのとき僕の魔法少女ランクもCだった。








 そのとき僕は思ってしまった。








「力があるだけじゃどうしようもない」






 僕が感じた喪失感を補うように、独り言をこぼした。歩道橋の上でだ。歩道橋の柵に背を押し付け、その下では魔物が卑劣な鳴き声を流して人を襲ってる。怪人が魔物を殺し、その怪人を魔獣が背後からせめて食っている。




 この世の地獄を下に。




 そんなやつらに背を向けて襲われないのは簡単。




 ティターノバが時折魔法を下に落として攻撃しているからだ。Cランク怪人なんてこの場に強力すぎて誰も歩道橋に近寄らなかった。近寄らず関係ないものを食っている。






 歩道橋の左右の階段付近、上がった通路上にも見た目人間の怪人が複数配置。






 真下には最初に作り上げた見た目人間の怪人、凶悪そうな男、令嬢の二体を配置していた。




 だから誰も歩道橋に近づかない。








「ここだけでも安定化させようっか」






 僕は決意した。




 これらの出来事を生み出す化物たちを相手に治安を取り戻す決意。暴力が支配するなら暴力をもって平穏を作り出す。僕が動き出してすぐは被害が大きくなるだろうけど、それでもかまわない。どうせ僕の責任じゃない。被害にあうのは被害者が悪い。加害者が悪いのは加害者のせい。




 平穏がないのは平穏と感じないやつのせい。






 好き勝手やらず退屈な人生を送って、後悔するやつが悪い。




 その自己責任を軸に僕は悪くない宣言。






「ティターノバ、君は今日から暴力の支配者だ」






 そして歩道橋の上でティターノバと語り、悪の組織を結成することになった。その名は秘密結社鵺。どのような怪人もくじき、この地域を安定、および他地域の安定を図る武力組織。




 それをティターノバに提案。具体的な策は全部丸投げ。




 ティターノバの反論が来る前に僕はやるべきことを説明。






「僕はこの地域の担当とする魔法少女になる」




 下手な正義の味方や冒険者などが来ても邪魔をされないよう管轄を作る。魔法少女の管轄地域にはほかの魔法少女はあまり来ない。担当エリアがあるところを下手に入り込むと現地のものに妨害される。また魔法少女同士の戦闘にもつながることからあまりお勧めしない。ただ強いやつが支配するのは事実あるとするため、少なくても戦闘はある。






 ただこの地域は人気がない。インフラないし怪人多い。手間がかかって守るほどの利益なんて何一つない。




 正式な管轄地は正規の魔法使いにもない。野良にもない。適当に決めた管轄地だ。でも僕は野良魔法少女として勝手に君臨した。




 魔法少女として表向き、敵対者の排除。




 悪の組織として、裏では人々や怪人の管理。








 そうしなければいけないほどに弱者は死ぬ世界だ。それを抑制しなければ地方に未来はない。そこから人や物資を確保する首都圏もただではすまない。搾取だけでは奴隷が死ぬだけだ。この場合の奴隷は地方だ。首都圏は飼い主。




 国家の権力は地に落ち、首都圏において地方分権は確実に進んでいくのみ。




















 30になるまでには茨城の人口は70万ほどに減少した。








 僕はティターノバに鵺を任せ、八千代町に拠点を置いた。その際率いた人間の見た目をした怪人を更に増やした。人間社会にいる以上、見た目はそろえておかないと排除される。いくら野良魔法少女、特に腐敗の埃と悪名があっても、この地に来るものは意外といるのだ。その際怪人の見た目なんて安心されないからね。




 ティターノバは下妻に拠点を置いた。その際拠点がスーパーの場所だった。僕たちが弱い時に共同で守った思い出の廃墟。ティターノバは蛙の怪人のくせに、結構僕との思い出を大切にする。まあ僕もティターノバやほかの生み出した怪人との思い出は大切だ。だからしょうがない。










 31になるころ、茨城の人口は50万を切った。






 この地域の安定化は保たれた。少なくても下妻と八千代町において化物の暴走は止まった。あとは人口が増えるべきだろうけど、そもそも若い男女がいないから難しそう。ゆるやかに滅亡するんだろうなと思う。








 




 そんな場所だ。






 アクセルを踏む。下妻から八千代町への半ばを超えていく。








 


 僕は魔法少女であり、鵺の大首領であり、おっさんである。






 腐敗した埃、ロッテンダスト。僕の魔法少女としての名前で、ここらへんでは多少名が売れていると自負してる。この名前を聞くと時折怪人や同じ立ち位置であろうヒーローから警戒されることがある。




 だけど気にしない。




 他人の評価を気にするぐらいなら僕は無視する。




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