第200話 カオスな空間
「ゆうきく〜ん。」
そう言って右膝の上にのる優香さん。
「ゆうきお兄ちゃ〜ん。」
そう言って左膝の上にのる渚ちゃん。
「む〜。む、む、む、む〜。」
と、壊れたロボットのように『む』という単語を連呼する葵。
「頼む、破けるな。なあ、お前ならいけるって、頑張れよ、諦めんなよ、紙‼︎」
そう言って、どこから持ってきたのかもわからない新聞紙を引っ張って遊ぶ大輝。
……ここって本当に、高校一年生の教室ですか⁉︎
ちなみに、この『カオス』という言葉がお似合いなこの空間は、教室の隅の方の、机と椅子に囲まれた場所にあるので、クラスメイトからはおそらく見えていない。……まあ、見えてなかったらいいっていう話ではないんだけどね。だって、クラスの大半の人たちは、文化祭に向けて、一生懸命準備をしてるのに、意味のわからない行動をして、遊んでいる(?)……いや、遊んでいるわけではないのかな?
まあ、まあともかく、クラスメイトは一生懸命、働いているのにこんなふうに仕事もせずにいるのはダメだって言うこと。そう、俺はそれが言いたかったんだよ。……しかも、このよくわからない空間に、文化祭の実行委員が2人もいるってどう言うこと⁉︎
「あ〜……。なんでお前破れちゃうんだよ。もっと粘れよ。農業は粘り腰だろ⁉︎」
と、意味のわからないことを言う大輝。
「む、むむむむむむむむ、むむ‼︎」
などと、いまだに、壊れたロボットのように、『む』と言う言葉を連呼する葵。
「ゆうきく〜ん。だ〜いすき。」
などと言いながら、大胆にも抱きついてくる優香さん。
「え⁉︎ここで抱きついちゃうの⁉︎……それなら私も、負けないんだから‼︎」
最初は優香さんの大胆な行動に戸惑っていた渚ちゃんだったが、結局、
「えい。」
などと、可愛い声を出しながら、抱きついてきてしまった。教室の隅で、一生懸命働いているクラスメイトから見えないこの場所で作り出された幼稚園の一角のような空間。……神様、一体僕の文化祭は、どうなってしまうのでしょうか?
……これまでみたいな、ひとりぼっちの文化祭は嫌だとは言いましたが、これはこれで、かなりきついんですけど。
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