第5話 葵さんのイタズラは⁉︎

「ゆ〜くん。お〜き〜て。」


耳元で、とろけるような声で葵がそう、寝ている俺に向かって言う。

天使の囁きのような葵の声を聞いた、覚醒しかけていた俺の脳は、また眠りの世界へと誘われる。


「もう、ゆうくん。早く起きないとイタズラしちゃうよ?」


普段なら、こういう葵の言葉に対して、

『ハロウィンか‼︎』

とかいう、聞いている人を真冬の世界に連れていくような寒いギャグを披露する俺だが、脳がすやすや眠っている状況では、そんなことを言えるはずもない。……だってそもそも、葵のこの言葉を俺は理解できていないのだから。


「イタズラまで〜3、2、1 。」


テレビ番組のカウントダウンのような発言を、葵は発する。


「ゼロ〜‼︎」


子供のような声でそういう葵。その姿は、天使よりも可愛かったらしいのだが、寝ている俺はその姿を見れていない。……神様ってずるいよね。いろんな人の、いろんな姿を見られるんだから。


「それじゃあゆうくん、イタズラしちゃうね〜。」


百点満点の笑顔 (神様情報) で、そういう葵。嬉しそうにしているこの天使のような女の子が考えたイタズラは……。


「うわ⁉︎」


頬に生温かい何かが当たった俺は飛び起きた。

……そう、葵が考えたイタズラ。それはキスだった。


「えへへ〜、ゆうくんびっくりした?……ちなみにこれが、私のファーストキスだからね?」


顔を赤くしながらそういう葵はとっても、とっても可愛かったのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る