第51話 新たなアイシアの正体

 「(ふふっ、遠慮しないであなたも【転生マスター】だって打ち明けちゃいなさいよ、ヴァン。隠そうとしたところで今の私の言葉にそんなに動揺してしまっていたら丸わかりよ)」


 くっ……。


 完全に不意を突かれてテレパシーによる会話を投げ掛けれてしまい新たなアイシアを相手に僕は動揺を隠し切れずにいた。


 相手も子供とはいえ背後から裸の体を密着されているというのも多少は影響してしまっていたのだろう。


 もしかしたらそれも僕をより動揺させるべく狙ってやったことなのかもしれない。


 僕はどうにか動揺を抑えつつ守護霊として傍にいるアイシアと細胞として僕の体内にいるベル達に別のチャンネルでテレパシーを送って相談する。


 「(くっ……本来なら私であるはずの身でマスターに対してこのようなふしだらな真似まで行うとは……。この者の魂の個性があるとはいえ元は私であるはずなのにどうしてここまで性格が違ってしまっているのでしょうか)」


 「(っていうかこれが本来のこのアイシアの性格なの~。転生先の性格は転生する魂とその器の性質が合わさったものとなるはずだから本来のアイシアと違う性格をしてしまっているのは【転生マスター】として魂の記憶と思考を有しているこっちのアイシアの方なの~。こっちのアイシアだって【転生マスター】じゃなかったらここまでとはいわないけどある程度はこのアイシアに近い性格になっていたはずなの~)」


 「なっていたはずなの~)」


 「(まさか……。仮に【転生マスター】としての力を持たずに転生していたとしても私はマスターにこのようなふしだらな真似は致しませんっ!)」


 「(そ……そんなことより皆。今このアイシアが僕に対して【転生マスター】のテレパシーを使って話掛けてきてるんだけど……)」


 「(え……ええぇーーっ!、なのぉぉーーっ!)」


 「(なのぉぉーーっ!)」


 「(そ……それは本当なのですかっ!、マスターっ!。つまりはこの新たに蘇えった私に転生している魂も【転生マスター】であると……)」


 「(そういうことだと思う……。一体このアイシアにどう対応すればいい思う?)」


 「(そんなの絶対返事しちゃいけないに決まってるなのぉーっ!。向こうはこっちも【転生マスター】だと吐かせる為に鎌をかけてきてるんだから乗せられちゃ駄目なのぉーっ!)」


 「(駄目なのぉーっ!)」


 「(そ……そうだよね。向こうはもう僕のことを【転生マスター】だと確信しているような口振りだけどどうにか誤魔化してみるよ……)」


 アイシアとベル達と相談した結果やはりこの場はどうにか誤魔化すしかないという結論に至った。


 しかし向こうは既に僕が【転生マスター】だとかなりの確証を持って接してきているようだし、裸で密着されて動揺している上にアイシアとベル達と相談している間あからさまな沈黙を見せてしまっている。


 それでも実際にテレパシーで言葉を返さない以上は完全に【転生マスター】だと見破られることはないと思うがどうにか切り抜けられるだろうか。


 「何やってんの、アイシア。洗いっこするんなら早く背中を擦ってよ。それとも本当はアイシアの方こそ僕のことを男して意識しちゃってるんじゃないのぉ~」


 「(へぇ~、あくまで誤魔化し通すつもりなんだぁ~。そういうことならこっちも本気でいかせて貰うわよ)」


 ほ……本気だって……。


 本気といって新たなアイシアは更に僕へと体を密着させてくる。


 とても7歳児の物とは思えないその膨らんだ乳房となまめかしい肌の感触が僕の男としての感覚を更に刺激しより動揺を誘う。


 まさか僕のことを色仕掛けで落とすつもりなのか。


 「ちょ……ちょっと、アイシア。一体どこを洗おうとしてるんだよ。僕は背中を擦ってって言ったんだよ……。それにちゃんとタオルを使ってくれなきゃ……」


 「(ふふふっ。折角だから前も後ろも全身隈なく洗ってあげる。それもタオルなんて使わず私の手で直接体を擦って……。それにもし【転生マスター】だと打ち明けてくれるならこのままあなたの大事なところまで手を伸ばしてあげるわ。何ならその先のもっといいことまでしてあげてもいいのよ)」


 そう【転生マスター】の通信で話し掛けながら新たなアイシアは背中から伸ばした手をゆっくりと僕の上半身を這わせながら下半身へと向かわせてくる。


 その手の向かう先は男性のみに付いている先の真ん丸とした突起物。


 性的興奮と共に肥大化するまさにのある場所だ。


 「はぁ……はぁ……」


 「(ふふっ。こんなに興奮しちゃってヴァンったら本当にまだ7歳の子供なのかしら。まぁ、【転生マスター】であるあなたは肉体は子供でも中身は立派な大人だものね。さぁ、その興奮を満たしたいなら早くあなたも【転生マスター】だと白状……」


 「う……うわぁぁぁーーーっ!」


 「……っ!。な……何よっ!」


 「うっ……うっ……うわぁぁぁーーーんっ!。母さんっ!、アイシアがっ!、アイシアがぁぁぁーーーっ!」


 新たなアイシアが僕のあそこへと手を伸ばす直前。


 僕は驚きの叫び声を上げて勢いよく立ち上がり、泣き声を上げてPINK-87さんの名を叫びながら大慌てで浴室を飛び出して行った。


 あたかも子供が自身の肉体の性的な反応に戸惑いを隠せず精神が耐え切れなくなったように……。


 そして僕が出て行った後浴室で1人残ったアイシアは……。


 「ちっ……良い機会だと思って鎌を掛けてみたけど駄目だったみたいね。大体本当にあの子は【転生マスター】なのかしら。SALE-99がその可能性が高いから調べておいてくれと言っていたけどとんだ恥を掻かされてしまったわ」


 「(………)」


 僕に【転生マスター】だと白状させるつもりが逆に出し抜かれてしまったことで思わず気が抜けてしまったのか新たなアイシアが1人浴室で吐露してしまった言葉の内容。


 霊体としてこの場に残っていたアイシアがしっかりとその言動を盗み見ていた。


 これでこの新たなアイシアもヴェントやSALE-99、ソウルギルド『味噌焼きおにぎり』の仲間だということがハッキリした。


 相手を出し抜きこちらだけが一方的に情報を仕入れることができたことを幸運に思う一方で、僕は折角蘇えったと思った自分の家族をまた1人無くしてしまったことを残念に感じていた。

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