大学生の2020
郷野すみれ
真っ白な手帳
俺の目の前にあるのは、2月までの予定のみが書いてあって、3月以降は白紙の手帳。
今はスマホなどのカレンダーもあるけれど、中高生の頃からずっと使ってきた手帳に馴染んでいるので、予定などはそこに一元化していた。
緊急事態宣言が出る直前に実家に戻ってきたのはもう半年も前の話だ。そして、俺は現在大学からの後期もオンラインという連絡を受け、ベッドにスマホを投げつけた。
度重なる親からの干渉、しばしば起こる両親の喧嘩。一度それらのない自由を経験したがゆえに辛い。こうなることを回避するために東京へ出たのもあったのに、裏目に出たか。俺は、地元の大学では後期の授業が再開されているという地方のニュースを見ながら落ち込む。
大人は「振り返ればいい思い出に」とか「この経験を糧に」とか言うけれど、今辛いから、今苦しいのに、そして、十代最後の一年を棒に振ったのに、どうしろって言うんだ。
俺たちは臆病だ。
自分が感染者になるのではないかと怯え、利己的になり、関係のない病院や店、人を攻撃する。
意味なんてないのに。
当たり前が当たり前ではなくなった。
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